第109話 七翼騎士団
「ほいほーい、じゃあいつも通り私達が概念型の方に向かえば良いんですね?あ、ザマさんもそろそろな気がします?私もなので安心してください、油断はしませんよ。じゃあ、そろそろ出発しますね?え?小城羊羹?なーんのことかわーかりませんねー?」
念の為、配置はいつものパターンで行くのかだけザマさんに確認したので私の出発準備は整いました。
まあ、私の準備なんて変身の
と、私が電話をしてる間にミラさんがなんかもんのすごい重装備になってます。
腰に長剣を左右3本ずつ佩いて、背には大太刀を2本揃えて背負い、両手に1本ずつ巨大なハルバード。純白のドレスにその重装備は……アリですね!
「セヴンス、今回の相手がミラと極端に相性が悪いのでなければこの装備の試験運用をさせて欲しいの。相手は概念型だし、無理だと思ったらすぐ退くから……ダメ?」
こんな可愛い義理の妹に上目遣いでお願いされて断れる姉などいるのでしょうか?まあ、こっそり
「じゃあ、皆準備は良いですか?」
声を掛けると、阿吽の呼吸で左右からしっかり抱きついてくる理珠さんとミラさん。
で、今回お仕事してもらうシアちゃんは……。
「んー、戦闘に巻き込まれたりしてもめんどうじゃしな。やつがれ、少し遅れて行く事にするのじゃ。別に、鬼の娘に分けてもらった羊羹が思いの外美味かったので追加をもらおうとしてるわけではないのじゃ!」
あーはい。邪神は別に戦力換算してないので大丈夫ですとも。
ちなみに、エラさんは
……さっきブースター飛行してましたけど、ほんとに参戦不可なんです?いや、実験中とかでまだ戦闘機動に耐えないとかなんでしょうけど。
「では、それなりに時間をかけて戦闘して謎の仮面魔法少女をおびき出してきますね?」
咫村崎センパイにそう挨拶すると、センパイも力強く頷いてくれました。無茶しそうな様子は無いですね。この分なら、とりあえず今回のシアちゃんの異空間探索で何かやばい事実でも出てこない限りは大丈夫でしょう。
「あ!待って?」
おや?雛ちゃん何かありましたか?
「えっと、これ、もう1本無い?」
「……ザマさんにねだると良いですよ」
そうですか、気に入ったんですね……。
えー、とても締まらない空気の中で出撃することになりましたが……、いつも通りですね!
☆★★
で、はい、現場にニュルっと到着してみたわけなんですが。
なんと、珍しく先着していた地方所属の魔法少女さんが居ました。
「ややや、やりました、勝ったのです。セヴンスさんが到着したのです!」
……この弱々しいのに図々しい感じの声、何度か共闘……共闘?した名古屋担当の魔法少女、雷帝の魔法少女
常にバチバチと電気を放電する黄金の髪をポニーテールにまとめ、白地に赤い雷の意匠を纏わせた狩衣姿の魔法少女さんです。
とても火力の高い魔法少女で、雷の落ちた場所へ瞬間移動する魔法なども持ち、正直初動対策課に来ていてもおかしくない強力な魔法少女……なのですが。
「ふへへへ、じゃじゃじゃ、じゃあ私が戦う必要は無いですよね?セヴンスさん達の方が上手に戦ってくれますもんね?さささささ、下がってもいいですか?良いですよね?下がりますね?」
なーんか、私が来ると戦闘に参加しなくなっちゃうんですよねぇ……。
まあ、この子ぐらい気持ちの良く全部押し付けて逃げてくれるのはそれはそれで気が楽なので問題ないです。
というか、その後で魔生対宛に私に渡してくださいって御礼状と菓子折り送ってくる謎の丁寧さがむしろ気に入っています。
で、敵さんはどんな魔物でしょうか?
姿はいつも通り、ボロ布を纏った人間型。普段よりちょっと身長が低く見えます。
概念型は外見から何をしてくるか予想ができないのがめんどくさいところです。まあ、対策されてるとは思いますが私達の初手はいつものやつからスタートです。
「では、さしあたっては普段通り様子見……と言うことでよろしいでしょうか?」
私とミラさんが頷き、理珠さんがいつもどおりの詠唱を始めます。
「「見るも
今、隠しの藤御簾の詠唱が二重に聞こえませんでした?
