第77話 混ぜればいいってもんじゃない!

 理珠さんのビ◯ランテもどきに対空火器が集中している隙に海側より接近していた戦闘機(多分F-15)から座席が射出されてパラシュートが開きました。

 あの、その位置だと海上へと着水する形になってしまうんですが大丈夫なんでしょうか?

 と、思っていたら射出された誰か、恐らくアメリカのエース級の人はパラシュートを切り離して海へとダイブしました。

 えーと、かなり低空からの脱出だったとはいえ海面まで数十メートルはあるんですが?

  

 「あら?心配そうな顔をなさっているということはご存知ありませんのね?あの方、世界でも有数の頭のおかしい根源をお持ちになってますの。飲み物を口に含んで観戦なさるとよろしくてよ?」

 ちょっとハラハラしてたのが伝わったのか、初雪さんが私を安心させるように声をかけてくれて、ついでに紅茶まで頂きました。ティーポットから。

 ……出番がまだだとは言え、この状況で優雅にお茶してる初雪さんも相当アレですよね。

 あ、流石にカップに注ぐ前から甘かったりはしないんですね。ごくごくですわ!


 と、リトルウィッチさんが着水する寸前、海中からサメが飛び出してきて落下する彼女を見事にキャッチしました。

 ほほう?海洋生物との意思疎通的な根源なんでしょうか?でも、この近海にあのサイズのホオジロザメって生息してます?

 ……いや待って?遠目なので視覚強化されている魔法少女の視力でも確証は得られませんでしたけど、あの人のレインコートにでっっかでかとアサイ衝角のロゴマークが貼ってありませんでした!?

 アサイ衝角、低予算系のサメ映画の配給会社で一部界隈でとても有名な竜巻シャークの配給元ですよ!他にも同系列の映画を多数扱っているZ級映画と呼ばれる種類の映画御用達の会社です。

 って事は、もしかして彼女の根源は……。

 何かを直感した私は大急ぎで口の中の紅茶を飲み下しました。


 『Heyマホウショウジョ達!さすがカイジュウ映画の本場、ホンモノってやつを見せてもらって大満足さ!ありがとう!だったら、次はこっちが魅せるターンだよなぁ!』

 ホオジロザメの背で仁王立ちしながらハイテンションで騒ぎ立てる金髪美人。

 英語だし、早口だし、距離もあるので断片的にしか聞き取れませんでしたが、カイジュウ、センキュー、マイターンぐらいはわかりました。

 ……なんとなくですが、すごく仲良くなれそうな予感がしてます、今。


 『crossoverd世界線混合!やべーやつらが弾けて混ざる、全部乗っけてパーティーだ!』

 リトルウィッチさんが右手を掲げて、高らかに指を鳴らしました。

 『9headed mechanical Megalodon! with Chimeratic mega octopus!』

 ……なんて?

 ないんへっどめかにかるめがろどん・うぃず・きめらてぃっくめがおくとぱす?

 私が頭上に疑問符を浮かべてる間に、は海を割って現れました。

 いや、完っ全に何のひねりもなく、頭が9つあるメカっぽいドでかいサメの下半身に、タコの触手がうにょうにょ生えてる謎生物が!

 

 まず、竜やヒドラみたいな首が長い感じの生物ならわかるんですが、サメが頭9個くっつけてる意味あります!?

 それに下半身のタコ!なんでタコなんですか!?上半身メカなのに下半身めっちゃナマモノで、造形的にもアホとバカを監禁して一週間アイディアを熟成させましたみたいなセンスで思わず吹き出しました。いや、混ぜればいいってもんじゃないでしょう!?

 危ない危ない、初雪さんに渡された紅茶を飲み込んでいなければ大惨事になるところでした。

 というか、明らかにコレを狙って紅茶を渡した初雪さん。キザというか、シン・中二病的な言動に惑わされがちですがこの方結構お茶目ですよね。


 「クイーンオブシャーク、アメリカ東海岸最強のリトルウィッチでサメ映画が魔力根源なのですって。なんでもありここに極まれり、なんて思いませんこと?」

 ああ、やっぱりサメ映画でしたか……。

 そりゃ、アサイ衝角だって喜んでスポンサーに付きますよ!

 ないすばでぃな金髪ビキニな戦闘法衣バトルドレスはアレですね、最初に食われる餌役的なやつですね!


