第93話 邪神に丸投げしましょう。
「待って、一度冷静にならない?いくら何でも、そんな宇宙規模の貴重品が魔物を倒すだけでぽこじゃか手に入るとかいくら何でもおかしいって、ミラ思うのだけど」
はっ!
そうですね、何かのバグだかグリッチだかでレアアイテムが容易に入手できるとかゲーマーの血が騒いで無駄に興奮してしまいました。
「では、本当に魔石と純魔結晶が同一の物体なのか確認するために……。シアシャル・グラゼ。その、滅びた惑星から純魔結晶を入手する方法を開示していただけませんか?課程を知ることで魔物から入手できる理由と結びつく可能性もございますし」
あ、たしかにそうですね。正式な入手方法からバグの理由を推測なんてのは良く取られる手段ですし。
……あと、何気に理珠さんも私に対してシアシャル・グラゼがやった施術に怒ってるのか邪神呼び捨てです。声も心なしか冷たいですし、怖いですね?怖いんですよ、マジで。
「既滅惑星からの純魔結晶抽出手段か……。まあ、教えた所でお主らには使う機会も無いじゃろうし開示に問題はないのじゃ」
まあ、寿命はめっちゃ伸びましたが、というか伸びすぎて勘弁してほしい感じではあるのですが、私達が生きてる間にシアシャル・グラゼ達精神生命体が未接触な滅んだ惑星を発見する可能性とかほぼゼロですからね。そりゃ、教えた所で悪用するチャンスも訪れようがないってものです。
「まずな、こう、惑星から魔力を根こそぎ剥ぎ取ってじゃな?そこから、こう、ラフィーネン特殊結合状態の魔力だけを吸着する魔法を纏ってその中をこんな感じで回遊するのじゃ」
なんか、手付きが綿菓子作ってる動作そっくりで、座敷わらし的な外見も合わさって妙に微笑ましいです。
「で、ラフィーネン特殊結合の魔力だけを分離できたら残りの魔力は星へ返して、ラフィーネン特殊……もうめんどいから略称で良いな?ラフィーネン魔力の中心へ核となる魔法を放り込み、核に向かってラフィーネン魔力が収束していくのを数日かの?それぐらい待つのじゃ。そうすると、圧縮されたラフィーネン魔力が純魔結晶へと固定化されて取り出すことが出来るのじゃ」
なんか、貝に核をつっこんで真珠を作るみたいな製法ですね。
んー、というかそもそも。
「で、ラフィーネン特殊結合の魔力って何なんです?」
ここがわからないとなんにもわからないんですよねぇ。
「うむ、ラフィーネン特殊結合魔力というのは、通過する電波の周波数をランダムに変性する特殊な魔力で、活性と非活性の中間で転化が止まった魔力なのじゃ。非活性魔力が周囲に十分にある環境においてのみじゃが、それ自身が引き合い集まる性質を持ち、引き合っい集まったラフィーネン魔力は外部からの方向性が与えられない限り、一定量集まると自らの圧力で再拡散する性質を持った魔力なのじゃ!」
……ん?
結果的に電波妨害を生じさせる魔力で、ほっとくと集まって、外部から何もしなければ勝手に弾け飛ぶ魔力?
なんか、とても知ってる現象と似てませんか?
「つまり、魔物の電波妨害の事と、ゆらぎを放置すると魔力災害が起こる……という事ですよね?」
ですよね?魔物の魔力と、魔力災害の発生プロセスそのまんまですよね?
「え?いや、ちょっと待つのじゃ。そんな単純な比較が……。あれ?魔力完全非活性の文明惑星など既滅惑星の数万倍レアじゃし、やつがれ自身も初の高級ベッドじゃーって観測やらはイツァナグイに任せて寝ておったが……。え?ゆらぎとラフィーネン特殊結合の魔力が同質の物とするならば、ラフィーネン特殊結合魔力とは非活性魔力が大量転化する際の何らかの異常で発生するもの?ならば魔物は……もしや、受け取った思念を核として純魔結晶を生成することで根源核の代用としておるのじゃ!?」
なんかすごいわなわなしてますね。とりあえず、彼女の中で魔物から純魔結晶がドロップする理由の理屈付けが完了したみたいです。
んー、しかし、魔物がそこそこの割合で純魔結晶をドロップしているとして、純魔結晶って無から非活性魔力を無限に生産するわけですよね?
