第42話 生死に関わる、おはようとおやすみのキス
アレから数日、魔物の襲撃もまあ、普段通りの散発的なものに戻りなんだかんだ平和な日常が……いや、魔力吸収のためにほぼ毎日魔物と戦闘してる日常って平和なんですかね?
まあ、普段の日常が戻ってきました。
世間的には、「魔法少女の天敵」と呼ぶ他無い、特定の集団に対して致命傷と成り得る魔物が発生したことに対して様々な対策が議論される事になりました。
人種の入り乱れから魔力保有者の呼称が安定しないアメリカさんはともかく、自国のそれらを統一した名称で呼んでいた地域では人員を派遣し合うことでなんとかしようという風潮が高まっているようです。
まあ、魔力保有者を怪物扱いして酷い環境に置いていた国は相互派遣を受けてもらえなくて別の手段を模索してる的な話がネット上で囁かれてますが。
あ、ネットといえば……。
その、なんと言えば良いんでしょうか。
私達の
私と理珠さんは完全に百合ップル扱いで、掛け算の順番に対する議論が白熱しています。
いや、私と理珠さんだけなら良かったんですけど、魔生対所属の魔法少女のカップリング論争が加熱して他の皆さんにもちょっとご迷惑をかけちゃってるのが……。
というか、白さんが「セヴンスは別にウィステリアだけのものじゃないからね?」とかペケッターで呟いたもんだからお祭りですよお祭り。
冬のオタクの運動会では魔法少女本が一大勢力になる見込みだそうです。
一応ナマモノなんだからR18系の本は程々にするんですよ?
そう、肝心の理珠さんなんですが……。
「あ、セヴンス様起きていらっしゃったのですね?本日の魔力供給、お願いできますでしょうか?」
えー、部屋に敷かれる布団が1枚になりました。
ナンデ?
いや、まあ、ちょっと、ちょーっっと誤算がありまして、「後遺症もなく」と指定したはずなんですが、治療した瞬間から何の問題も無くという状況ではなく、最終的に後遺症が出ない的な?そういう
はにかみながらも嬉しそうに微笑む理珠さんと唇を重ねて、私の魔力を流し込みます。
そう、困ったことに理珠さんの心臓、これ私の心臓なんですよ。
いや、これだけじゃ意味不明ですね。
えっと、イツァナグイが仕込んだ私の蘇生機構をイカサマして理珠さんを治療したわけじゃないですか。
で、蘇生の順番的には身体の状態チェック、損傷があったら修復、蘇生魔法発動の順番でしたよね?
ここにちょっと誤算がありまして、蘇生魔法発動前に修復された心臓って、現状の私の心臓、つまりゾンビの心臓だったんですよ。
このゾンビ心臓は普通の心臓と違って魔力で動いてるわけなんですが、私を修復する機構で修復されたので、私の心臓が理珠さんの心臓の位置で鼓動を刻んでいるとかいうおかしな状態になってしまったわけです。
いや、身体構造チェックからのその構造に合わせた修復とかは理珠さんの身体で行われたので、理珠さんの細胞で作られた私の心臓とかいう細かく分析すると何がなんだかよくわからないアレなんですが。
で、何が問題かと言うと……。
「んぁ……っ……」
密着した唇と舌の粘膜を通った魔力が理珠さんの心臓を満たします。
いや、私の心臓なんで私の魔力じゃないと動かないんですよ……。
しかも、他人の魔力って取り込んでから大体一日弱ぐらいで自分の魔力として同化されちゃうんですね?
つまり、「生死に関わるおはようとおやすみのキス」なんて倒錯的な日課が必要になってしまって……。
うん、傍から見たらそういうアレなので布団も一つにされちゃいますよね。
……いや待って?そもそも私自分の部屋あるのに前からこの部屋で寝てた事自体おかしくないです?
というか、水流崎家はそれでいいんですか!?
「んっ、ごちそうさまでございました。わたくしの命を繋ぐためとは言え、毎日ありがとうございます」
しかも、毎日このめちゃめちゃ嬉しそうな理珠さんの顔面をゼロ距離で浴びるんですよ!?なにこの美少女、顔が、顔が良い!そんなに私に道を踏み外させたいんですか!?
冷静、冷静になりましょう私。理珠さんお金持ち性格超良し顔超良し、食べ物の好みも合いますし、理珠さん自体も最近小説とか漫画とか面白いのを与えたら楽しんで読んでいるみたいですし趣味も合うんじゃないでしょうか?
んー、理珠さんとならそういう関係になっても、もう良い気が……はっ!?
「あの、セヴンス様。少し真剣なお話があるのですが聞いて頂けますか?」
え!?何!?告白とかです!?
思わずトンチキな方向に身構える私に投げかけられたのは、思いもよらない質問でした。
「わたくし、今セヴンス様に生かされている状態でございましょう?つまり、セヴンス様が死ねばわたくしも死んでしまうのです。セヴンス様、貴方は後どれぐらい生きていられるのですか?」
ん?質問の意図が掴めません。
いや、普通は寿命が来るまでは生きてるんじゃないでしょうか?
というか、現状は死んでるんでいつまで生きていられるかとか言われてもその……。
「もしかして、ご自身ではご存知ないのですか?」
「えっと、すみません何の事やらなんですが……」
え?なんで理珠さん悲しそうな顔してるんです?私なにかやらかしました?
「モルモットを使った回復魔法の実験で、機能を停止した臓器を魔法で動かしても一週間程度で死んでしまうと、そういう結果がでております。
セヴンス様、貴方の臓器は正しく動いておられるのでしょうか?脈拍、体温どちらも正常ではございませんよね?」
あー、なるほど?
どこかで……、あ、懇親会の時の札月さんでしょうか、思い起こせば触診っぽい手付きでしたもんね。
はー、私が頑なに医者にかからないからってそういう手で診断してきましたか、やりおるな魔生対。
んで、この脈拍数と体温を知った上で色々推測したら「死にかけの身体を魔力で動かしている」と誤解したわけですね?
確かに「死体を上位存在が作り直した神造ゾンビ」なんて結論には普通行きませんからね。
これは流石に、きちんと説明して不安を取り除いてあげないと可愛そうですね。
自分の死期が関わっちゃってる問題になってしまってますからね。
「えーっと、どこから説明しましょうか……。まず、身体の状態に対する誤解があるみたいなのでそこからですね」
んー、イツァナグイ関連とか実験施設関連とか何処まで話すべきか。
理珠さんが泣きそうな顔をしているのがちょっと耐えられそうにないので、もう全部話しちゃいましょうか……。
「実は私もう死んでて、今、
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