第119話 でゅあるおりじん・り・いぐにっしょん!

 ということで、やってきましたお隣の自衛隊基地にお借りしている訓練場。

 参加メンバーは、誰が呼び始めたかセヴンスチームの私、理珠さん、リトヴィンツェヴァ姉妹。で、実際開発に携わった雛わんこと咫村崎センパイ、シアちゃん。

 ……あと、一切の告知をしていないのに何故か駆けつけた右ねえこと左莉那ひだりまなさん。

 なんでいるんです?

 「推しが新verの衣装を披露するんですよー?駆けつけて当然じゃないですかー!」

 ……いや、それに駆けつけるのは当然なんですが、何処から情報を入手したんでしょうか?

 まあ、奇しくもこの装備使えないよって言われたメンバーだけが見学者になったわけですし、早く私にもよこせと開発チームがせっつかれないだけ良しとしましょう。


 んで、肝心の雛わんこは……。

 目をつぶってピアッサーで耳に穴を開けるところで固まってます。

 「思ったより怖い」

 ……なら、なんでピアス形状にしたし。

 「ん……。セヴンスさんやって?」

 そしてなぜ私に頼るんですか!やりますけど!

 というか、これファーストピアスどうするんでしょう?あ、根源増幅用のピアス付けたまま変身すれば自然治癒能力強化で大丈夫になる……んですかね?

 あー、理珠さんが穴あけ直後に変身して安定させたらしいですし多分大丈夫……ですかね。

 というか、理珠さん。こっそり自分で穴開けて私と同じピアス取り寄せて付けてきて「今日からお揃いですね。如何でしょうか?」とか言ってくるんですよ?かわいすぎません?当時押し倒さなかった私偉いと思います。……その数日後に逆に押し倒されましたが。


 「じゃあ行きますよー?」

 耳にピアッサーを添えて、あとちょっと力を込めれば穴が空くというところで……。

 目をぎゅっと瞑ってぷるぷるしてる雛わんこめっちゃ可愛くないですか?

 写真とか……あ、右ネキがめちゃめちゃ連写してますね。後で見せてもらいましょう。

 じゃ、ほい。

 軽い手応えと共に耳に穴が空きました。

 で、ピアッサー付属のファーストピアスを引き抜いてこっちのピアスを……。

 えーっと、普通はこれやっちゃ駄目ですからね?ピアス穴化膿して酷いことになりますからね?というか、穴が安定してないので二度刺しみたいになって今大分痛いはずですし。

 

 ということで、無事にピアスは装着完了しました。

 ふと思ったんですが、これみんな付けるとするじゃないですか。

 で、変身した魔法少女がみんな付けてるじゃないですか。

 多分、認識阻害の魔法が仕事してくれるとは思うんですが、身バレの危険ありません?あ、いや、同じデザインのピアスを普通に販売しちゃえばいいのか……。

 そうすれば、ただ魔法少女に憧れたり助けられたりして同じものを身に着けてるんだな程度の認識でスルーされるんじゃないですかね?

 

 「じんじんする……。ん、じゃあやります」

 雛ちゃんはこちらへ向かってそう宣言すると、髪に隠れている右目に手を当てて変身のキーワードを紡ぎました。

 あ、これ普通の変身ですね。そうですよね、強化形態なんですから変身後の状態から更に変身しなきゃおかしいですもんね。

 「掛巻かけまくもかしこ弥古いやふる眼一鬼まひとつおに廣前ひろまえまうさく。大江の神山かみやまの悪鬼、鈴鹿の嶽山たけやももの邪鬼、もろもろ禍事罪穢まがごとつみけがれを束ね、身も棚知たなしららに、罪という罪を祓いし力を宿やぶさむ事を、かしこかしこまうす」

 ……うっわ、ガチな祝詞じゃないですか。

 これ、もしかして雛ちゃんの実家神社だったりしません?いや、だってガチなんですもん!

 

 歌のように紡がれる祝詞と共に神楽を舞い始めた雛ちゃんのだぼだぼパーカーが風に溶けてゆくように消え失せ、生まれたままの姿となると同時に右の額に立派な角が出現しました。

 そのまま、くるりと一回りして裸身を見せつけた辺りで白い雪のような……いえ、これは灰でしょうか?が吹きすさび、透けて見える薄さの肌襦袢はだじゅばんを形作ります。

 しかし、これは目に毒ですね。こんなに小さくて細い綺麗な身体がしなやかに舞ってるんですよ?これ絶対道を踏み外す人出て来ますって!実際私もささやかな胸に対して立派に主張してるお尻から目が離せずに両サイドからほっぺ抓られてますからね?

 

 その後、くるり、くるりと回る毎に襦袢じゅばん掛衿かけえり緋袴ひばかまと吹き付ける灰によって形作られ、最後に柏手と共に火の粉が降り注ぎ、白無地の千早へと姿を変えます。

 「魔法少女鬼巫女、顕現……っ!」

 最後は、いつの間にか腰に生えていた大鉈を手を突き出すポーズで構えて変身終了……と。

 あれ?……いや、待ってください。

 変身の様子を思い出してみたんですが、雛ちゃんどう考えてもですよね?

