第117話 むむっ!全裸!

 その後、3日経過しましたがシアちゃんが帰ってきません。

 まあ、大方魔物空間でどうせ変えの効く身体だからとされるがままにした結果使い物にならなくなって作り直してるとかそういう奴だと思います。

 どう考えても心配するだけ無駄なので、私含めてだーれも心配してません。

 例えて言うなら、戦闘力53万の宇宙人がヤクザの事務所を覗きに行ったのを誰が心配するかって所ですね。


 ザマさんも調査チームも何やら悪巧みをしているようで忙しそうなので、私達は通常業務と時折持ち掛けられる雛わんこからの実験の手伝いと、エラさんの改造結果発表を受ける毎日を過ごしています。

 そうそう、この前の星機卿カディナルさん。

 私が質問した以外にも当然職員の方も色々質問してて、私がした質問含めてリスト化して渡してくれたんですが……。

 3~4体ぐらい魔物と合体すると何やら高まった魔力をコントロールする方法に覚醒するらしくですね?具体的に言うと、魔物であるのにも関わらず魔力を抑えて生活できるようになるそうです。

 というか、データを確認すれば確認するほど魔法少女化してるという表現があてはまるというかなんというか。

 

 人間形態と変身形態を使い分けられる、人間形態であれば周囲の活性魔力を集めて変身後に使用可能な魔力としてストックできる、自分の戦闘方法に最適な装備を魔力のよって生産することが出来る……と。

 そのまんま私達の性質じゃないですか?

 これ、教団に所属している間に全滅させておかないと逃した人型の魔物が市井に紛れ込む事になるんですよね。

 シティ・アドベンチャーなTRPGは好きですがリアルで人探しとかめんどくさすぎて絶対やりたくないです。


 一応、その旨もザマさんに伝えてはいるんですが、「大丈夫、社会的に殺して関係者全員一網打尽にしてやるから」って怖い笑顔が返ってきましてですね……。

 思わず、長崎銘菓の一口香いっこっこうを生贄に差し出して執務室から逃げ出してしまいました。

 あんな悪い笑顔のザマさん、即死コンボを決める時とか、トレードで全部渡した資源を独占のカードで回収する時とか、勝ったと思って煽ってきた相手から盤面ひっくり返して勝利をもぎ取ったときとか……あれ?結構よく見る顔ですね?

 まあ、碌でもないことになるのは確定なので巻き込まれたくなければ近寄らないほうがいいと思います。


 で、今私達が何をしているかというと……。

 「ミラ、もうちょっと積めると思うんだけどこれだけで大丈夫?ランタンシールドとかウルミとかパンジャンドラムとかも積まなくて大丈夫?」

 「エラ姉さん、その、ランタンシールドとかウルミ?とかどんな武器なの?あ、パンジャンドラムはわかるから大丈夫。あの爆裂ボビンでしょ?」

 「せっかくですから、多少は遠距離攻撃も可能なように弓を持たせてみるのは如何でしょうか?動作の学習元としてわたくしの動きを取り入れたりとかは……」

 「でも理珠姉様とはどうせいつも一緒にいるのだから、ミラの付け焼き刃の弓より理珠姉様が直に射った方が……」

 はい、ミラさんの武器をエラさんの改造車椅子に積載して増やせないか実験してる所ですね。

 ちなみに、ランタンシールドはなんか小手と盾と剣が一体化したみたいな武器?ですね。スイスで実際に使ってたらしいです。ウルミは鞭みたいな薄い鉄の剣でしたっけ?十本刀の刀狩りの人が使ってた奴のもちょい短くて薄いやつみたいな?

 ……そんなの持たされても騎士の人、使い方わからなくて困るんじゃないでしょうか?


 「あ、ちょっと待って。そのクレイモア、まだ血装を付けてないから収納しちゃだめだからね?」

 ミラさんが軽く傷つけた指先から、「そこから出る出血量じゃないでしょ!?」とツッコミたくなる量の血が流れ出して剣の中心を通る管へと満たされていきます。

 そう、剣ですからね?クレイモアっていっても地雷の方じゃないですし、何なら肩に装備してベアリング弾をしこたまばら撒くロボの武装とかでもないですからね?