で、あちこちにある大量の純魔結晶から作られた非活性魔力が転化する際にゆらぎが発生して、魔物になって、純魔結晶を落として……。
「シアシャル・グラゼ、もしかして地球の今の状況って、魔力と魔物が無限湧き状態になってません?」
なってますよね?どう考えてもなってますよね?
「なって……おるのじゃ。活性魔力も非活性魔力も際限なく発生し続けておる上に、発生量も指数関数的に増大しておるはずなのじゃ。えええ?なんぞこれ、こんな状態知らぬのじゃ。どうやれば止まる?そもそも、魔物によっては純魔結晶が砂粒サイズだった場合もあるはずじゃし全部回収して
「いや、それもこれもなんだかんだ、シアちゃんがこの惑星にやってきたのが原因ですよね?」
「のじゃぁああああ!」
うん、やっぱ邪神ですよねこいつ。
「というかそもそも、星の魔力が際限なく増大していくとして、そのデメリットは何が有るんですか?」
重要なのはそこですよね?
「デメリットはー……おそらく特に無いのじゃ。強いて言うなら、魔法と魔物が双方徐々に強くなっていくぐらいかの。そうは言っても、人間の持てる魔力にも限界があるし、魔物は魔物でラフィーネン魔力の蓄積限界があるのじゃ。ほれ、ラフィーネン魔力が一定以上集まると弾けてしまうからの」
じゃあ、別にいいんじゃないですかね?
「ただ、その、宇宙にはな?星の魔力を喰いにやってくる壊龍と呼ばれる巨大な生物の群れがおってじゃな?一定以上の魔力を保有する星は例外なくそやつらが見つけて、襲いかかってくるのじゃ」
全然良くないじゃないですか!なんですかそれ!宇宙怪獣じゃないですか!?
バ◯ターマシン作らなきゃ……。
「シアシャル・グラゼ自身に原因がお有りになるのですから、当然その対策や予防手段は可能な限り探していただけるのですよね?まさか、2億年以上生きる精神生命体ともあろう方が
聞いたことのないレベルの冷えっ冷えの声を吐き出す理珠さん。
顔が良い分、無表情でキレてるとびっくりするほど怖いですね。
「う、うむ。流石にやつがれとしても純魔結晶取り放題の星が消え去るのは看過できぬし、なんとか対策をとってみるのじゃ……」
2億歳(でもロリ)の精神生命体がタジタジになるほどの威圧感。理珠さんパネェです。
とりあえず、そのへんの対策は私達ではどうしようもないのでシアシャル・グラゼに丸投げするとしましょうか。
純魔結晶はだいぶ価値が高そうですし、最悪お仲間を呼び集めてもらってでもなんとかしてもらいましょう。
……これで、シアシャル・グラゼと同じような考えなしが集まったらどうしましょうね?
まあ、それはそれとして、私個人としてもう一つ疑問があるんですよね。
「とりあえず、純魔結晶やら魔力増大やらの問題はシアシャル・グラゼに全部やらせるということで良いですね?……良いですよね?」
一瞬、でもめんどくさいなぁみたいな顔しやがりましたよこの邪神!
「では、ちょっと前から気になってた問題なんですが……。私の根源って中二病ですよね?救世主じゃないですよね?」
ミラさん相手には私の根源は救世主じゃーって言ってるぽいのホント意味分かんないんですよね。
「ああ、それは単純なのじゃ。やつがれ達
いや、そりゃ宇宙救っちゃいましたレベルの魔法が使えるなら救世主たりえるかもしれませんが、私はただの中二病ですよ?
そんな、「じゃ、世界救っちゃいますか!」みたいなのは妄想の中でしかできないに決まってるじゃないですか。
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やらかし邪神。
やっぱ全部お前が悪いんじゃないか回。
やっと説明回が終わったので次から色々トラブルが発生し始める感じのアレです。
が、しかし次回はエイプリルフール回の予定だったりします。
……ネタが思いつかなかったら普通に本編になるかもですが。
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