第75話 再臨、満を持して……!

 二人で背中を合わせて天に手をかざし、そう唱えます。

 同時に、黒い雷と藤の花びらの乱舞する球体が私達を包み……。

 「「心聖アニムス・キャロルム完全同調チューニング・ペルフェクゥム」」

 魔力の融合に合わせて、新たな戦闘法衣バトルドレスを紡ぎあげます。

 

 融合した魔力から藤花と静謐の魔力が私の中で顕在化し、中二病の根源のみで作られていた衣装を新たに彩ります。

 とは言っても、私自身がそこまで理珠さんの根源に引っ張られて居ないので変化はそう大きくありません。

 降り注ぐ花びらがドレスに溶け込むたび、純白のレースが藤色に染まり……。

 眼帯を飾っていたいくつものチェーンが藤の花をモチーフにした飾りに変化し……。

 最後に、髪が結い上げられてでっかい藤の花のかんざしが2本刺さるだけで……あれ?3本になってますね?もしかして、私が理珠さんに染まりました的な要素が増えるたびに藤の装飾が増えていくんですかこれ!?

 って、よく見たらオーバーニーソックスも藤の花デザインモチーフなものに変化してますし、前に変身したときよりだいぶ理珠さん要素増えてますよね!?


 まあでも、私の変化はこういう、小物とかレースとかがちょっと変化するだけなので気分転換的なもので済むんですが、理珠さんがですね……。


 魔法少女ウィステリア・ヴェールの白い振り袖が黒い雷に灼かれる様に全て黒く染まります。

 同時に振り袖の上からレースのショールを纏い、理珠さん自身も黒いヴェールを被り、耳には鎌を持った少女どうみてもわたしをディフォルメした意匠のピアスが……。

 足袋と下駄はニーソとピンヒールに、髪をツインテールに結い上げていた鈴の髪飾りが長い長い赤と黒のリボンに、弓懸だった手袋は黒いレースの手袋へと形を変えます。

 後は各所に細かく黒いフリルが増えてまして、いわゆるゴス着物ってヤツに変化しました。


 ……あの、相手から染められた程変化する部分が増えるって私さっき推論展開しましたけど、それが正しいなら理珠さんどれだけ、その、私に、あ゛ー!

 うわー、気が付かなきゃ良かった、めっちゃ恥ずかしくなってきました!

 って、これも前は無かったんですけど理珠さんの左手薬指になんか指輪生まれてませんか!?

 婚約指輪だったりしますコレ!?何勝手にそんなの生やしてるんですか!!!

 って、あー!私の指にも生えてる!ちょっと!?どの根源がコレやらかしたんですか!?というか、中二病わたしのとこの根源以外こんな勝手やりませんよね!?

 くっそぅ、勝手にやったくせにデザインは私の好みど真ん中なシンプルでシャープな感じのやつですし、そんな所でいい仕事してるんじゃないですよ!


 ……ちょ、ちょーっと精神的に疲労しましたが、後は二人で背中合わせにポーズをビシっと決めて再臨完了です。


 「魔女、ウィステリア・ヴェール・ザ・ジョーカー!」

 「魔法少女、セヴンスジョーカー・イン・サイレンス!」

 「「完全解放リベラティオ・ペルフェクトゥム!」」


 《私は問題なしです。理珠さんの方は大丈夫ですか?》

 《はい、こちらも一切問題ございません。いけます!》

 はい、このイツァナグイ命名の同調再臨、なんとあらゆるものが私と理珠さんの間で共有されているのです。

 《では、作戦通り私はあの空母ロボから魔力を奪ってくるので理珠さんは脚への攻撃をお願いします》

 まずこの、精神同調によるテレパシー的な会話。

 これがまた便利なんですよ。距離関係なし、どんなに雑音だって聞き逃すことがなく、メインは思考と精神の同調によるメッセージなので意図を取り違えることだってありません。

 ちょっと強く願えば、相手の表層心理ぐらいまでは伝えてもらえます。 


 そして、魔力の共有。

 私の魔力と理珠さんの魔力が完全に混ざり合って、根源が共有されて増加した影響なのか一度に使える出力もほぼ倍に増えます。

 まあ、他の人ならそんなに大した利点でも無いんですが、私との共有となれば大きなメリットが生まれます。

 無限の縛糸グレイプニールを長く長く伸ばし、空母ロボの船体に絡みつかせます。

 普通なら、出力が倍になっても魔力総量が増えなければすぐに使い果たして終わりですが。

 「静謐セレニタス多重付与エンチャンターレ!」

 私の魔法を、理珠さんの静謐の根源から溢れ魔力で出力します。

 「神威変性ディヴィニタス・ディジェネラートゥム絶視無影ぜっしむえい黒雷鎚くろみかづち!」

 黒い稲妻が一瞬だけ私を中心に広がり、かき消えました。

 一切、何も変化は有りませんが、大丈夫です。効果はしっかりと発揮されています。


 どうやら、私は理珠さんの2つの根源のうち静謐さんと相性が良いみたいで、藤の花要素はあんまり出てこないんですよね。

 いや、魔法少女名からしてサイレンスなんてついてますし、当然といえば当然なんですが。

 で、先程の絶視無影ぜっしむえい黒雷鎚くろみかづち。これ、普段使ってる吸魂の雷刃ストームブリンガーに静謐の魔力を付与していじくった結果でして。


 《魔力残量の増加を確認いたしました。作戦通りこれで大出力の魔法でも使いたい放題となりましたね、さすが優希さんです。正攻法以外の手段を考えさせたら右に出るものは居ないのではないでしょうか?》

