第92話 ばっかもーん!そいつが純魔結晶じゃぁ!

 「うむ、わかればよいのじゃ。ま、まあ、やつがれとしてもおぬしの性格はわかっておるのだし、止めるのであれば価値を説くより単刀直入に取引と条件を突きつけた方が良かったとか、見たことのない大きさの純魔結晶に驚いて思考が正常に働いていなかったとか、非が無いわけではないのじゃ。じゃからまあ、これで手打ちということにするのじゃ」

 よかったです。「純魔結晶を元に戻すためにとりあえず一度殺すのじゃ」とか言われたらどうしようかと思ってました。

 

 「まあ、おぬしの魔力に染まった純魔結晶が元に戻るまでか、ちくと長いが無限に近い寿命を持つやつがれならば待てぬこともないのじゃ」

 ん?ちょっと待って下さい。

 「えっと、シアちゃん?その結晶、私の寿命が尽きるときまで私の魔力に染まったままって言いましたけど、人間の寿命は長くて100年程度ですよ?そんなに長くは……」

 ……あ、目をそらされました。

 こいつ、何かしやがりましたね?

 「あー、えー、おぬしの根源に干渉するためにちょっとこう、何かの拍子にあっさり死なれても面白くないなと、魔力側の構造を弄ってあってな?ぶっちゃけ、魔力が尽きぬ限りおぬしは老いることも朽ちることも無くほぼ永久に生き続ける様になっておる。魔力構造体の強度から考えて5~6千年ぐらいは平気だと思うのじゃ。身体が生き返って正常化しても、その、魔力構造はやつがれが弄ったままでその、さらに現在は根源核を共有してる妹御の純魔結晶から魔力が常に補填されておるので……」

 

 「酷いことを……、しますね?」

 コイツやっぱり邪神かなんかなんじゃないですかね?

 だってつまり、私はこのままの姿で、老いていく理珠さんやミラさんを看取り、その後も一人で生きていけって事ですよね?

 正直、身体が若返ってることでザマさんの葬式は私が出すことになるんだろうなってちょっと考えては居たんですが、理珠さんやミラさんのも?いや、えー?本気で嫌ですよコレ……。私も殴り返しちゃって良い案件なんじゃないですか?

 

 「え?あー、そういう事か。や、すまぬのじゃ。おぬしの感情は今も根源を通して大体伝わってくるのじゃが、結論から先にいうと、ぬしら3人はおそらく死ぬ時は同時じゃぞ?」

 ……え?

 おそらく、私と同じ懸念を持って一人生き残るであろう私を悲しそうな目で見ていた理珠さんとミラさんの視線がシアシャル・グラゼに集中します。

 「まず藤花の。おぬしはイツァナグイが仕込んだ蘇生術式を一度施されておるな?あれはセヴンスの魔力構造体と肉体を正常なモデルとして、それと同じになるように再生する機構じゃからな?術式を施されたことで、おぬしの魔力構造体はセヴンスと同じ様に変質しておる。セヴンスの心臓がおぬしの胸にある限り、セヴンスの魔力によって魔力構造体が保持されていくはずなのじゃ」

 いや、そんな効果知りませんが?というか、これイツァナグイも実は知らないのでは?

 

 「で、次に傀儡の妹御なのじゃが、おぬしはおぬしで胸の純魔結晶から魔力が供給され続ける限り老いることも死ぬことも無い。当然じゃな。そもそも魔力保有者の体組織の劣化は魔力によって鈍化させることが出来るのじゃが、胸にを持ったおぬしはセヴンスが死んで、セヴンスの魔力によって維持されておる根源核が崩壊するまで死ぬことは無いのじゃ。……まあ、セヴンス含めて3人共精神は普通に死ぬのでそこだけ気をつければ大丈夫だと思うのじゃ。……うん、多分」

 ……あれ?いや、私が一人にならないで済むという事実は嬉しいのですが、これ地味に私がやったことで理珠さんとミラさんの人生めちゃくちゃにしてません?

 いや、違います、私のせいじゃないです。

 そもそも私の魔力構造体とやらを弄って改造したシアシャル・グラゼが全部悪いです。


 「良かった、優希さんをお一人で残す事は無いのですね」

 「ユーキを一人にするのって心配だからホッとしたけど、もしかしてミラの魔力で生きてるエラ姉さんも死ななくなったんじゃ?」

 ……あれ?存外二人共普通に受け入れてますね?

