第101話 今回も、羽佐間彩月の胃は痛む
「ねーねースネ希、報告書ね?しっかりした文体でどこに出しても恥ずかしくない書式なんだけど、さすが社会人経験者って感じの見事な出来なんだけどー……。何っっっ回読んでも情報量が多すぎて脳が理解を拒むのね?どうすればいいと思う?」
あの後、放心状態の咫村崎パイセンを半ば拉致するような勢いで保護し、ついでに純魔結晶も魔物が狙ってる可能性があるって事で保管してある分全部かっさらって帰ってきたわけですが……。
流石に、戦闘もやりましたし、死体として残ってるインチキ超能力者も処理をお願いしなきゃなりませんし、魔物を狩る魔法少女姿の魔物も報告しなきゃと、頑張って報告書を書いたんですね?
で、じっくり時間をかけて、3回ぐらい読み直したザマさんの感想が今の奴です。
大丈夫です。私も正直良くわかりません。
「とりあえず、魔物を狩る初代さん姿の魔物を見てショックを受けた咫村崎さんを保護してきたのと、ついでに純魔結晶を研究所保管分全部回収してきた事ぐらいが私達の理解できる範囲で、その他は情報も足りませんしサンプルも1件だけだったりで考えるだけ無駄案件じゃないかなぁと思います」
まあ、前例が無い魔物の死体に関しては現在、雛わんことシアちゃんが議論の最中です。なお、イツァナグイはシアちゃんの「魔物が大量発生した砂浜とかこの前の港とか絶対大量に純魔結晶が落ちてるはずなのじゃ!探してくるのじゃ!」と無茶振りされてとほほ顔で出ていきました。
ヘビのとほほ顔とか始めて見ましたね。
「それがさー、あんた昨日流石に疲れましたってすぐ帰って寝たじゃない?その後深夜に珍しく魔物の連続発生があってさー、寝てるとこ申し訳ないけどスネ希起こして対応させるかーってなってたの。そしたらさ、出たのよ。その、初代魔法少女の魔物」
ほほぅ?と話を聞きながらスマホのログを確認しますが、着信履歴は有りませんでした。ということは……。
「で、魔生対の魔法少女が駆けつける前にそいつが魔物を倒してしまったんですね?」
困り顔で頷くザマさん。
「そーなのよ。いやさ、しかも結構な一般人に目撃されちゃっててね?ほら、私含めて魔法少女でもなければ魔力の質なんてわからないから、アレが魔物だなんて思わないでしょう?もうね、ペケッターどころか一部ニュースサイトでも騒ぎになり始めてて、頭が痛いったらありゃしないのよ」
あ゛ー、そうですよね、普通の人が見たら復活した初代魔法少女にしか見えませんよね。
「初代魔法少女、セイクリッド・スターの清嶺沙璃耶さん。アンタの倒したあの魔法少女の悪意の魔物に拐われて行方不明って最期だったから、あのクソボンテージが姿を写し取って現れるまでは生きてることに賭ける系の人のファンの人たちがほんの少しだけ居たのよね。それが今回の件でもう大盛りあがりしちゃっててさー」
まあはい、死んだと思ってた推しが生きて動いてる映像をみたら誰だってそうなりますよ。
でも、謎に純魔結晶を持ち去るとは言え今のところ敵対行動は取ってないんですよね。魔法少女としては詳細が判明するまで放置するスタンスでいいんじゃないでしょうか?
あー、いや、魔生対としては流石に何かコメント出さないとダメですね。かといってアレは魔物なので近寄らないでって言っても「何言ってんだお前?」みたいな反応になりそうですし……。
うっわ、組織として考えると超絶厄介ですね。ザマさんがんばえー。
「いっそ、服装だけ同じにした人形をミラさんに操作させてアレはミラさんの操作してる人形ですー。単独行動してるのは遠隔操作の実験ですーみたいに言い張ります?」
下手なごまかしですが、こういうのは「そういうこともあるのか」とちょっとでも思わせられるかどうかですからね。
と、ザマさんを見ると呆然としてますがどうしたんでしょう?
「しまった、その手があったか。先にスネ希に相談しとくべきだったぁ!もう、研究所での戦闘の映像公開しちゃった後なのよぉ!」
おっと、時すでに時間切れだったようです。
あれ?となると……。
「背後に思いっきりシアちゃん映ってたと思うんですけど、それは大丈夫なんですか?いくら何でもあの状態で逃げない一般人は居ないでしょうしモザイク処理してても怪しさ1000%ぐらいありません?」
戦闘している背後でのんびりとくつろぐ座敷わらし系少女。不可解の塊でしかありませんね。
「あー、あの子もあの子でやっぱ人外なのよね。録画を見たシアさんと顔合せの済んでない普通の人からは存在の認識すら出来ないみたい。そこの子にモザイクかけてーって指示しに行ったんだけど、編集担当の職員さんに「そこの子って誰のことです?」って真顔で返されちゃった。一応、魔法少女からは見えるらしいんだけどそっちは別にいいかなって」
おおう、認識阻害魔法の強化版みたいな奴ですかね?
あと、魔法少女は大体身内ですしね。海外の魔力保有者にも見えるかもですがそっちは個別対応で良いと思いますし。
後は……。
「そういえば、今後また魔物が死体を残した場合ってどうすれば良いんです?今回みたいな人型の魔物が死体を残した場合の処理って相当めんどくさい気がするんですけど?」
「そこに関してはほんっっと申し訳ないんだけど、人型の魔物の死体が出た場合は持って帰って来てくれる?出来れば他の子には死体みたいなものに触らせたくないんだけど、アンタなら良いでしょ。そりゃ、気持ち悪くはあるかもだけど」
はい、どう見ても外見上は人間の死体に見える物体を持って帰るとか気持ち悪いことこの上ないですが、他の子がそれをやるぐらいなら私がやるべきですね。
伊達に歳は食ってません。
……そういえば、私の中の人の年齢は27なわけですが、咫村崎センパイと年齢的には大差ないんですよね。
なんかザマさんの親友ってだけで私が割を食ってるような気がしてきました。
いや、使える魔法的に私がやるしかないんですけどね!
「というか、また死体が出るって予想してるんですねザマさん」
アレがイレギュラーだったと処理せずに次の時の想定を翌日に済ませてるのはそういうことでしょう。
「はいこれ。ここ数年で行方不明扱いになってる自称超能力者達の名簿。今回の死体と同じ顔の百合谷ゲラーも2年前から行方不明だったらしいの。警察でも何かあると思って調査はしてたんですって」
なるほど、と受け取った名簿を眺めてみますが……。
名前だけ書かれても誰のことやらさっぱりわかりません。超能力・霊能力ブームもすっかり下火らしく、ほとんど一発ネタ系の芸人みたいな扱いだったらしいですね。
TVタッコーもUFOとか乗せたら騙すの大予言とか全然扱わなくなってましたからねー。いや、ここ10年で再度方針変わってたらわかんないですけど。
しかし、「行方不明」との記述はあるものの全然足取り追えてませんね?
いやまあ、事件性が有るかどうかさえ不明なものに人員を割けなかったってのはあるんでしょうけど。警察の方も大変ですね。
というか、不思議なことにこの名簿に記された20人近い行方不明者なんですが、誰一人として捜索願が出されてないっぽいんですよ。これ、すごく不自然じゃないですか?
「あ、捜索願の所に気がついた顔ね?そこは、
と、ザマさんがPCのモニターをこちらへ向けると、そこに表示されていたのはその宗教団体と思しきホームページ。
『現世救済教会・星の
胡散臭さ抜群の名前と共に表示されているのは世界各地で観測された人型の魔物の写真。
……えーっと?
これ、どう見ても魔物崇拝してるやべー団体じゃないですか!
「なんか、失踪者のご家族ともども全員ここの信者になってるっぽくて……。いくら何でも怪しさ大爆発だからウチの諜報担当に今調べてもらってる所。何か進展あったら連絡するからよろしく」
今度は宗教団体の相手しなきゃならないんですか?
なんというか、近寄りたくなさはこれまでの相手と比較してぶっちぎりの1位なんですが。
あと、流石に人間相手に魔法ぶっ放したくはありませんからね!?
そこの所よろしくおねがいしますよ!?
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報告回と今後どうすんのかについてと今回の敵の紹介
宗教、怖いですよね。日本人ぐらいの距離感が一番平和だと思います。
まあ、魔物なんて謎の生命体があちこちに発生してたらトチ狂って崇拝しはじめる団体が出るのは予定調和ですね。
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