第36話 届いた叫び
刃翼に無理矢理魔力をぶち込んで、ごく短時間ですが空を飛びました。
まあ、飛んだというかブースターで上昇した後落下するだけなんですが。
私が急に飛ぶとは思っていなかったのか、もしくは将軍の魔物が動揺で指揮が滞っていたのか、何の妨害も無く人面ムカデの前まで到着することが出来ました。
しかしまあ、見れば見るほど特徴的な髪型で将軍様と表現する以外無い顔ですね……。この顔の人間が就いている立場を考えれば魔物を指揮する能力があるのも納得せざるを得ないというものです。
何はともあれ、こいつを倒さないことには楽にならないので気合を入れて大鎌を振り抜きます。
ですが、振り抜いた鎌に手応えはなく、私の一撃をムカデの身体で地面に伏せて躱した、粘着質な笑みを浮かべる人の顔が視界の端に見えました。
同時に、私を囲むように周囲の砂が起き上がり……。
いや、これ何かの口じゃないんですかね?
なるほど?自分が直接襲われた時用の罠も設置していたと言う感じですか。
ぱくっと、大きな口の中に閉じ込められてしまいました。
しかしながら、当然閉じ込められたということは真っ暗なわけで……。
「私を暗い場所に閉じ込めるのは意味がないんですよねぇ……。
なんか、閉じられた口の奥の方から響いてくるじゅるじゅるした音に嫌な気分になりつつも影に潜ってサクッと脱出します。
出現先の影は近くに居たやや大型なネズミの魔物の影にしましょう。ちなみに大型とはネズミ基準で大型ではなく魔物基準の大型なので5メートル近いサイズです。このサイズだと全く可愛くないですね?
影から抜け出すと同時に当然ネズミの腹部もざっくりと切れ目を入れておきます。
結構深めに入ったのでこいつも数分すれば爆発するでしょう。
さて、私を食べようとした悪い子はどんなヤツだったのでしょうか?
うーん、蛇、蛇ですかぁ……。
頭だけやたらと巨大化してますが、多分原型はジムグリさんですね。本来は眼がクリっとしてて結構かわいい蛇なんですが、閉じた口の隙間から触手がうじゅうじゅしてて無理です。これは可愛くないです。
口に入れたはずの獲物の感覚が無くて困惑してる隙に蛇の首をざっくり行きました。
で、罠にはめてくれた将軍様はどこでしょうか?
と、探すまでもなく倒れてきた蛇の頭にムカデボディが挟まって動けなくなってますね。人間の顔が何やら叫んでますが、言語っぽくは無いのでこいつが知性を持った魔物とかいう可能性は多分無いでしょう。
ムカデの身体の方は生命力が高そうなので下手に再生とかされても嫌ですし、人間の顔の方を十字に刻んでおきましょう。
流石に、脳に当たる器官が無ければ流石に指揮は出来ないはずです。最悪、再生しても切断面付近の魔力は全部
──ふぁみふぁみふぁみーま ふぁみまみまー 保有魔力が規定値に達したぞえ。安全な所で横になって身体正常化魔法を行使するとよいぞ!──
と、こいつらの魔力で復活に必要は魔力が溜まったようで脳内にアナウンスが流れました。
しかし、イツァナグイさん、なぜアラームがファミマの入店音なんです?戦闘中に鳴るであろうアラームにネタを仕込むのやめて頂けませんか?
というか、それ以前になんで蛇のくせにこの音知ってるんでしょう?
とりあえず、この怪獣決戦with有象無象が終わればゾンビ卒業が確定しました。
後はミスって魔物に拐われたり死んだりしないように気をつけるだけです。
ここまで頑張って、最終的に拐われて絞り殺されましたとか冗談じゃないですからね。
そういえば、怪獣決戦の方はどうなりましたかね?
ずっと地響きが鳴り止まないので月ヶ瀬さんが負けてしまってるってことは無いと思いますが。
指揮者を失って連携の取れなくなった魔物の攻撃を捌きつつ、地響きの方に視線を移すと、まあ結構な勢いでぼろぼろになったモンゴリアン触手ワームさんが目に入りました。
身体を覆っていた触手は3~4割ぐらいがちぎれた毛糸の様にぼろぼろになり、巨体故にまだ平気で動き回ってはいますが、その身体には無数の裂傷が見られます。
対する月ヶ瀬さんは……。
まあ、大きな怪我はなさそうですがそれなりに被弾はしているようで、
あー、でもこれはこれでかっこかわエロいです。
しかし、ほんと手足も身体も細くて、あんなでっかい魔物と戦ってるのを見るとギャップがすごいんですよねぇ。
やや観戦気分で居た所に、突如どでかい爆発音が響き渡りました。
普通の魔物が爆発したのでは無い明らかに巨大な破裂音でしたが、発生源は……。
あ、触手ワーム君の、私が触手に捕まった時に切り裂いて脱出した辺りのお肉がごっそりと吹っ飛んでいますね。なるほど、確かに脱出する時に
その時の爆破毒が月ヶ瀬さんに地面に叩きつけられた衝撃で炸裂したという感じでしょうか?
あっ、あっ、その傷口に月ヶ瀬さんが大鉈をぶんぶんして……。
……あっちはもう終わりですね。いや、最後はなんか微妙な感じになりましたが、結局あの巨大な魔物をほぼ一人で倒してしまう辺り魔法少女(物理)は格が違いますね。
「
「煌めけ!木星を穿った21の星屑!再現せよ!シューメーカーレヴィ
「ちょ、ちょっとまってよ!ボクこんなに遠くから届く技ないんだけど!?」
おっと、援軍の魔法少女さん達も到着したようですね。
薄い霧に覆われたかと思ったら、何やら空から隕石っぽいものが複数着弾して霧と魔物を吹き飛ばしました。
……連携、取れてませんね?
まあしかし、流石にこれは勝負あったでしょう。
残りの魔物は……多分30体弱ぐらいですかね?そのうち三分の一ぐらいは多分もうじき爆散するでしょうし、3人も援軍が来た今、月ヶ瀬さんも健在ですし負けは無いはずです。
流石に疲れたのでちょっと手抜きさせていただきましょうか。
──助けて……、セヴンス様……──
ん?あのヘリには理珠さん乗ってませんよね?
今、たしかに理珠さんの声が聞こえたと思ったんですが……。
嫌な予感を覚えながら理珠さんの魔力を探しますが、なぜか見つけることが出来ません。
感じられるのは、入間の自衛隊基地の側……。
魔生対本部であろうと思われる場所に存在する、私が遭遇した魔力災害の倍以上の魔力を持つ魔物の反応と、それに相対する魔法少女達の魔力。
なるほど、コレが本命の、今回の襲撃の目的ですか。
何より、理珠さんの魔力を見つけることが出来ないのが気がかりです。
こちらはもう大丈夫でしょうし、急ぎあちらへ向かわなくては……。
基本、魔物は餌にするために魔法少女を殺しませんから流石に大丈夫だとは思いますが、理珠さん、無事でいてくださいね?
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