第112話 封印と不壊の魔物
『封印』
低い男の声が響くと同時に、魔物を中心に半円状の力場が広がっていくのが見えました。
幸いにも、私はギリギリでブレーキが効いてそこから逃れることが出来ましたが、封印とは穏やかじゃない単語ですね。
身を捻って体勢を整えて着地し、改めて魔物の方を見てみれば……。
えー、普通に魔力の刃を展開したまま仮面の魔物が斬り掛かってますね?
剣を構成している魔力自体に攻撃力があるためか、刃筋や斬撃に力が乗っているか等一切関係ない当たれば良いという斬撃は美しくは無いですが避けにくそうではあります。
アレですね、とりあえず当たれば斬れるからブンブン振り回す感じのスターなウォーズのチャンバラみたいな感じの奴です。
三度までは斬撃を回避した魔物も、体重が乗っていないが故に避けられた刃を即座に切り返せる斬撃をいつまでも躱すことは出来なかったのか袈裟懸けの一撃を受けざるを得ない体勢になりました。
魔物は、せめて直撃を避けるためなのか右手を斬撃に割り込ませ……。
『
あろうことか、生身の腕でその斬撃を受け止めました。
でも、相手はあの初代魔法少女ですよ?不壊と言ってましたので防御力を上げる能力を持っているのでしょうけど、それがわかれば防御無視の何かの魔法が飛んでくるのは当然の流れです。
しかし……。
「硬いんだね。じゃあこれはどう?
魔力刃を消し、杖を銃の様に構えたその先端から
それどころか、その魔法が発動しないことを知っていたように突っ込んできた魔物の攻撃に対して張り巡らせたはずの防御魔法も発動する気配が見えません。
「っと、見てる場合じゃないですね」
接近すると、また、恐らく今、初代さんもどきの魔法を封じているあの『封印』の餌食になる可能性があるので魔物の四肢に
「ありがとう魔女さん、助かったよ!」
その甲斐あってか初代さんもどきはギリギリで攻撃を回避することが出来たようです。
おっと、魔物がこちらを向きましたし、私もこの場に留まるのはちょっと不味いですね。
邪魔をした私を排除しようとかなりの勢いで突っ込んできた封印と不壊の魔物に対し、一定以上の距離を保つ事を意識して
私を逃がしたことを察した魔物はそこで足を止めましたが……。
そこ、私が
それなりに派手な爆発が起こり封印と不壊の魔物が吹っ飛んでいきました。
不壊の能力がどのぐらい硬いかはわかりませんが、とりあえずこれで多少は状況を整理する時間が作れましたね。
周囲を見回してみれば、
一応、あそこからでも破魔の魔物が理珠さんの魔法を消し飛ばせば魔物ならワンチャン生存してる可能性がありますが、破魔の魔物は復活し続けるミラさんの騎士団が邪魔をしていて助けに入るのは無理そうです。
初代さんもどきは恐らく魔法が封じられた状態。いえ、魔物の攻撃を受けた直後は魔力剣が消えていなかったことから考えて、魔法の発動を封印されたという感じでしょうか?……雛わんこには欠片も効果が無さそうな能力ですね。
吹き飛ばされた封印と不壊の魔物はやっぱりノーダメージっぽいですね。何の損傷もなく立ち上がっています。
多分、アレも中身入りな気がしますね。ただの魔物にしては行動が的確すぎます。
で、コピーの魔物は……。
「やった!やりました、流石です
歓喜を全身で表し、理珠さん達を睨みつけると空へと浮かび上がりました。
あー、そうですよね。初代さんの特権だった無条件の飛行能力、『魔法少女の根源』をコピーしたなら当然最初に使いますよねその魔法。
さて、紅姫さんの活躍でこちらに傾いた天秤がものすごい勢いであっち側に引っ張られてますね。
戦力的には正体が判明した封印と不壊、破魔、魔法少女の根源をコピーしつつ、なんなら封印やら不壊やらをそこに上乗せしてくる厄介オブ厄介な敵になったコピーの魔物。
こちらは私と理珠さんとミラさんで、初代さんもどきを守りつつこの3体を倒さないといけないと。
紅姫さんも何処かにいるでしょうけど、もう何度か彼女に魔法を使われたらこの戦闘での被害額が酷いことになりそうです。
はてさて、どうしたものやら……。
「うわっ!私の空を飛ぶ魔法使われちゃってるんだ!でもあの魔法、姿勢制御に結構神経使うから空飛びながら使える魔法の選択肢って結構限られるんだよね」
確かに初代魔法少女の戦闘映像でも移動時はほいほい飛んでましたが、空中から攻撃していたシーンはほぼなかった気がします。
となると今アイツはリソース消費が多そうな能力や魔法はコピーが出来ないと考えて良いでしょう。
あ、これもしかして今チャンスだったりします?
