第23話 合体!魔物ゴーレム!
2体の魔物の出現。
その上、黒い岩石の巨体が実体を持ち始めます。
しかも、魔力災害が変じた強大な魔力量を持つ魔物です。夜間最強の魔法少女を含む我々3人ですが、これは流石に、真剣に戦う必要があるでしょう。
しかし、しかしですよ?
赤い鳥と黒い岩ロボと青いジャガーを見て、私の脳内回路がとある映像を出力しました。
いや、私一人だったら良かったんです。でも、この場にはもう一人、同じ想像をしてしまった魔法少女が居たのです。
「いや、あの3匹……」
「まあ、ですわよね……?」
ドリルの魅力を理解している彼女です。この状況から想像できる「アレ」を考えないはずがありません。
「「すごく合体しそう」」
ええと、先程聞いた話を繰り返しますが、魔法少女の思念は一般人数十人の思念と同等の強さを持ちます。
そして、現在思念の影響を強く受ける受肉する直前の魔物が居ます。
そうなれば次に起こる事は……。
ずしんと大きな地響きを立てて黒い岩のゴーレムが大地に降り立ちました。
そして、降り立つと同時に青いジャガーをむんずとつかみ上げ……。
突然の事態に驚きの鳴き声を上げるジャガーを無視して、黒のゴーレムはそれを縦に真っ二つに引き裂きました。
あまりの行動に赤い猛禽も驚愕で硬直しています。
ゴーレムは真っ二つに引き裂いたジャガーをいそいそと並べて地面に横たえると、勢いよくその上に飛び乗りました。
たしかにメタリックな質感の毛並みでしたが、決して金属ではないはずなのにジャッキーンと鳴り響く効果音。
そして、明らかに足にジャガーを踏んだだけでは装着されるはずのない、謎の金属で出来た強化パーツが装着されているゴーレム。
いや、そんな無理矢理な合体あります……?
さらに、未だに硬直から抜け出せていない赤い鳥にも魔の手が迫ります。
ぎょえーと死ぬほど情けない鳴き声を響き渡らせる鳥の魔物。いや、いっそ哀れではありますが……。
そんな鳥の魔物の両翼を掴み、高く掲げた後に勢いよく頭に押し付ける岩の……いや、もういいです、合体ロボの魔物。
鳥の魔物の頭部と胴体は合体ロボの頭部に融合、翼の部分は薄く大きく展開し両腕を保護するように包み込みました。
鳥が頭部に合体したってことは、まあ、アレですよ。鳥頭の合体ロボなんてそうは居ないので、当然の様に鳥の胴体部分がメカニカルに開いて妙に凛々しいロボ顔が登場します。
背景が地面むき出しの元工事現場ということもあり、特撮ヒーロー感がすごいです。
そして、如何にもな拳法の構えっぽいポーズとともに合体ロボの背後で派手な爆発が起こりました。
……それはそれとして、シュネーさんにジト目で見つめられるオタク2人です。
「……申し開きはおありですか、お二人共?」
正直すまんかったです。
「な、なかなか斬新な魔物が登場しやがりましてございますわね?ま、まあ?鳥の魔物の羽部分が背中にくっつきやがって飛行能力獲得とかは無かったのは不幸中の幸いというか……、はい、マジさーせんっした……」
「いや、だって本当に合体するとは思わないじゃないですか。というか、3体になるように送り込んだ何者かが居るかもしれないって情報の方が重要じゃないです?……いや、はい、ごめんなさい」
そんな漫才を繰り広げてる間に、合体ロボはこちらを認識したようです。
ずしんずしんと重量を感じさせる足音と共に、姿に見合わぬ速度でこちらに突っ込んできます。
「はあ、しょうがありません、相手にしてさしあげましょうか。お二人共、反省したならしっかり仕事をしていただけますね?」
まあ、はい、責任取ってしっかり足止めをさせていただきましょう。
シュネーさんの言葉に頷き、
が、ここで問題が……。
この開けた工事現場跡のどこにあの合体ロボの重量を支えられる構造物があるでしょうか……?
サビサビの構造物がいくつかは存在しますが、あの錆びっぷりでは大質量を支えることはできないでしょうし。
ん、駄目ですね。今回
ならば、別の魔法で損傷を与えるか、時間を稼ぐかしなくてはなりません。
でもあのロボ、中に人が入ってるんじゃないかってぐらいむやみに軽快に走ってますし、
んー、まあ、対ロボなら絵面的にもかっこよくなりますし、まだ魔法少女達に見せてないあの魔法で行きましょう。
「
月が作る私の影から7本の刃が飛び出し、切っ先を合体ロボに向けた状態で空中に静止します。
この7本の剣は私の意思を汲み取り勝手に戦う、まあアレです。ロボット物お約束の、思念操作系の遠隔操作武器みたいなヤツです。
人が手に持つことを想定していない、柄の無い7本の刃。半自動で飛び回る以外は特殊な機能をほぼ組み込んでいない分、その強度と速度はかなりのものなはずです。
「うっわ、絶対ファ◯ネルですわよねそれ。かっけーですわよね遠隔操作武器。わかりますわ」
ペネトレイターさんが感激の声を上げてくれました。ですよねー、やっぱ高機動系ロボだったら一機ぐらいはこういうの使ってる機体が欲しいですよね。
「ですがワタクシも負けてねーですわよ!みさらせ!このロマン!」
そして、どうにもかっこよさの琴線が近いような気がするペネトレイターさんが、そう叫んでドレスのスカートの中から得物を引きずり出しました。
……いや、どう考えてもそこに入らないでしょうソレ。
彼女が取り出したのは、彼女の身長以上の長さの鉄塊。保護だの安全だのをすべて捨て去った、対象の加速だけを考えられた巨大すぎる射出機構。
そして、射出されるべき砲身から突き出しているのは鈍く光る巨大な鉄杭。
そう、ロマン兵器と名高いパイルバンカーなのでした。
「ただ、これ一発しか撃てねー上にしばらくチャージに時間がかかりやがりますの。でも、破壊力は折り紙付きでしてよ?さあ、ワタクシの『必殺技』の為に時間を稼ぎやがれくださいまし!」
なるほど、これがシュネーさんと組んで魔力災害から発生した魔物を処理する時の「いつもの手」なのでしょう。
パイルバンカーを構えて目をつぶり、己の魔力をそこへ流し込んでいくペネトレイターさんから手慣れた気配を感じ取れます。
「ふふっ、イレギュラーはありましたけれど、何とか普段の空気に戻せましたのね」
そう言って私の隣にシュネーさんが降り立ちました。
手には単発式の古式拳銃と真っ赤な
あ、いや、彼女の剣が赤いのは当然でした。なにせ、ソレは彼女の腕から流れ落ちる血液が剣の形状を取っているモノに違いありませんでしたから。
優美に笑って銃を構えるシュネーさん。
2体の魔物を取り込んだ魔力災害の魔物、合体ロボはすぐそこまで迫っていました。
……駄目ですね、どうしても絵面に緊迫感が出ません。
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