 というか、私が一人になることをめっちゃ心配されてた感じですか。

 ……うわ、なんかこう、照れると言うか恥ずかしくなると言うか、ありがとうございます。


 「で、というかそもそもですよ?純魔結晶って何なんですか?というか、何に使う物なんですか?なんか、惑星が滅んだ後にしか手に入らないとか物騒なこと言ってましたけど」

 滅んだ魔力保持者の怨念の結晶体とか言われたら流石に怖いですよ?

 「あー、いや。惑星がどうこうの話はアレじゃ。住人が存在している惑星を加工するなど流石に、流石に非道がすぎるじゃろうて……。いくらやつがれ達精神生命体ヴァタォーゴが炭素生命体や珪素生命体を下に見ておるといっても、存在を無視しておるわけではないのじゃぞ?」

 ああ、滅びた惑星に限定してるのは人道的配慮って奴でしたか。

 ということは、価値は高いけどそれほど切羽詰まって集めなくてはならない程の物では無いということですね?


 「で、純魔結晶が何なのか、なのじゃが。これは素の状態では物体であり、永久機関の材料となる物質なのじゃ。まあ一応、設備作成後のメンテナンスは必要じゃがな。やつがれ達が宇宙を彷徨っているのも、純魔結晶を集めて持ち帰るためなのじゃ。やつがれが生まれてから、おぬしらの尺度で……2億年程度か。精神生命体ヴァタォーゴの基準では幼児に毛が生えた程度の歳じゃが、これでもいくつかの純魔結晶を集めてきたのじゃぞ?」

 と、何かの魔法を使ったのか空中にうっすらと青く輝く小さな結晶の映像が投射されました。

 

 「あれ?この、青く光を放つ結晶が純魔結晶という物体なのですよね?魔石とは違うのですよね?」

 「あ、リズ姉様も思った?ミラの胸の結晶はセヴンスの魔力の黒い色だしサイズが違いすぎるし、別のものかな?って思ってたのだけど……。この映像のサイズの青い結晶ってやっぱり魔石みたいよね?」

 ませき?知らない子ですね?

 「ちくとまて、魔石とはなんじゃ?」

 あ、シアちゃんも知らない感じですね?

 

 「魔石は、えっと、魔物を倒した後の塵からたまに見つかる石……かな?ミラはそこまでしか知らないけど、リズ姉様は?」

 「わたくしも、世界各国で研究されていて未だに何なのか判明していないという事しか存じません。あ、加工しようと研磨をかけたり砕いたりしても欠片や粉塵が飛び散ることはなく、即座に再生するという話だけは聞いたことがございます」

 ほー、なんか不思議な石ですね。魔物の遺骸から見つかるとか、ミラさんの胸の純魔結晶も酸素の魔物の遺骸から掘り出しましたし、関係があるのでしょうか?

 理珠さん達の話に関心しながらシアシャル・グラゼに視線を戻すと……。


 ハニワが居ました。


 表情筋どうなってるんですそれ?顔面崩壊ってレベルじゃないんですが?

 「ば……」

 ば?

 「ばっかもーん!そいつが純魔結晶じゃぁぁあああ!!」

 どこぞのインターポールのとっつぁんみたいなセリフを叫びだすシアシャル・グラゼ。

 ……って、は?

 いやだって、各国に研究機関が作られる程度には産出される物なんですよね魔石って?それが、宇宙レベルで貴重な物体と同じものなんて事があります?

 ……ありえそうな気がしますね。ミラさんの胸の純魔結晶も魔物産なわけですし。


 「純魔結晶は位相が逆さになった別の宇宙にも同時に存在する性質上、全ての位相の純魔結晶を破壊しない限り修復される性質を持っておる。まさに、おぬしらの言った加工しようとしても再生するという奴じゃ。こんな性質を持つ物質はこの宇宙に純魔結晶以外には存在せぬのじゃ」

 つまり……。

 「そんな、宇宙規模のレアアイテムが、地球では魔物を倒すだけで結構な確率でドロップするフィーバー状態って事です?」

 

 え?なにそれ、こわっ!

 

 

☆★☆★☆★☆


セヴンスさん、地味に酷い改造をされていたという。

やっぱコイツ邪神なんじゃないですかね?

純魔結晶の作成方法と、魔物のレアドロップ枠に入ってる理由は次回ですかね。

説明回が長いとちょっと退屈かもしれませんが次で終わりだと思いますのでご容赦を。


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