 まあこれが、ミラさんの七翼騎士団リッツァレイ・イス・スィーミクリーリャで一人1本武器が必要な理由ですね。

 武器内部に存在するミラさんの血を起点として魔法が発動してるんですから、武器を支えている力場である手以外は飾りという話も理解できます。

 

 というか、エラさんもミラさんが活躍できるようにと武器を装着しすぎで車椅子の見た目が剣山みたいになってます。

 「あの、今の積載状態だと私の潜影操手カルンウェナンで運搬できるかわからないのでもーちょっと減らしてみません?というか、エラさん自身の武装もありますし、車椅子もなんか前より重量増えてそうですし……」

 そう、あっちもナニカサレタヨウで、明らかに変形機構が増えてるっぽいんですよねぇ。メイン武装はKARAS……失礼、魔力エネルギーライフルで決まったっぽいんですが近接武器も積んだほうが……とか、中距離に弾幕を張れる武器を!とか、とにかくドリル装備しろってワタクシに何回言わせやがるんです?とか。

 特定の趣味の技術班が寝る間も惜しんでアレコレ開発してて部屋の一角が格納庫ハンガーみたいになっちゃってます。

 予算の使いすぎで怒られる前に、いい加減にしといたほうがいいですよ?


☆★☆


 まあ、今回の魔物崇拝カルト教団に対して私も理珠さんもリトヴィンツェヴァ姉妹も何の因縁もありませんからね。

 あの操られている元魔法少女の藤由かなたさんとも、初代魔法少女の清嶺沙璃耶さんとも大した関係があるわけではないですし。精神的には気楽なものです。

 で、気楽じゃない人達はどうしてるかというと……。

 

 国家機密さんと転移の魔法少女の情報戦チートコンビは寝る間も惜しんで調査に時間を費やしてカルト教団の拠点や構成人数、スケジュール、呼び出した魔物の種類まで可能な限りのデータを集めているようです。

 今までこちらが後手に回ってる展開でしたもんね、情報があればこちらから攻勢に出られますしとてもありがたいです。

 というか、状況を整えて何でもアリの状態にしてしまえばどんな強敵だって真割さんの因果確定必殺パイルバンカーで一撃ですからね。

 この前は私が戦わなきゃいけないのかーとか思ってましたけど、何処かで集会してるところにパトリシアさんが大瓶投げ込んで終末させてもいいですし、転移からの即右ストレートであっさり終わる可能性もあります。  


 ただ、その……。

 怒りを原動力に気力バリバリの比良坂さんはいいんですが、国家機密さんの方が疲れてきてるみたいで、さっき覗きに行った時はヒュンケル黄帝ロイヤルプレミアムとか言うエナドリの10倍ぐらいお値段のする栄養ドリンクを飲んでました。

 本業の方はいいんですか?と質問した瞬間白目向いて倒れてしまいましたが……。きっと私のせいではないです。

 でも、漫画やアニメでもそこそこ珍しい悪の組織に対して情報アドバンテージで先手を取れるレアケースですからね。2人には頑張ってほしいです。


 で、反対に落ち込んでいるのが咫村崎センパイ……。

 まあ、相方が生きてるかも知れない!から、やっぱりもうすぐ消えますはそりゃショックですよね。

 私達と一緒に開発班の実験室に来てるんですが、この3日間心此処にあらずって感じでずっと虚空を見つめています。

 最初は元気づけようと色々話しかけていたんですが、元気がないわけではないから大丈夫と主張されておりましてですね……。

 シアちゃんがいい知らせを持ち帰ってくれればいいんですけど、邪神ですからねぇ。


 そんな事を考えていると、噂をすれば影が差すのことわざを再現するかのように空間が捻れ、小さな人影を吐き出しました。

 いや、何の問題もなく帰って来るのは予想通りなんですが……。

 「シアちゃん。理珠さんのお下がりの着物……、どうしました?」

 何で全裸で出てくるかなぁこの邪神……。



☆★☆★☆★☆

水流崎家で貰った理珠さんのお下がりは体液やら触手の出す液体やらでどろどろぐしゃぐしゃになったので地球の核の中に投げ捨ててきました。

なお、貴重な理珠さんの子供の頃の服を消滅させた事にセヴンスさん激おこです。


悪の組織の先手を取って拠点に殴り込みに行ってそのまま倒す展開、漫画や小説ならともかくゲームのシナリオだと極端に少ない気がします。

邪神の復活を阻止しろ的な話で阻止できるケースと同じぐらい。

もしくは、敵のボスと味方の最強が戦って味方が勝つケースぐらい。

たまにはプレイヤーが気持ちよく快勝出来るシナリオもほしいですよね。



 

 

 

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