 あ、正式な巫女さんは下着つけないんでしたっけ……。そうかー、ノーパンかぁ……。 


 おっと、両サイドからお仕置きされる前に思考を切り替えましょう。

 しかし、これだけ完全に巫女巫女ナース!なのに……失礼、ノイズが入りました。

 変身の祝詞といい、何処から見ても神職な巫女さんなのに戦闘に関しては一切神様に力を拝借したり神通力とか使ったりせず腕力一辺倒なの逆にすごいですよね。

 いや、雛ちゃんの頭脳と根源がはじき出した結論がソレだったのなら本当に最適解だったんだと思いますが。

 


 「じゃ、次、二重根源・再覚醒デュアルオリジン・リ・イグニッションやる」

 ……って、ちょっと待ってください!なんですかその如何にも中二心をくすぐる単語は!

 ネーミング誰ですかコレ!?

 あ、咫村崎センパイがドヤ顔で腕組んでらっしゃいますね。よく考えたらセンパイ、魔法はドイツ語だし根源は魔弾だしで結構中二入ってらっしゃる?

 うぬぬ、私もでゅあるおりじん・り・いぐにんっしょん!って叫びながら強化形態に変身したいです!

 え?あにむすきゃろるむ・ちゅーにんぐぺるふぇくてぃむ!とかラテン語でペア変身してる私のほうがどう考えても羨ましがられてる?

 二人で魔女と魔法少女の称号入れ替えとかずるい?

 へへーんだ。次はミラさんも加わって3人で強化変身ですよ!?もっとかっこよく決めてやりますからね!


 私がそんな事を考えている間に、雛ちゃんは再覚醒モードへの変身モーションを開始していました。

 右耳のピアスを逆側の手の親指でピーンと弾き、同時に千早をマントのように靡かせながら脱ぎ捨てます。

 「二重根源・再覚醒デュアルオリジン・リ・イグニッション纏装ペルソナ鬼神おにがみ神薙かんなぎ

 雛ちゃんを中心に炎が渦巻き、舞い上がった千早が燃え上がり焼け落ちます。

 同時に青い炎が降り注ぎ、後ろ髪には炎を模した髪飾りが、角には黄金の鎖が巻かれ先端から赤く光る宝石を垂らしています。

 緋袴には各所に青い炎の意匠が追加され、各所に赤い帯が追加されたり飾りが付いたりと、華美にならない程度の装飾が増えています。

 

 衣装が整うと、雛ちゃんは両の手に大鉈を持ち、それを正面で力いっぱい打ち鳴らしました。

 当然、鬼巫女ぱうぁーでそんな事をすれば大鉈は完全に砕け散り……。

 砕け散った地点の空間に裂け目が生まれました。

 「かしこみみ負い授かるは、天目一箇あめのまひとつの一文字!」

 で、そこへ手を突っ込んだ雛ちゃんが引き抜くのは一振りの刀……刀なのかなぁアレ……。

 柄を持って、引き抜いて、持ち方を変えつつ後退しながらくるりと回り、小さく後ろへ飛んで、引き払ってやっと抜刀です。

 いや、いくら何でも長すぎませんか?物干し竿とか言ってられない長さです。ざっくり見積もって雛ちゃんの身長の3倍ちょっとありますよ?刃もだいぶ肉厚ですし、これ刀版のドラゴン◯しですよね?それは刀と言うには あまりにも長すぎた……から語りが入るヤツですよ絶対。

 そんな、常人が振るえば重量で重心がブレそうな太郎太刀を円を描くように振り回しながら舞い踊り、最後は顔の前まで刀を持ち上げ霞の構えを取って変身完了……のようです。


 なるほど、出雲風土記にある最も古い記述された鬼である目一鬼まひとつおにを鍛冶の神である天目一箇神あまのまひとつのかみと同一視することで鬼だけじゃなく神の力も借りた的なイメージでしょうか。その象徴があの大太刀と……。

 めちゃめちゃかっこいいんですが、雛ちゃんの体重を考えると取り回しものすごく難しくありません?私だって、いつも大鎌振る時に気をつけないと私ごと一緒にぶんまわっちゃいそうなのに。


 「とりあえず、ちょっと動いてみる。……これ、試し切りしたら吹き飛ぶと思うから、変身して?」

 え?試し切りで衝撃波とか出るレベルなんです?

 元からめちゃめちゃ強いのにその強化幅どうなってるんですか!?



☆★☆★☆★☆

主に雛わんこが変身するだけの回

あ、この子ピアス開けてなさそう……からの一連の流れが入ったせいで性能評価までいけませんでした。

想像したら可愛かったので書かないという選択肢はなかったのです。


長尺刀はロマンですよね。

リアルの太郎太刀が3mなのでもうちょっと伸ばしてみました。

普通に考えたら刀に振り回される重量ですが、果たして……?


次回更新予定は6月11日……に更新したいんですが、歯の被せ物が外れて中が虫歯ってたみたいで歯医者なので1日遅れるかもしれません。

みなさんも歯は大切に……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る