 そんなこんなで、私が唖然としてる間に9頭メカサメトパスは後脚を構成しているイージス艦に攻撃を開始しました。

 下半身のタコの触手でするすると船底部分から空母との接続部分まで器用に登り、魔力で無理矢理接着されている艦尾に9つの頭を揃えて噛みつきを敢行しています。

 うーん、アホみたいなアホの外見なのに取る戦術が3人の脚部破壊担当の中で一番頭脳的なのがなんかこう、イラッと来ますね?しかも、対空火器による攻撃を食らわないようにしっかり考えて位置取りしてあるのが更にこう……ね?

 9頭のサメ達は歯がチェーンソーになっているらしく、甲高い擦過音を響かせながら船体を切断、咀嚼していきます。

 

 ……あの、本来チェーンソーって程よく柔らかいそこそこ繊維質なものを切断するための道具で、装甲であるとか、セラミックとか、かみとかを切断するのには向いていないはずなのですが?

 いや、わかりますよ?魔法はイメージが全てですから、マジカルチェーンソーは何でもぎゃいんぎゃいん言わせながら切断する最強の刃物だってのは。

 でも、流石に歯みたいな刃筋も立ってない適当な角度からぎゃりぎゃりと合金製の船底を噛み砕いていく様子はツッコミどころ満載です。

 せめて、刃がビームで出来てるとかやってくれないと納得しかねます。


 数分間そうやって接続部を削り、ついでとばかりに空母にも大穴を開け、構造的に魔力での接続維持が不可能になったのかイージス艦はそのまま海へと倒れ込んでいきました。

 『コレで終わっちゃもったいないからな!ついでに船内もめちゃくちゃにしといてやるさ!』

 サメトパスの方はちゃっかりと自分が削り開けた穴にタコ部分を潜り込ませ、空母の船底に張り付いています。

 ……タコ部分が完全に隠れて、メカ9頭サメだけ見えてるのなんかこう、シュールですね?いえ、違いますね。登場から今まで、徹頭徹尾シュールでしたね……。


 で、えーと、あのトンチキ生物は何をやりに空母に入り込んだのでしょうか?

 「ついでだからと船体内部も破壊しておいてくださるそうでしてよ。火器管制に必要なシステムでも破壊して頂けるなら随分楽になると思いませんこと?」

 ほー、たしかにそこまでやってくれるならこの後の私達による攻撃兵器、対空火器の破壊が楽になりますね。ありがたいことですn……。

 DOGASSSHAAAAAARK!

 なんて、私が感謝の気持ちを抱こうかなと思った辺りで突然爆発音が響き渡り、穴から爆炎と残骸になってこんがりと焼けたタコ足がすっ飛んでいきました。

 

 『HAHAHA、どうやら初手で艦載機用の弾薬庫にぶち当たったみたいだ。今日はこうなる運命だったのさ、神様の思し召しってやつだな!』

 吹き出す爆炎を眺めながら腕を組んでうんうんとしたりげに頷くクイーンオブシャーク女史。

 ……あのこれ、原子炉にダメージとか入ってないですよね?


 『とりあえず、魔力も減ってきた事だし、これからはお前たちの直掩に回るぜ!よろしくな、マホウショウジョ諸君!』

 なんか今度は手を振りながら偶に飛んでくる対空火器をサメに乗りながら華麗に避けて接近してくるんですが、えーと?

 「Queen of Sharkサン、は、私の護衛ヲしてクれるそうデす。彼女、色々な魔法ツかえマスかラ頼リになりまス。ありがたいデス!」

 そう言って喜んでいるのは30リットル以上あるであろうドでかい瓶に開戦から今までずっと魔力を貯めているパトリシアさん。

 ふむ、雛わんことサメさんでこちらの護りは大丈夫そうですね。

 

 では、そろそろ私達もお仕事しましょうか。

 まずは上陸して接近してきたふるいに落とされなかったそこそこ強い系魔物の対処からですね!

 ちなみに巨大いどまじんは9頭サメトパスのマネをして、まだ無事な脚部の船底に張り付いて暴れています。

 ……なんだかキングコ◯グみたいですね?

 


☆★☆★☆★☆

プロットだと、6ヘッドメガロドンオクトパスって書いてあったんですけど

気がついたらもっと盛られてました。

やりたい放題やって爆散して消えていきましたが。


大規模破壊シリーズは今回で一旦終わりなので、次から風雲魔物空母城の攻略戦になります。

初戦は再生怪人からですかねぇ?



 

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