第102話 超能力ってヤバくない?
「だから、仮説としては超能力は非活性魔力を触媒として人間のナニカを消費して使う特殊な魔法になると思う」
「しかしアレじゃぞ?やつがれからすれば炉の隣に燃料を置いたらエネルギーが発生したみたいな、およそ常識では考えられん現象なのじゃが?」
「でも、シアさんの常識だとそもそも魔物の存在からしてあり得ない存在なのよね?科学の世界では起こっている現象と常識なら現象の方を優先するのが大前提でしてよ。よろしい?」
えー、放心状態で魔生対本部まで半ば拉致するような形で連れて来た咫村崎センパイなんですが、シアちゃんと雛わんこの議論に当てられたのか、科学者さんチームとしてとても元気になりました。
いや、元気というか、何かやってないと不安やら謎の焦燥で落ち着いていられないので必死に研究してる感じですかね。
まあ、ブツブツつぶやきながら虚空を見つめて放心してた先日よりは余程マシというものです。
議題は超能力の性質解明……ですかね?
初代さんの魔物やら死体の残る喋る魔物は情報が少なすぎて議論するのにも材料が足りないそうです。
その点、超能力に関しては使い手がそこに一人いらっしゃいますからね、推論・試行・観察のサイクルがこの場でやれるとシアちゃんが超ハイテンションでした。
まあ、謎の教団・星の
問題は……。
「セヴンス、ミラ、あの3人が何を言ってるのかよくわからないんだけど。仮想の力場とか虚弦軸とか存在しない質量とか、セヴンスが好きそうな単語は出てるんだし解説して?」
「……正直、わたくしもあの3人のおっしゃっている単語の意味すらよくわからず……。セヴンス様がおわかりになるのでしたら多少なりとも手ほどき頂けるとありがたいのですが」
うん、そんな期待を込めた目で見られてもですね?
一応、一応ですよ?
大雑把に何を言ってるかはわかるんですが、それを正しく説明しろってのは流石に専門家でもなんでもない私にはハードル高くないですか!?
いや、それでもこの2人にこんな熱視線を向けられたら逃げるわけには行かないのが辛いところですね。
とりあえず……。
「未だ結論は出てないみたいですし、そこからの理解で大丈夫じゃないですかね?今どんな感じの話してるのかを理解したいっていうなら大雑把な説明は出来ますが、結果として今話してる仮説は全部間違いだったみたいな流れ普通にありますからね?」
出来れば、説明する労力は1回に抑えたいのです!
「つまり、精神感応の超能力者は魔物と意思疎通出来る可能性が……」
「集団を精神感応で操ればゆらぎから生まれる魔物の性質を自由に決められるやも……」
「待って、超能力使用時のデータ見たら体内の活性魔力が減ってる。ナニカを使うと一緒に出ていく?」
というか、雛わんこはいつもの事として、3人共別の議題に関して話してる様に見えるんですが大丈夫なんですかこれ?
「じゃあ、超能力者で、精神感応使える人は超能力を使うと体内の魔力がなくなるから魔物に襲われないし、魔物を操れるし、その人が集団のリーダーなら生まれる魔物も自由に操作できるってことだよね?でね?エラ、気がついたんだけど、エヴゲーニヤ博士の作ったゆらぎの発生装置っていくつか売られたってデータが残ってたんだよね?その、星の
ヤバい(確信)。
あと、地味に話の内容をしっかり理解してたエラさんもヤバいです。
しかし、なんか爆速で議論が進んでますが、普通こういうのは偉い学者サン達が集まってあーでもないこーでもないって議論して実証実験してやっと仮説が出るみたいなものじゃないんですか?こんな、現場直結の待機室で急に結論が出る議題じゃなくないですか?
……と、一瞬考えたんですが。
そもそも、地球上で誰よりも魔力に関して詳しいであろうシアちゃんと、魔法少女にして超能力者である咫村崎パイセンと、魔法少女にして天才的な頭脳の持ち主である雛わんこの3人以上の適任なんてこの世界に居ないんですよね多分。
そもそも魔力の研究という分野自体が、魔力保有者さん達が研究者になることで最近やっと進み始めた分野だったりしますし。
ほら、研究したい!って学者さんは沢山居たんですけど、結局魔力が見えないと理論も仮説もあったもんじゃなかったので……。
それを踏まえると、自身は魔力が見えもしないのにゆらぎの発生装置を作ったエヴゲーニヤって実は優秀だったんですね。
あくまで、研究者としてはですが。
しかし、魔物崇拝者達が自由に魔物を創れ、操れるとして目的はなんなんでしょうかね?
こういうのって、大抵は教団という形式自体が隠れ蓑で指導者とかは別の目的を果たすために信者達を利用しているってのが漫画や小説だとお決まりのパターンなんですが。
んー、そこは調査報告を待ちますか。
多分ですけど、前にもらった調査報告書から考えて情報収集に特化した魔法少女が居そうなんですよね、
「なるほど、エラさんの仮説の望んだ魔物を創り出せるという部分には、わたくし大いに賛同させていただきます。そうでなければここ最近の概念型の魔物の連続発生も、その概念型の魔物が明らかにわたくしの隠しの藤御簾を攻略するための能力を持っていた事の説明が出来ませんもの」
「接近したら魔力が燃え上がる『炎上』、完全ランダムで人食い植物の種をばら撒く『食虫植物』、攻撃が風まかせで意図の介在しない『花粉症』、パッシブ能力で、見た人間の精神にダメージを与える『冒涜』、なるほど。確かにミラ達が最近戦った概念型の魔物は全部リズ姉さま対策と言えるのかも」
あーはい、なんだかんだ強敵多かったですからね。
特に花粉症の魔物なんてあくまで花粉症という『概念』なので本来花粉症が無くても発症するという厄介極まりない魔物でしたし。
なお、私はゾンビなので?花粉の受容機関である目鼻口を完全に密閉してしまえば呼吸は出来なくなりますが一切の花粉を受け付けなくなるので何の問題もありませんでした。
で、概念型の強敵と戦闘してると必ず来るんですよ、初代さんもどきの仮面の魔物が。
というかですね?
そもそも、その概念型の魔物が出現するのが大抵他の場所で魔物が出現した直後なんですよね。
何かの方法で操作してるって話は当たり前ですが、2回目ぐらいからずっと出てました。そもそも概念型の出現率高すぎですし、タイミングもおかしいってなれば当然出る疑惑ではあります。
更に言うなら、複数人食べた後と思われる魔力量の魔物が何回も出てくるのがこの国の防衛網的に考えておかしいんですよね。
少なくとも、魔生対で出現をキャッチした魔物の討ち漏らしは私の知る限り皆無なはずです。
あ、ちなみに、死体が残るタイプと喋るタイプはアレ以降出現してないですね。
なんとなくですが、アレを作るのに超能力者を犠牲にしなきゃならないから量産できない的な奴何じゃないかと思います。
うーん、国内で明確な敵対集団の名前も情報もわかってる相手なんですから、何かの法律で取り締まったりとか出来ないんですかね?
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集団を精神操作して好きな魔物を呼び出せるとかなら、可愛い女の子の魔物とかレアメタルを無限に生み出せる魔物とかを呼んだほうが幸せなんじゃないですかね?
魔法少女と戦って何がしたいんでしょうね?
次回は裏方組の調査回予定です。
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