第8話 幕間


(作者的には『新聞より抜粋の部分』は縦読み推奨)




 新聞より抜粋



『昨日、ダンジョンにて新たな殉職者がでた。▼近年、突如誕生したダンジョン。しかし、現在ダンジョンは人類にとってなくてはならない資源の宝庫となった。けれど、問題がないわけではない。その最大の問題は、ダンジョンではどうしても死者が出てしまうこと。ダンジョンでは魔物が跋扈し、時に人の命を簡単に奪う。最も命を奪う存在はイレギュラーと呼ばれる魔物。今回は『不死鶏』という魔物だった。国内トップレベルの30人が一気に亡くなった。▼赤の迷宮で誕生したこの『不死鶏』は現在、人類の認識しうる中で一番強い。前々から指摘されていた説を証明した結果となった。▼戦いは17時04分に始まり、17時50分まで続いた。戦いは相打ちで終わる。そう思われた。しかし、それは悪い意味で裏切られ、『不死鶏』は復活。得られたのは『不死鶏』の戦闘能力と名に違わぬ不死性の情報。果たして、今回の戦いに見合った結果だったのだろうか。▼政府はダンジョンへ探索者が入ることを推奨している。だが、年間の死者数は千人を優に超え、悪夢のダンジョンブレイクが起こった時は一万人の死者をだしたのではなかったのか。その数もさることながら、これに依存することを是とする国の政策も甚だ疑問だ。▼国は、今回の件に関して忸怩たる思いだとコメントを出した。だが、そう言っておきながら15歳以上であればダンジョンに入れるという法案を可決しようとしている。本当に大丈夫なのか、そう自問する』



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 とある神の独白




「赤の迷宮は、数ある迷宮の中で簡単に完全攻略を行なえる格好の的。そういった風潮が人間社会に浸透しつつある。今、これを是正しなければいけない!!」


 誰が言ったかは覚えていないが、その言葉から始まった赤の迷宮大改装が始まって一ヵ月。ようやっと階層の割り振りなども決まり、100階層まで創造するまでに至った。


 そして、始まったお披露目会。90階層のボス『不死鶏』の放逐が開始された。即座に人間たちは討伐隊を組み、これを討伐するために戦った、が叶わず。死なば諸共と、相打ちに持ち込もうとする。しかし、それもならず、30名の死者と、戦闘経験を一つ積んだ不死鶏が残った。


 ネットはお祭り騒ぎ、というか若干お通やになってるところもあるが、大きな話題として取り上げられたことは間違いない。


 発案した数柱がこれに気を良くし、現在は酒盛りの真っ最中。


 誰もかれもが、この迷宮は成功するなどと言っている。本当にそう思っているのだろうか。


 確かに、人間たちはこの『不死鶏』を大々的な話題として取り上げているが、そうだからと言ってダンジョンに人が多く来るかというのは別問題だろう。むしろ、こんなのがいるダンジョンに来たいと思うのだろうか?


 私は人でないからわからないが、あれは人間たちの精鋭だったようだ。つまり、人間たちの精鋭が敗れた魔物のいるダンジョン。上層から中層であればまだ人は来るだろうが、下層までおりてくる者たちがいてくれるのか。


 私は酒におぼれている馬鹿どもうわやくたちを横目に、思案する。が、赤の迷宮にこれといった愛着がないのですぐに思考を放棄する。


 まあ、不死鶏をさっさと90階層に戻すことぐらいは具申しておこう。実現されるかどうかは知らないが。


 そうして、私も酒におぼれる馬鹿どもうわやくたちとご相伴に預かるため、酒瓶を片手にふらつきながら歩いた。


 

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