第61話 ててててん、まりょくかしかそうちー

 謎の魔物熊は結局、どれだけ調べても何の痕跡も出てこなくて調査を断念したみたいです。

 まあ、結局は多少リミッターが外れてる感はありますが、やってくる事は普通の熊の範囲からそれほど逸脱してないので脅威にはならないだろうという判断が下されました。

 実際、地方所属の魔法少女で処理できるぐらいのぷち強い野生動物でしかありませんし。

 流石に、ヒグマ複数匹があんな感じになってたら初動対策課にお呼びがかかるかも知れませんが……。

 念のためミラさんの昨晩の様子をザマさんに確認したのですが、隠しカメラでの映像にはベッドで気持ちよさそうに眠る様子しか映っていませんでした。

 なお、ミラさんの睡眠時の服装は……全裸でした。


 ちなみに、雛わんこはあの翌日から自衛隊施設内に設けられている魔生対の研究室から出てきてないそうです。

 まあ、予想はしてたので片手で食べられる系かつ、冷めても美味しい系食料を沢山買い込んで差し入れに持っていったらとても喜んでました。

 何かの理論が完成した所だったのか、両手でイツァナグイを空に掲げながらぐるぐる回ってる雛わんことそれを崇める技術者の皆さんに、珍しく理珠さんが吹き出していました。

 ちなみに、流石に研究施設は国外勢立ち入り禁止でしたね。

 ……あれ?私も失踪から7年経過で戸籍が鬼籍入りしてると思うんですけど大丈夫なんですか?ザマさんがOKだしてるから良い?セキュリティ大丈夫ですか?


 そうそう、ザマさんともあの熊の件を話したんですが、なにかの実験だったのではないかという話になりました。

 実験と言われてみれば、結局何の被害も出さずに調査の手が及ぶ前に消えてしまったのも納得です。

 が、それは同時に再び知性を持つ魔物が現れたと言うことも意味するんですよねぇ……。

 前回は最初の魔法少女を喰った結果の知性化だったみたいですが、今回は何が原因なんでしょうね?

 

 しかし、戦略上受け身になっていては不利になるばかりとわかってはいるものの相手の目的が読めないと先手もなにもあったもんじゃないんですよね。

 色々仮定して話し合っては居るんですが、どうにも不毛感が拭えないみたいです。

 最悪の場合人間が操作されて襲ってくるケースも有り得るという話ですが、多分ですけど、私の吸魂の雷刃ストームブリンガーで魔物の魔力ごと吸い取っちゃえば、あの傷口から魔力の抜けた熊みたいに元に戻るっぽいんで大丈夫なんじゃないですかね?

 あ、魔法少女は多分魔力量的に自分から操られることを望まない限り操られることはなさそうだという結論になっています。


 で、私が今何をしているかと言うと……。

 「これでチェックメイトでしてよ」

 夜勤明けのシュネーヴァンピーアさんとチェスをやっていました。

 チェスって指すなんですかね、打つなんですかね?

 まあ、学生時代に強いとかっこいいだろうなってかじった程度の私では歯が立たないということがわかったので多分今後やることはないです。あっという間の三連敗でした。


 あ、シュネーさんは変身解除してるのでシュネーさんじゃないですね。

 初雪ベルティアリスさんと言うそうです。

 両親ともに日本に帰化したドイツ人で、初雪さん自体は日本生まれの日本育ちらしいです。外見が完全に外国人なのでめちゃめちゃネイティブな日本語が飛び出してくるとちょっとびっくりするんですよね。

 名字はお父様が日本人の家庭の養子になった家の姓だとか。なんかもう国籍とかよくわかんなくなってきますね。

 というかですね、この子変身解除しても変身後と今とで姿が全く同じなんですが!?

 顔も、化粧も、キレイな銀色のショートボブはそのままですし、服装もいかにもな、シンプルながらも銀糸の刺繍がキレイな黒いワンピースが変身後のドレスを彷彿とさせますし……。

 違うのは瞳が黄金と真紅の虹彩異色症ヘテロクロミアではなく青みがかった銀の瞳になってるって事ぐらいでしょうか。

 くっそぅ、中二病の根源持ちよりナチュラルに中二病属性な容姿とかずるすぎませんか!?


