好きな週末

第12話 デートプラン

 試験が終わったところだが、俺はまだ休むことができなかった。

 それは愛子との週末の約束があったからだ。


 俺は『二人の好きな週末を経験しあう』という愛子からのお願いをかなえなくてはならない。

 そのため、俺はどんな週末がいいか計画しなければならなくなった。


 これが本当に難しいのだ。


 自分の好きな週末なんて、一番センスが出る。

 趣味の合う合わないとか、オシャレか、カッコいいかなど色々と試される気がする。


 等身大の週末でいいと愛子とは話したが、それでもやっぱり選別されてしまうと思う。

 俺も多分そうしてしまうと思うし。


 もし愛子が続編の映画に連れられたら、ちょっと嫌だなと思う。

 だから結局愛子のことを考えてプランを考える必要があるのだ。


 これはもうデートのプランと変わらない。

 約束したときは吞気に楽しみだなあ、なんて考えていた。でも今になると、もっと前から準備しておけばよかったという気持ちになる。


 正直俺の趣味と言ったらお笑いライブと散歩しかない。

 この二つが愛子にはまるのか本当に分からない。


 でも俺の思う最高の週末はそれだと思うし、そのどちらも楽しむ気持ちがあれば絶対に楽しめるものだと思う。

 自分の中の楽しみたい気持ちを引き出してくれるものだと思う。

 それで俺も救われた。

 だから愛子も絶対楽しめるはず!


 ……でも人に自分の好きなもの紹介するのって、緊張するなあ



 ピッピッピッという目覚まし時計の音により、七時ちょうどに起床した。

 電子時計はしっかりと土曜日と表示していた。


 ついに約束の日になったのだ。

 今日は俺の好きな週末を愛子に経験してもらう。


 俺は結局、新宿のルミネでお笑いライブを見た後に、新宿御苑で散歩をすることにした。


 ルミネでは人気の芸人さんがたくさん出るので、愛子でも楽しめると思ったのだ。

 それに幸運なことに、ちょうど俺の大好きな芸人さんも出演することになっていた。その情報を手に入れて、俺はルミネをプランに入れることを絶対にした。


 ライブを見た後はどこかでご飯を食べて、新宿御苑に行く。

 別に新宿御苑はよく行くわけじゃないが、散歩をするならもってこいの場所だと思った。あまり言ったことが無いのは愛子も同じだろうし、新鮮な気持ちで楽しめそうでよかったのだ。


 その後は特に決めてないが、その時の雰囲気によってタイトーステーションに行ったり紀伊国屋書店に行ったりすれば楽しく過ごせると思う。

 そんなプランで俺は今日のお出かけに挑もうとしている。

 愛子と出かけるのは本当に久しぶりなので、俺は気合を入れて、ベージュのオープンカラーシャツと黒のスキニージーンズを着ていくことにした。


 待ち合わせは互いの最寄り駅だった。

 十時に駅の南口に集合して、一本で新宿に行くことができる。


 俺はしっかりと集合時間の十分前に駅に着くことができた。

 流石に女の子との集合は十分前が鉄則だろうと思ったのだ。


 俺はそんな自分を誇らしく思いながら日陰で待つことにした。

 まだギリギリ六月なのだが、日差しに当たり続けるともうきつい。汗ダラダラでこの先過ごすのは嫌だった。


 というか、それなら散歩をプランに入れたのは間違いだっただろうか。

 いや、でも新宿御苑は涼しかったりするのか?

 いやいや、新宿御苑も東京であることには変わりないんだから、まあまあ暑いだろう。

 いやいやいや、それならプランを変える必要があるじゃないか。例えば散歩をカットしてタイトーステーションに行くとか。

 いやいやいやいや……


そうして俺が必死に頭を回していると、左肩をぽんと叩かれた。


「おはよう。なんだかすごく考え込んでるけど大丈夫?」


 見慣れない私服姿の愛子に覗き込まれた。

 愛子は白のTシャツにベージュと白のフレアスカート、そして小さめのカバンを肩から下げていた。


 うわぁ、いいなぁ。

 もうそんな愛子の姿を見て、涙が出るくらい嬉しいのだが、ここは必死に取り繕っておく。


「今日何するか確認してたんだよ」

「そっか。楽しみにしてるよ」

「楽しむ気持ちがあるなら大丈夫だよ」

「なにそれ?」

 そんな会話をしつつ、俺たちは改札に入っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る