第95話 肝心な時にしか役に立たないヒーロー
『ワンハンドレッド=サン、今日もランチはカレーですか?ご一緒してよろしいですか?』
『はい、一緒にいきましょう』
なんだかんだアメリカに来て数ヶ月、やっぱり毎日その言語に囲まれて暮らすっていうのは最強の勉強法だよね。なんだかんだ、ボクだって日常会話ぐらいならこなせるようになってきたんだ。すごいでしょ?
で、今カレー食べに行こうよって誘ってきたのはネイティブアメリカンのメディスンマン、ストーム・レイヴァンことココ・レイエスさん。
よくわかんないけど、リトルウィッチとは違うらしくってリトルウィッチって呼ぶとちょっとむっとした表情をされるね。
身長は高めで多分160台後半ぐらい。
ボクたち日本人と同じ黒髪で長い髪を邪魔にならないように何箇所か括って終わりって感じのおしゃれには興味無さそうなタイプ。
なんかね、ネイティブアメリカンの人が魔力に目覚めるととーてむ?っていうのか、動物関連の根源になりやすいんだって。
で、ココさんカラスの根源でね?自分の民族はともかく他じゃどうにも不吉だーって言われてていいイメージが無いけど日本人はどうなの?って聞かれてさ?
三本足のカラスが神様として祀られてるとか、ワタリガラス……というか、レイヴンって言われるとロボットに乗って戦う傭兵っぽい意味になるとか話したら大ウケしちゃって、そのまま仲良くなっちゃった。
身体は闘争を求めるとかなんとかってやつ、ボク自身はプレイしたこと無いんだけどね?
で、日本っぽい食べ物が恋しくなると結構な頻度で来るのがここ、グーグーカレー。日本のチェーン店がアメリカに支店出しててくれて助かったよね。
ボクはラーメンよりカレーのほうが日本っぽい味だと思ってるからね。
早めにランチタイムに入らせてもらって、やたら日本人率の高いビジネスマンさん達よりちょっとだけ先にお昼を済ませる。
やっぱカレーは和食だよねー。
食事しながら話題になったのはちょっと前の空母の魔物との戦闘。
魔生対の戦闘映像って別に国内限定配信とかじゃないからこっちでも皆観てるんだよね。
ボクも参戦したかったなー。
まあ、あの日は「スカ」だったから日本に居ても戦闘は無理だったんだけど。
あ、「スカ」っていうのはボクのこだわりとかイメージとかそういう関係で絶対に変身できないドライバーの日の事なんだ。
いやだって、電車のドライバーに2号ドライバーは居ないからね?居ないんだよ?ね?わかった?
ちなみに、エンドブリンガーさんの大規模破壊魔法がめっちゃビビられてたね。
仲が悪かった人かな?が、なんかすごい青い顔してた。
それはそれとして、カレーはやっぱり美味しいよね。
ココさんもだいぶ辛くしたやつを顔赤くしながらもガツガツ食べてて見てて楽しくなってくるね。
と、ココさんもボクも食べ終わって水を飲んでるタイミングで2人のスマホが同時に鳴った。
エマージェンシーコールだね?
急いで本部に戻らなきゃ!
とんぼ返りした本部では戦闘参加希望者の選定をやってた。
現地で撮影した映像がネット経由で送られて来て皆で見て、戦えそうだと思った人が立候補する感じだね。
今回の魔物は……。
「うわー、概念型かー」
映像に映し出されているのは黒い布を被った人型の魔物。
実は概念型ってなぜか知らないけど全員人型で顔が見えない感じの姿なんだよね。
で、困った事に超強いんだよね……。
ボクも昔「空腹の魔物」と戦った事があるけど、隣の魔法少女をかじりたくなるほどの空腹が襲ってきてものすごく大変だった。
……偶然その時、果物モチーフのドライバーだったからボクのスーツは実際に隣りにいた九條さんにかじられちゃったし。
なんだかんだ、日本の魔法少女にどのタイプの魔物が厄介だと思う?って質問したら概念型か第三種群体型のどっちかって答えになると思う。
第三種群体型は本体が隠れてても厄介だし、戦場で陣を敷いて部隊を指揮し始める奴とか居て一人で対処できる魔法少女が限られてるしね。
概念型はもう、基本ソロでの戦闘が禁止されてるぐらいには強敵扱いだよね。
ボクたち魔生対だって真っ当に戦うのを避けるのが当然って考えになるぐらいだもん。
概念型の主な倒し方は水流崎さんが藤棚の中から足止めして、真割さんがあの因果確定必殺パイルで一撃必殺する感じ。身も蓋もないやり方だけど、そうでもしないと危険すぎて戦ってられないってのが本音だよね。
まあ、概念型自体がレアで5%にも満たない出現率っていうのは救いかも?