 失礼、取り乱しました。

 まあ、片手であしらわれて無様を晒した私はどうでもいいとして……。

 他の魔法少女の皆さんは如月さんの怪談語りに付き合わされています。

 私?私はネタを知ってたので巻き込まれずに済みました。

 2chの洒落怖スレに入り浸っていたのは伊達じゃないです。

 今日は……自己責任というタイトルで有名な話ですね。

 ……その話を聞いた人間に呪いが感染するというお題目のネタを選ぶとか趣味がとても良いです。


 実はアレで怖いもの知らずな理珠さんは面白い話だと感心したように頷いていますが、逆に日本の怪談に詳しくないミラさんが真っ青な顔で理珠さんの腕に抱きついているのがかなり可愛いです。

 というか、ほとんどみんなちゃんと怖がってますね。

 そっか、よほど好きじゃないと自分から怖い話とか探しに行きませんよね。

 昔は結構流行ったんですけどねぇ。今はスレッドや板どころか2chという名前も変わってしまっているみたいですし、時の流れは怖いですね。

 

 と、そんな休日のまったりとした?空気は扉をふっ飛ばしそうな勢いで開いて飛び込んできたわんこにぶっ壊されました。

 いや、まずなんで変身してるんです?

 「出来た!すごいの!見て!」

 うわー、テンション高いですねー。

 手に持っているのは……えーと、カメラ?とARグラス?でしょうか?

 「まだ私達しか使えないけど、可視化装置!」

 可視化?何を……って、そりゃ魔力ですよね!?

 「魔力可視化装置!?」

 私の叫びで自体を把握したのか、全員の視線が雛わんこの持っている装置へ集中します。

 ってか、なんでザマさんとこじゃなくてこっちに持ってきたんですか!?


 「セヴンスさん見て、2種類作った!グラス型は私達専用だけど、こっちのカメラは魔力を通して撮ればみんな見える!」

 待って?雛わんこ、イツァナグイと組んでまだ数日ですよ?

 たかだか数日で恐ろしい勢いの技術革新起こってません?

 「ちょっとゴーグルの方貸して?試して良いんでしょう?」

 「あら、私も試させていただいてよろしいかしら」

 と、最初に手を伸ばしたのは白さんと初雪さんでした。

 「ちなみに、どういう仕組で見えるようになってやがるんです?」

 真割さんはそんな質問をしてますが、多分アレ科学と魔法の融合的な最新技術で出来てると思われるので説明しても理解できないと思いますよ?

 あと、ミラさんがまだちょっと青い顔してるんですが怪談、そんなに怖かったんです?


 「普通の生物が青、魔物が赤で見えるようになってる。直接見ないと見えない」

 えっと、カメラ越しとかじゃダメって事です?

 あ、手持ちサイズに小型化されてると思ったらそれなりにでかい本体を雛ちゃんが背負ってました。なるほど、だから変身して身体強化してる必要があったんですね。

 「電力の消費が激しくてグラス型は10分と少ししか保たないから気をつけて」

 「なるほど、すごいのねコレ。雛とかセヴンスとか真っ青な炎みたい。変身してない魔法少女も身体から青い蒸気が立ち上ってる様に見えるのね」

 ひと通り見た白さんは見たがってる他の人に魔力可視化グラスを手渡しています。

 私もみたいですが、まあ後で良いでしょう。我慢します。大人ですからね。


 「カメラの方はどうやって使うのかしら?この飛び出ている部分に魔力を流しながら撮影するのはわかるのだけど、データ上は普通の写真と変わらなく見えましてよ?」

 魔法少女達と周囲の写真をぱしゃぱしゃと撮影していた初雪さんが首を傾げました。

 「カメラは特殊なインクで印刷すると魔力が印刷される仕組み、少し不便。でも、普通の人も見られる」

 なるほどですねー。普通の人にも魔力の様子が見られるようになればいろんな研究が出来ますからね。

 「これで、前みたいな熊が出た時に魔力の動きが全部わかる!」

 ああ、用途としてはそういう意図でしたか。

 研究が楽しくて研究室に籠もりっきりってわけじゃなかったんですね。

 とりあえず、尻尾ブンブン振って褒めてほしそうにしていた雛わんこをこれでもかと撫で回してやります。


 これで妙な魔物が出ても色んな分析が出来るようになりましたね。

 何よりも、魔力を活用出来る科学的な発明というのは大きな一歩だと思います。

 そのうち、普通の人も魔力を内蔵した武器とか使えるようになるのでしょうか?

 そうなれば魔法少女だけが戦う必要はないですし、技術者さん達には頑張って欲しいですね。




☆★☆★☆★☆


祝、☆1k個達成。

いつも応援ありがとうございます。

お陰でなんか魔法少女タグで星の数だけなら上から8番目とかいう位置まで来てしまいました。(なお、上はすごい人しか居ないです)

今後も書き続けて行きますのでよろしくお願いします。


あ、他の方の作品でも気に入ったらぜひ☆を付けてあげてくださいね。

これ本当に嬉しいので、その作品の作者さんのためにも是非。


で、魔力が見える装置が開発された話。

雛わんこ有能。

これで熊の魔物みたいな変なやつの正体が分析しやすくなりました。

所で、約一名なんで青い顔してたんですかね?



 

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