私達が驚異だと感じた魔法が実は弱体化魔法だったと判明するとか、本来の使用者様々すぎません?
まあ、そういう事なら今のうちにアイツを殺ってもらいますか。幸い、高く飛びすぎて破魔の魔物の妨害範囲からも抜けちゃってますからね。
「二人とも、アイツ集中砲火でお願いします!」
私も攻撃に参加したいところですが、この初代さんもどきを封印と不壊の魔物から守らないとですからね。
「まっかせて!」
即座に反応したのはミラさんでした。
騎士のうち3人程を破魔の魔物相手の牽制に残し、残りの9騎が空を飛びました。
……って、そりゃ本体は武器を保持している手で身体は見せかけだけっていうなら元から1メートルぐらい飛んでるようなものですもんね。更にそこから高度を上げ下げするぐらい大したことじゃないんでしょう。
「お前らも飛ぶのかよ!ちょっ!やめっ!」
あー……、突然飛んで迫ってきた騎士達にコピーの魔物が袋叩きにあってます。
かといって即座に飛行魔法を解除すると墜落してしまいますし、細かくいろんな魔法を使って騎士達の攻撃を防御していますがそれ以上の事は無理そうですねアレは。
……勝利宣言してドヤ顔してたら実際は詰んでたとか地味に可愛そうになってきました。いや、だとしても倒すんですけどね、理珠さんが。
「おー!君たちすごいね!しくじっちゃった私が言うのもなんだけど、コイツらって結構強敵なんじゃないの?結構余裕あるよね?」
だってまあ、相手の攻撃性能が低くて
あと、本来なら一番めんどくさい相手になるはずだったコピーの魔物が実質自爆してますし。
おっと、私が余所見をしてた隙をついて封印と不壊の魔物が突っ込んできていたので
正直この封印と不壊の魔物も私にとって大した敵ではないんですよね。
封印の能力が既に展開している魔法に対しては効果を発揮しないのが残念すぎる所で、ほら、この今も展開している
あ、ちょっとこちらで小競り合いをしている間にコピーの魔物から蔦が生えて死に体になってます。
徐々に高度も下がってきてますし……って、破魔の魔物が体内を浸蝕する蔦をなんとかしようと真下から龍が昇りそうな→↓↘️っぽいコマンドのアッパーで破魔の能力をぶつけちゃったんですが……。
貫蝕の藤矢の効果は確かに消えたんですが、同時に飛行の魔法も消えて普通に地面に向けて墜落していきましたね。
で、そこに群がる亡霊騎士団。
これはもう終わってしまったんじゃないでしょうか?
さて、破魔の魔物単体ではあの2人の相手にならないでしょうし、私もこの封印と不壊の魔物を片付けて本来の作戦に入りましょうか。
☆★☆★☆★☆
余裕こいて勝利宣言したら一番使っちゃ不味い魔法を使ってたという事故
火力と範囲マシマシで周囲の建造物に対する被害無視してどっかんどっかやられたら撤退を考える勢いでした。
なお、空飛んじゃったせいでそんな魔法を使うリソースは残ってなかった模様。
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