というか、明らかにあの魔物も同じ詠唱してましたよねぇ!?
案の定、魔物を中心に藤の花が咲き乱れ……、はい、魔物が認識できなくなりました。
「藤花と静謐の魔物……なのでございましょうね。小賢しい事を考えるものです」
あ、理珠さん地味にイラっと来てますね?
そりゃ、自分の象徴たる魔法をそっくりそのまま盗まれたら頭にきて当然ですよね。
「多分、性質そのままのコピーなので中にいる存在に対して害意を持つ者からの認識不能ですよね。さて、どうしてくれましょうか」
ちなみに、ここで言うどうしてくれましょうは、「
あと、このまま時間が経過すると映像配信時の絵面が死ぬほど地味になって撮れ高さんが死にます。
一応、派手にふっとばす魔法はあるにはあるんですがあんまり瞬殺しても仮面の初代さんが現れないので当初の予定がこなせなくなるのも問題ですし。
「セヴンス、ウィス姉さま。最初に言った通りミラがやっていい?」
ふむ、ミラさんの新魔法初披露の相手としては不足なしでしょうし、良いんじゃないでしょうか?ちなみに、私もその新しい魔法教えてもらってないんですよね。
お披露目まで内緒なんですって。
「あ、大丈夫。ミラ自身はこの藤棚から出ないから」
ふむ?その近接偏重の重装備で遠距離攻撃魔法なんですか?
「セヴンスの魔法を参考にした、一つの魔法で色んな事に対処出来る画期的な魔法なの。見てて!」
言うが早いか、弾んだ足取りで隠しの藤御簾外縁部まで進むと、ミラさんは詠唱を開始しました。
って、剣抜いたりはしないんですね?
──
ミラさんが詠唱を開始すると同時に、腰の長剣も、背中の大太刀も鞘ごと宙へ浮かび、まるで騎士が陣形を整えているかのようにミラさんの後ろに綺麗に並びました。
「ミラね、思ったの。
鞘に収められたまま並んだ武器達に対して強めに魔力感知を走らせてみれば、そこには魔力で創られたおぼろげな
「だって、セヴンスのあの魔法。剣自体にある程度の自律行動をするわけでしょう?なら、傀儡の根源ならもっと色んな判断を下せる人形が作れるんじゃないかって考えたの。で、シアに協力してもらって作った魔法がコレ」
「抜剣!」
ミラさんの声と同時に整列した鞘から滑らかに剣が引き抜かれました。
いや、鞘も何も無いハルバードはそのままですが。
「魔力を編んで作った仮想生命の騎士団に、状況に応じて様々な戦術や能力を付与して戦わせる魔法。魔力さえ注げば無限に復活する不死身の騎士団による制圧魔法」
『
「今回の騎士団は、ただ魔物の魔力を持つ敵に最も効率よく剣を振る事のみに専心する騎士達。そこには害意も悪意も無く、ただ決められた目標に向かって如何に上手く斬撃を繰り出す事以外の思考が許されていないの。ウィス姉様から盗んだ魔法じゃ、コレを防ぐことは出来ないんだからね!」
なるほど、魔物を狙って攻撃はするけどそれはプログラムに従ってるだけであって悪意も敵意も無いから藤御簾に隠れていようが見つけられる……と。
ひっどい理屈ですがそれがまかり通ってしまうのが魔法の世界。
そして、それがわかってるからこそミラさんもとてもイイ笑顔で宣言しました。
「総員!進軍開始!蹂躙を開始します!」
☆★☆★☆★☆
というわけで、ミラちゃん新魔法お披露目回。
悩んだ挙げ句、バッド・カンパニー騎士団になりました。
仮想生命体の設定によって色んなパターンの戦闘をこなす汎用性の高い魔法です。
目下の問題は、武器の数=兵数なので持ち運びをどうするかですね。
あと、水雷天紅姫さんは「雷帝」の魔法少女です。
「雷霆」ではございません。
帝なので、弱い牽制用の魔法とか許してもらえません。
全部大火力です。
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