第94話 なんで皆その反応なんですか!
まあ、私が実際に救世主なのかどうかはさておき。
一応ですね、念のためというか、現物を見て違ってたら困るよね?と言う事で、魔石の実物を見に行く事にしようという話になりました。
確かに、実際見てみたら性質が似てる別の何かで、エヴゲーニヤ博士が特別だったって事だったりしたら逆に何の心配もなくなりますからね。
理珠さん曰く、魔生対の管理下に魔石の研究機関があるらしく、ザマさん経由でアポを取ってから訪ねてみようという事になりました。
「では、私と理珠さんとミラさんは私の魔法でサクっと魔生対まで潜って移動しちゃいますが、シアシャル・グラゼはどうしますか?」
うーん、やっぱシアシャル・グラゼって長いし言いづらいですね。今後はシアちゃん呼びにしましょう。壊龍?対策とか一人で頑張る羽目になってるのを見て多少溜飲も下がりましたし。
「うむ、お主らの、というかセヴンスの魔力はこの星の上であればどれだけ離れようとやつがれの知覚範囲内じゃから問題ないのじゃ。そちらが到着次第、やつがれも存在座標の修正でそちらへ飛ぶとするのじゃ」
なるほど、私達が別行動でも問題は無さそうですね。
ただ、一つ気になる点が……。
「知覚範囲といえばですよ?シアちゃん、もしかして私の魔力感知の範囲が無駄に広範囲なのもシアちゃんのせいだったりします?」
イツァナグイも関与してなかった謎の超広範囲魔力感知。これ絶対邪神関連でしょ?
私の問いに、シアちゃんはしばしキョトンとした後。
「あー、多分じゃよ?多分なのじゃがな?お主の根源にやつがれの一部を仕込んだ際に意図したことではないのじゃが、お主とやつがれの本体が一部同期しておると思うのじゃ。それによって本体の知覚範囲がお主を中心に共有された結果、なんかこう、色々見えるようになってるのだと思うのじゃ」
などという答えを返しやがりました。
つまりこれ、想定された仕様外の効果って事ですよね?
え?大丈夫なんです?私の身体、他にも色々変な仕様とかバグとか出てきたりしませんよね?
……まあいいです。今後何か変なことが有るたびに「これ仕様ですか?正常な挙動ですか?」ってクレーム入れてやれば済む話です。
納期も無くて修正しないと代金が払われないわけでもないんです。クレームつけられるぐらいなんてこともないですよね?
というわけで、今日は私達3人は休みだったはずなのにやってきました魔生対。
まあ、ザマさん的には私と理珠さん、ミラさんとエラさんの4人で1ユニット扱いとして考えてるっぽくて休みの日は大体一緒なんですよね。
というか、「この中の誰かが出撃したらどうせ他の3人も行くでしょ?じゃあ休みにする意味がないじゃない」とかなんとか。
……概ねその通りなのが困りますね。
「にゅるっと参上、やつがれなのじゃ」
そして、私達の影からぬっと姿を表すシアちゃん。
これ絶対、私の魔法真似て移動したでしょ。
「あら?今日は黒百合のお三方はおやすみだったのではなくて?」
待機室では、おそらく夜勤明けであろう初雪さんが優雅なティータイム(絶対甘い)と洒落込んでいました。
「あら?そちらのお子様はどなたでしょう?……目元はセヴンスさんそっくりですし、輪郭や顔全体の作りは水流崎さんそっくりですし……よもや隠し子であったりとか?」
……なるほど、私は理珠さんに似てると思って、理珠さんは私に似てると思ってたってことはシアちゃんの今のぼでーは私達二人に似てるってことなんですね?
って、性別とか年齢とか勘違いするにも高すぎるハードル超えましたよね今!?
「そうなのじゃ。シアな、ママとママのおしごとのばしょがみたかったのじゃ!」
ってシアちゃんこの野郎!ボケに乗ってしまうと会話が絶対めんどいことになるのでやめてほしいんですが……。
「ダウトー!いや、ダウトっていうか解釈違いです!おかしいです!理珠×7のカップリングで出来たお子様なら母親の呼び方は『母上』か『お母様』になるはずです!というか、セヴンスさんが水流崎のお家にお世話になってまだ半年も経過してないのに隠し子とか無いです!少なくとも4~5ヶ月ぐらい早いです!」
なるほど、今日は流星吸血鬼コンビだったんですか。
夜勤明けで疲れて寝ていたはずの身体をガバっと引き起こし、ちょっと気持ち悪いぐらいの早口でまくしたてる青杜さん。
というか、そもそも同性で子は出来ないとか、外見上10歳ぐらいなのとか他に突っ込み所盛りだくさんなのですがソコは触れないのですか?
というか理珠さん地味に、「優希さんとの子供……」とか言いながら顔赤くしないで下さい!