『現場近くに居合わせたアベンジ・ストレングスがもうすぐ交戦を開始する予定だが、
司令官のジャスティン大佐の言葉に静まり返るリトルウィッチさん達と、元気よく手を挙げるボク。
わかるよ、概念型って殉職率が一番高い相手だもんね。せめて何の魔物なのか判明してから戦うかどうか決めたいよね。
ボク?今日のボクは大丈夫。何と言っても今日は自分より強い相手には絶対負けない、肝心な時にしか役に立たないヒーローが選ばれたからね!
『サクヤが戦うなら、私も行こうと思う』
ボクを心配してくれたのか、ココさんも一緒に行ってくれるみたいだね。
パワー系近距離型のアベンジ・ストレングスさんに、遠距離メインのストーム・レイヴァン、遠近どちらでも行けるボクでバランスは取れてるね。
後は相手がどんな概念なのか次第って感じだ。
『ココさんはボクが守るから、皆一緒に帰ってこよう!』
笑いかけるボクの顔を見たココさんがなんかそっぽ向いちゃった……。
んー?結構仲良くなったと思ってたんだけど、どしたんだろ?
概念型の特徴の一つに、人口密集地というか都市部に出現しがちって傾向があるよね。郊外やら、ちょっとお年寄り率が高すぎる地域とかに出てきたのは見た記憶がないかも。
今回もその例に漏れずニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン前に現れたってわけだ。
コレはボクの勝手な予想というか妄想なんだけど、概念型っていうのは人間の魔物なんじゃないかなって思ってる。
なんというか、通常型の魔物が人間の姿になる事が決まったら概念型に進化する的な?まあ、そんな気がするってだけで理論も何もあったもんじゃないから誰にも言ってないけどね。
いつものように、戦闘機からパラシュートでダイブ!
なんだけど、流石に何の概念かわかってない相手に空中から必殺キックはやめといたほうが良いかなって思うね。
例えば、前に日本で出た落下の概念の魔物だったりしたらキックの速度のまま地面に叩きつけられることになるんだよ?流石に死んじゃうよ。
それに、今日のボクはトランプのダイヤとクワガタがモチーフのドライバー。
必殺キックが普通の飛び蹴りスタイルじゃないから普通のキックになっちゃうんだよね。
無難に、魔物からちょっと離れた場所に着地して着地と同時にココさんを守るような位置まで一気に走る。
走りながら専用武器である銃を抜いて概念型の魔物に向かって構えて……。
ってあれ?
あの、必死の形相で魔物から逃げてる赤いボディスーツで赤毛の女の子ってアベンジ・ストレングスさんなんじゃ!?
『やめろぉぉぉぉ!来るなぁぁぁ!蜘蛛を!蜘蛛をこっちに向けるなぁぁ!ひぃぃぃぃ!!』
え?魔物は別に蜘蛛なんて従えてないし、不気味に佇んでるだけなんだけど……。
『アベンジ・ストレングス、前に
冷静に分析できるココさんすごいよね。
アレだけ怖がって必死に逃げてるところを見ると、トラウマか恐怖かどっちかの概念かな?
うーん、これは二人で一人のドライバー方が適任だったかも知れないね。
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概念系の魔物の説明回にして100号ちゃんの現状報告。
友だちもできて英語もそこそこ喋れるようになった模様。
あと、テラー・ドーパント(ドーパントではない)登場
100号ちゃんの「スカ」ですが、二人で一人の奴も一人分しか動かせないのでスカ扱いだったりします。
1話で終わらなかったので次回も100号ちゃん回です。
必殺キックの中で一番かっこいいと思ってる肝心な時にしか役に立たない男のキックが炸裂します。
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