第118話 強化イベント、ハブられました。

 「良いですか、服が汚くなったから勝手に地球の核の中に投げ捨てるとか二度とやっちゃだめですからね!?」

 シアちゃんにひとしきり貴重な理珠さんの服を消滅させた事についてお説教した後、本題であるで見てきた事を教えてもらいました。

 ……当の理珠さんに顔真っ赤にしながら「いいですから!まだたくさんありますから!」とべしべし叩かれたのはご褒美だと思ってます。

 今度、中学の制服辺りを着て貰ったりしちゃったりなんかしましょう。いっそ、ミラさんもエラさんも巻き込んでコスプレパーティーなんかもいいかも知れません。

 っと、今はソレどころじゃないですね。


 あちら側、魔物の異空間は触手まみれとは聞いていましたが、想像の遥か上を行くヤバさでしたね。

 というか、シアちゃんの魔法でシアちゃんが見たものがそのまま共有されているので無抵抗で触手を受け入れたらどんな事になるのかが一発で伝わりました。

 確かに、こんな目にあった時に着てた服を返却されても困りますね……。理珠さんやミラさんが着てた服だっていうならちょっと興奮……しますが。(ちょっとかな?)

 初代さん本体の改造具合も含めてやべー映像でした。

 念の為、咫村崎センパイには離れていてもらって正解でしたね。

 現状でかなりショックを受けているようなのに追い打ちを掛ける形になってしまいますし。


 「で、今はもう魔物のほうが本人になってしまったという認識でいいんですか?」

 問題はここですよね。

 仮面で隠れている顔以外は本人と全く同じ記憶・能力・性格を持つが本人では無い存在をどう扱うのか。

 俗に言うスワンプマン問題ですね。

 本人が落雷で死んだ直後、天文学的な偶然によってその電気が隣の沼から本人と全く同じ肉体と精神と記憶を持った生物を創り出した場合、それは本人と言っていいのかって奴です。


 個人的な解釈で言えば、本人として扱っていいんじゃないかって思ってますけどね。

 ……いやほら、私だって死んで生き返った人間ですし?状態のスワンプマンが別人扱いなら小さくなった上にゾンビ状態の私とか完全にじゃあないですか。

 同じ人物って事にしておかないと私を私だと認識してくれてる全員に対して失礼だと思うんですよ。

 

 「まー、あれは残っておった根源まで吸い上げておるし元の身体に精神体たましいが入っておらぬこと含めてと言ってよいじゃろ。……そこが問題なのじゃけどなぁ」

 ふむ?どういう事でしょうか?

 「新たに肉の身体を作り上げて精神なかみを移し替えようとも、魔物としての性質をそのまま受け継いでしまう可能性があるのじゃ。あの娘の精神性でソレには耐えられぬじゃろう?それでは意味がないのじゃ」

 あー、なるほど?人間じゃなくて魔物を自認する魂で魔物の肉体を持っている存在をアレコレしても、結局魔物として復活する的な奴ですかね?

 私としてはそれでもいいから一度生き返らせて時間を稼いでから人間として復活させる方法を探すとかでいいと思うんですけどね。まあ、きっとコピーすると根源が劣化するとかそういう私の知らない問題が有るんだと思います。


 「で、いい案は無いかと雛に相談するつもりで来たのじゃが……へっぶし!いい加減、服を着させて欲しいのじゃが?」

 はい、駄目です。

 というか、着せる服が無いのでもーちょっと全裸で仁王立ちしててください。

 一応職員の人に子供服を持ってきて欲しいと頼んではいるんですが、流石にこんな場所に子供服なんて有る筈がなくて近くの店舗まで買いに行ってるっぽいです。

 私が水流崎のお家に行って理珠さんのお下がりを受け取って来るという選択肢もあるんですが、貴重な理珠さんの子供の頃の服をまた消滅させる事になりかねないので断固として拒否です。

 

 えー、30分ぐらい経過してシアちゃんが仁王立ちし続けるのに耐えられずに蹲ってココアを飲み始めた頃、職員さんが服を持って来てくれました。

 ……あの、なんでゴスロリ選んだんですか?しかも私の戦闘法衣バトルドレスとデザインの近い◯ーブル系のゴスロリですよ!