 はい、出来たのは、使った本人以外には一切の感知を許さない隠密魔力ドレイン雷撃なんて効果絶大見た目超地味なモノになっております。はい。

 あと理珠さん、それ実質卑怯者って言ってるようなものなんですけど、本当に褒めてます?

 あ、今私と理珠さんは魔力的に同一人物扱いなので理珠さんからは黒雷が見えるはずですね。


 と言うことで、敵ボスから魔力を奪って魔法使い放題作戦開始です。

 そもそもですよ?この魔力もほとんど生贄ジェールトヴァで囚えてる魔力保有者から奪った魔力でしょう?なら、魔物を倒すために使わなくちゃダメですよね?

 《では、わたくしも試運転を兼ねて露払いに協力いたします。見ていてくださいましね?》

 どうやら、理珠さんも新魔法の試し打ちがしたいみたいですね。伝わってくる表層心理からわくわくというか、うきうきというか、そんな感情が伝わってきました。


 「編み込み紡げ、重なり織れよ。万象を侵し、滅びまとい羽撃はばたけ!樹翼魔爪じゅよくまそうの群れ鴉!」

 詠唱とともに矢継ぎ早に放たれた矢が空中で蔦を生やし、羽を造り、無数の鴉となってえっちらおっちらこちらへと泳ぐ魔物の群れに襲いかかります。

 ぱっと見、蔦で造形された鴉が群がってるだけで火力低めに見えるんですが……。

 はい、幾度もひっかかれたクラゲの魔物が爆散しました。

 あの鴉の爪、私の万象の毒牙フルンティングと似たような毒がながれてるんですよねぇ。

 

 なんか、中二病ってやっぱり何処に惹かれるかで個人差があって、どうやら理珠さんは生物っぽい何かに造形して自律行動させる的なモノが感性にヒットしていたみたいです。

 「ねえセヴンス、それ、何?なんでさっき2人でキスしたの?というかその姿何なの?そういうのは事前に作戦会議の時とかに報告しておくべきなんじゃない!?」

 「すごい!すごい!魔力波形が全く一緒。根源ごとに違うはずなのに、どうやって?魔法も変質してる?じゃあ、魔力量自体の共有もありえる?どうなって……」

 「すごいすごい!ばっちり撮影されてる今日の戦闘であんなキスをするなんて!前回私は見逃しちゃいましたからね、眼福でした!ありがとうございます!しかもお互い同じテーマのコーディネートで実質ペアルック!名乗りだってお互いの立場を交換してたしこれは実質指輪の交換なのでは!?と、尊いっ……!」

 「ふむ、なるほど?光と闇が合わさり最強に見える」 


 ……しまった、失敗しました。

 お披露目はばーんと派手にやりたかったので作戦会議のときもぼかして説明してたんですが、色々衝撃的だったのか戦闘中なのにめっちゃ質問が飛んできます。

 というか、青杜さん鼻血出てますけど大丈夫ですか?

 「終わったら全部説明しますから!と、とりあえず魔物空母アレを片付けてからにしましょう?ね?」

 キニナル。という視線が痛いぐらい刺さってますが、ほんとに後で説明するので今は戦闘に集中しましょう?

 これで私達に気を取られてて魔物に不意を疲れてお持ち帰りされるとか洒落になりませんからね?


 「ルーチェ☆メテオリーテさん、作戦通り右前脚部のイージス艦の破壊をお願い致します。わたくしは左中脚部を今から破壊にかかります。ご準備はよろしいですか?」

 おっと、どうやら脚の破壊を開始するようです。

 あれ?アメリカのエース級さんがまだ到着してませんが良いんですかね?

 あ、いや、あの遠くから突っ込んでくる戦闘機、あれがそうですか。


 そういえば、アメリカのエース級さん、どんな魔法を使うか聞いてなかった気がしますね?



☆★☆★☆★☆


スカートじゃないゴス着物、良いですよね?

ということで、理珠さんの中二病方向は式神的な?

生物使役型の魔法をかっこいいと思う感性だったようです。

となれば、巨大構造物を破壊するのに何を呼び出すんでしょうね?

植物由来で、巨大で……。


あとなにげに、魔物の魔力の干渉下で遠距離でも意思疎通が出来る手段は便利ですね。




 


  

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