好きな人からの出迎えってはやっぱり最高だよね

「ただいま!」


「お!おかえり!学校どうだった」


俺が家に帰ってそう叫ぶと、ドタバタと楓が中から走ってお出迎えをしてくれた。


「めっちゃドキドキしたぞ。周りが女子だらけだったしな」


色々な場面でドキドキはしたが、絶対できないような体験だった。


これが続くんだよんなぁ。


俺の心臓が持つかどうかが問題である。


「お兄ちゃんって女性経験ないもんね」


「うるせぇ、俺は楓がいるからいいんだよ」


俺は確かにこのコミュ力に加えて、勉強もイマイチ、部活もしてないそんな中学生活を送ってたわけだから、彼女どころか、友達もできるはずがなかった。


でも、そんな時も俺の心の支えとなったのが、楓だった。


自分はもっと大変なことをしているだろうに俺が疲れている時はいつでも心配してくれていた。


ま、そんな優しさもこんなにシスコンになった原因である。


「きゃー!嬉しい!」


そう叫んで、俺に飛びついてくる楓。


うん、かわいい


「それにしてもやっぱ楓ってすごいんだな」


「ん?学校でなんかあったの?」


楓は抱きついたまま、顔だけを上げてそう聞いてくる。


「いや、みんなから尊敬されてて頼られてるんだなぁって」


「どうしてそう思ったの?」


楓は心配そうな顔をしていた。


そんなに俺の心配をしてくれていたなんて本当に優しくてよくできた妹だ。


「わからない問題を聴いてきたりとか、話すだけで緊張するみたいだったからな」


実際、誰も話しかけてこなかったり、声をかけたら緊張して逃げたりしていた。


「そうなんだ、よかったね」


楓はほっとした様子で胸を撫で下ろしていた。


「あぁ、普段ちゃんと頼られることなかったから新鮮だったぞ」


「それで!それで!他にどんなことがあったの?」


楓は安心したからか、今度は目を輝かせた。


「他には昼休みに屋上に行ったんだが、人がいて、楓の顔を見るなり、慌てて逃げていったんだよ」


よく思い出してみれば、かなりいい顔立ちだった気がする。もっと自分に自信を持てばいいのにな。


「心当たりとかってあったりするか?」


「多分だけど、栞さんかな?」


「へぇー、栞って名前なんだ。ていうか、友達だったりするのか?」


そこですぐに名前が出てくるってことは関わりがあるってことで、逃げた理由はそれだけ尊敬してたからか、雰囲気が違うの察したからかと思ったがそれは杞憂だったようだ。


「いや、違うよ。栞さんはいつも昼休みは屋上にいるんだよ」


「それなら、明日も屋上にいるかもしれないな」


あの学校は日焼けとかばっかり気にする子だったのに珍しいな。


まぁ、みんながみんな気にしているわけじゃないんだろう。


でも、お嬢様とかに合わせないとハブられるとか思う人も結構いるんだと思う。


「ていうか、関わったこともないのに知ってるって結構有名人だったりするのか?」


「それはね、栞さんって成績が2位なんだよ。しかも、大企業の娘さんだから、有名なんだよね」


「それなら、社長令嬢ってことになるのか。ってことは次期社長だったり!」


「いや、どうなんだろ。栞さんって確か双子だったんだよ」 


「そうなのか!」


俺は楓が作った料理が並んである机の前に座った。


相変わらず美味しそうな料理だ。


元々は俺の方が料理は圧倒的に上手というプライドがあったが、今では俺の方が負けているかもしれない。


「あ、でも、私たちと違って、女同士だよ」


楓は箸を台所から持ってきて、俺の目の前に置いた。


「じゃあ、その双子の姉か?」


「確か栞は妹の方だったと思う。だから、もしかしたらお姉ちゃんのほうが社長になるかもね」


「ちなみに栞の姉はこの学校なのか?」


「そうだよ」


「いつか会ってみたいな。きっと栞とそっくりなのかな?」


双子ということは俺たちと同級生ということだ。


性格も栞にそっくりなのだろうか。


見ただけでわからないくらい似てたりしたら面白いな。


そう思うとワクワクしてきた。


ぜひ、明日にでも会って見たいものだ。


「••••••私は知らないなぁ」


「そうなのか。ま、面白そうな人だったし、明日も会いに行ってみるか」


俺たちは手を合わせた。


「「いただきます!!」」


そう言って俺たちは料理に手を伸ばした。


やっぱり、楓が作った料理はとてつもなく美味しかった。


「やっぱり、楓が作った料理はめちゃくちゃうまいな。流石楓はすごいな」


「えへへ、ありがとう」


楓は恥ずかしそうにしていた。


「それにしても、お兄ちゃん。中学の時からコミュニケーション能力上がってる?今の話聞いた感じ、誰とでも話せめるみたいじゃん」


「あー、確かにそうだな。理由はわからないけど、楓の姿をしたほうが人と話せるような気がするな。もしかしたら、俺のコミュニケーション能力が上がってるのかも知れねぇな」


言われてみれば、そうだ。確かに今までの俺なら、自分から挨拶しようとなんて思わなかっただろう。


これは中学卒業してからコミュニケーション能力がついたからなのか、楓が学校に行くように戻った時に恥ずかしくならないようにという兄妹愛ゆえなのか…


「お兄ちゃんに限ってそれないでしょ」


しかし、それを楓はざっさりとぶった斬った。


「ひどいなぁ」


「まぁ、でも、お兄ちゃんが楽しそうでよかったよ」


「それはかなり楽しかったよ。高校ってやっぱりいいな」


なんやかんや楽しかったのは本当だ。


人気者だからか、会話数が少なかったのはあれだが、頼られたり、緊張されて逃げられたり、今までにないような経験ばっかだった。


きっとこれからも楽しい学校生活になるだろう。


「そうなんだ。良かったね」


明日も楽しみになってウキウキしている俺にはそう言った楓が苦笑いになっていたことに気が付かなかった。



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