 いや確かに、シアちゃんの顔は私と理珠さんのいいとこ取りみたいな顔つきですし?絶対似合うとは思いますよ?思いますけどね?

 なんだか得心きませんが、わざわざ似合うと思われる服を買ってきてくださった職員さんに文句を言うのも違うと思うのでここは抑えましょう。

 というか、突然店に駆け込んで子供用の着物すぐくださいって言っても置いてないですよねそりゃ。

 ……いや、かといってゴスロリが置いてあるのも謎なんですが。


 で、シアちゃんが着替え終わってホクホク顔でくるくる回ってる時でした。

 隣の区画から「できたっ!」「やっぱりね?こちらの方式のほうが良かったでしょう?」って声が聞こえたのは。

 これは雛わんこと咫村崎センパイの声ですね?というか、もしかしてセンパイ落ち込んでて上の空だったんじゃなくてずっと考え事してたから的な理由の上の空だったりします?心配して私損しました?

 「もしや、あれが完成したのじゃ!?」

 と、声に反応してわほほーいなのじゃーと駆け出すシアちゃん。

 そういえば、雛ちゃんが開発室に顔出さないなと思ったら自分用のブースでうごうごしてたわけですね?

 シアちゃんも行っちゃいましたし、とりあえず覗きに行ってみますか。


 「ふむふむ、つまり己の根源をそのままこちらの純魔結晶に写し取って一時的に根源核を二重に存在する状態を創り出して出力系を強化するわけじゃな?」

 「単純な供給量増加と出力強化だと生成機能の方に問題がありそうだったのね?だから、いっそエンジンを2つにしてしまえばどうかと思ったの」

 「けどこれ、綺麗じゃないと使えない。セヴンスさん達は無理だし、左ねえもあやしい」

 あー、なるほど。ザマさんブチギレ上映会の時に悪巧みしてたリミッター解除装置的なアレですか……。

 形状は……、これピアスですかね?金属のリングの中で複数の純魔結晶の柱が中心部で絡まり合うみたいなデザインです。

 似合わない人は……100号ちゃんとかでしょうか。デザイン変更は可能なんですかね?

 あと、似合う似合わない以前に私は無理とか悲しい発言が聞こえたんですが?


 「綺麗じゃないと使えないとはどういう事で御座いましょう?この、セヴンス様のお顔が綺麗でないとでも?」

 あ、理珠さんそこ怒る場面じゃないです。多分雛わんこの事だから言葉が足りてないだけです。あと、私の顔を抱え込むのもちょっと辞めてほしいです。

 「や、多分魔力の流れか魔力そのものがおかしかったりすると使えないって話ですよね?私は無理って言われてるので、なんだかんだ毎日魔力を混ぜ混ぜしてる私達と、義足絡みで魔力が機械を通って循環してる左さんには使えないって事なんだと思います」

 原理はよくわかりませんけどね!

 多分、自分の魔力だけを取り出して強化する的なアレなのでミルクの混ざったコーヒーの例えみたいな奴で、私達の毎日の朝ちゅっちゅで混ざった魔力だと上手く行かない感じなんでしょう。知りませんが。


 「こやつ、自分が使えぬとわかった瞬間どうでもよくなりおったな……」

 そりゃそうですよ。先に他の手段でパワーアップしてたからって強化イベントでスルーされるのは不満も出ようというものです。

 「むー、エラも無理だよねそのりろんだと。エラもピンチの時に次世代機乗り換えイベントとかやってみたかったのに!」

 ……それはちょっと方向が違うと思うんですが。というか、リミッター解除的な機能なら多分あのロマン爆盛車椅子の機能に入ってますよね絶対。

 

 「試験するけど、セヴンスさん、来る?」

 ……いえ、まあ、不満とは別で雛ちゃんの新衣装が見たいので実験には喜んで付き合いますけどね!

 

 

☆★☆★☆★☆

座敷童からゴスロリ幼女にクラスチェンジしたシアちゃん

服を魔力で作ってこない理由は、本人のセンスが精神生命体センスなので地球で着てると死ぬほど目立つかららしいですね?


ということで、強化装備実装回です。

果たして、雛わんこが新たに身につける魔法とは!?

次回、超すごい身体強化!

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