「あー、この子はシアちゃんって言って……。えーっと、あ、アレです。イツァナグイの上司です。外見はわざと誤解させて楽しむ為にやったいたずらだと思うのでスルーしてください」
とりあえず、無難な説明で切り抜けましょう。
というかここで時間を取ると本来の目的が果たせなくなりますし?
折角の休日なんで魔石関連のアレコレが終わったらソシャゲ周回とかやりたいんですよ!
……個人的に、周回用のクエストとシナリオ読むクエストは別れていたほうが楽だと思います。一緒にされると困るんですよ、一気にシナリオ読む羽目になるから!イベント開始初日に毎回そんな時間が有るわけじゃないんですよ!?
「ザマさーん、入りますねー?入りますよー?答えは聞いてない」
午前8時ちょっと前、ザマさんの出勤時刻的にはまだ少し早いですがザマさんの性格上仕事が残ってる時は残業より早出を選ぶのは知ってるので居る前提のムーヴで魔生対『部長』の執務室へと乱入します。
そう、部長なんですよ本当は。ザマさんは室長って呼ばせてますけど。
現在の魔生対の正式名称は「魔力災害および不明現象生物特設対策本部」なんですが、発足当初は今よりもう少し規模が小さかったので「魔力災害および不明現象生物特設対策室」だったようでして、その時の長の呼ばせ方を今でも使ってる感じなんですよね。
なんでって?そっちのほうがかっこいいから決まってるじゃないですか。
「はーい、おはようスネ希。休日にこんなとこ来てちゃだめじゃない。ちゃんと積んである漫画とか小説とかアニメとか映画とか消費していかないと駄目よ?あんた10年寝てた分必須科目が貯まってるんだから」
書類から顔を挙げずに雑な説教をかますザマさん。
ほほう、休日に職場に遊びに来た親友に言う一言目がそれですか……。すいません、ごもっともです。メッセージアプリで会話してると知らないミームが出てきて、出てくるたびに毎回ググるのでテンポ悪くてすいません……。
いやそうではなくですね。
「いやいやいやいや、ザマさん。ちょっと今日はゲストが居ましてですね?こう、お話する機会を設けたいなーと思いまして」
「ゲスト……?第四次ロボ対戦の敵勢力とかじゃなくて?」
と、初めて書類から顔を上げたザマさんの視線とシアちゃんの視線が交差しました。
「隠し子?」
何で皆その反応なんですか!年齢を考えてくださいよ年齢を!
ということで、シアちゃんの事とか純魔結晶と魔石の事とか、宇◯怪獣の事とか一通り説明したんですが……。
「えー?◯宙怪獣とか、永久機関とか、一国家の一部署が対処する問題じゃないでしょ。知ったところでどうしようもない話題を持ってこないでよ!」
まあ、そうなりますよね。
話の規模が大きすぎなんですよ。ほんと。
「で、とりあえず魔石と純魔結晶が本当に同一の物体なのか確認するために研究所へ入る許可が欲しくてですね?」
まあ、著しくマクロな話題は全部シアちゃんに丸投げしちゃってるので私達は私達で処理できる小さな所だけやっときましょう。
「頭が痛い話だけど、さしあたって魔生対所属扱いの研究所があるからそこの入館申請だしておくから。流石に研究所だし今日の今日で押しかけるわけにも行かないだろうし明日出向く予定でよろしく。シフトもそれ用に組み替えるから魔法少女としてのお仕事は明日はなしの方向性で。それで大丈夫?」
「おkです。さすがザマさん、仕事は出来る女」
「仕事「は」って何よ!もー、マジで頭痛いわー。次は魔物の残骸から可能な限り魔石を見つけて持って帰れって通達と、それを各国の機関に連絡でしょう?魔石のことなんにもわかってないってのにどうやって理由つけて連携取れってのよ無茶にもほどが有るでしょう!?非活性魔力論もまだ検証段階で広まってないって話だし、あーもー!」
頭を抱えてうめき出したザマさんに激励を送りつつ、その日はそのまま水流崎のお家へと帰宅しました。休日ですしね?
その後はほら、イチャイチャしつつパーティーゲームでシアちゃんをボッコボコにしたり、レースゲームでシアちゃんをボッコボコにしたり、対戦ゲームでシアちゃんをボッコボコにしたりしました。
いいストレス解消になりましたね!
なお、初めて触るゲームにそれはそれでとても楽しんでたシアちゃんでした。
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各話のコメントへの返信が次話をUPする日の午前中に帰ってこない場合
だいたい直前まで書いてるパターンなのでお察しください。
エイプリルフール回がどうにも出来が良くなかったので本編になりました。
ということで、隠し子疑惑と研究所へのアポ取り回です。あと初見のゲームで徹底的にボコられるシアちゃん。
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