第15話 デート二日目
八時間しっかりと睡眠をとって、愛子との約束の二日目になった。
今日は大きめのシロTとジーンズを着ていくことにした。シンプルな組み合わせなので、ダサくはないはずだ。
俺は軽くあくびをしつつ身支度を進めた。
現在朝七時過ぎで、まだ眠さが残っているのだが、八時間以上寝ると何だか体調が悪くなるので休みの日でも我慢している。
愛子との集合時間まで三時間ないくらい残っているので、ダラダラと時間を過ごす。
愛子と遊ぶのもさすがに二日目となると、昨日ほどはあまり緊張していなかった。でもちょっとだけ落ち着かない気持ちもあって、それがまた楽しかった。
朝ごはんは食パンを一枚、何もつけずに食べた。
今日もやはり集合の十分前に図書館に着いた。
午前中でも外は全然暑いので、図書館の入り口前の日陰で待っていた。
昨日の感じからすると、愛子もあと五分くらいしたら来ると思う。愛子の家からも近いので、遅刻することはないだろう。
俺の予想通り、愛子はちょうど五分くらいしてから図書館に着いた。
今日の愛子はベージュのパンツに緑と白のボーダーのTシャツを着ていた。昨日よりもラフな格好で、かっこいい。
「おはよう。やっぱり今日も待たせちゃったね」
「それは全然いいんだけど、今日は図書館に寄るところからスタートってこと?」
「そう。私はだいたい午前中は図書館でダラダラ過ごすのが好きなんだ」
そう言って、愛子は持っていたトートバックを軽く振り回しながら図書館の中に入っていった。
そんなご機嫌な様子の愛子が微笑ましい。それが愛子の休日モードなのかもしれないが、できれば平日も、少しはそのモードを継続させてほしいものだ。
「あっ、言い忘れてたけど図書館には二時間ぐらいいるつもりだから」
図書館に入った愛子は振り返ってそう言った。
俺は暇潰し道具を持ってなかったので、図書館で適当な本を読むことになりそうだ。
俺と愛子は並んで閲覧席に座った。俺はショルダーバックを置いて本を探しに行った。
俺が読みたい本を見つけて、席に戻ってみると愛子はすでに読書を始めていた。
タイトルを見てもピンとこなかったので、俺は気にせず自分の読書を開始した。
「じゃあ、そろそろ出よっか」
愛子に小声でそう言われて、読んでいた本を借りるために荷物を持ってカウンターに向かった。二時間だけじゃ全部読めなかったので、面白かったし家で読むことにしたのだ。
俺は貸し出しの手続きを終わらせて、待たせていた愛子の元へ戻った。
二人並んで図書館を出ると、外の熱気がすごいことになっていた。
今日は昨日よりも一段と暑い。日差しの強さが半端なく、今日散歩してたらヤバかったなと思った。
「それじゃあ次は買い物に行こっか」
「買い物って何を買うの?」
「食材」
「……つまり、料理をするってこと?」
「そうだよー」
愛子は何の気なしにそう言った。
しかしそれはそんな簡単なものじゃなくて、何だか高度なプランな気がする。
「料理するって言っても、どこでやんの?」
「……私の家でしょ」
「……まじか」
もしかしたら、そうかもしれないとは思ったがまさか愛子の家に行くとは。
愛子の家なんて小学校中学年ぶりくらいの気がする。小四の時に最後に言ってたとして、だいたい六年ぶりの訪問となる。
……まじかこいつ。
久しぶりに愛子の家に行けるのは嬉しい。嬉しいけど、正直緊張するし不安になるし無理な気がする。
「親はやっぱりいるの?」
「いないよ。今日は二人で出かけてる。さすがの私も親の前で健吾と二人で料理なんて恥ずかしすぎる」
「だよな。よかった、というかまあ、久しぶりに会うんだし挨拶ぐらいはしておきたい気もするけどとりあえずよかった」
「よかったが溢れてるよ。正直親と会うのも嫌でしょ」
「別に嫌ってわけじゃないよ。本当はやるべきだとも思うし。でも、ただ気まずいってだけ」
「そっか」
愛子はそっけない態度だが、ひとまず安心できた。
小学五年生以降、愛子とはあまり交流を失くしてしまったから愛子の両親と会うのは少し気まずい。だから久しぶりに会うのも急に会うのも抵抗があった。
それに、たぶんまだその時じゃない。
ちゃんと全部解決してからじゃないと、しっかりと話せない気がする。
「じゃ、スーパーによって帰ろ」
そう言って歩き出した愛子にゆっくりと追いつく。
今日の愛子はいつもより余裕がある感じがして頼りがいがある。
いや、実は愛子はずっと頼りがいがあったかもしれない。
いつまでも、小学生の時の愛子のままではない。ちゃんと成長して、大人になって、よりやさしくなってるんだなあと思う。
愛子の両親から見たら、俺はどんなふうに成長しているんだろう。
そして、愛子から見ても俺はちゃんと成長しているのだろうか。
それは聞いてみないとわからないけど、聞くべきことでもないんだろうなと思う。
だからやっぱり、自分にできることを少しずつやっていこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます