第4話 戦う美少女は…… その4

 とりあえず通知設定はOFFにしておこう。

 戦闘中に通知で音が鳴ったりウィンドウが開くと邪魔になるしな。

「……しかし、やっとこさクエストか」

 しみじみと呟く。

「アンタが言うな!」

「ははは……」

 若干涙目のツンデレさんが叫びA君が困った感じに笑っている。

「2人共クエスト前にクタクタになってるけど、……大丈夫?」

「アンタのせいだろうがぁ!」

 可愛らしく首を傾げたらツンデレさんがキレた。

「どうどう。それより連携は頭に入ってる?」

「もちろん」

 こいつらを囮にして俺が後ろから切りつける。これで経験値はいただきだい。

「それじゃあバカップル狩りに行こう」

「「おおぉぉぉ」」

「おおぉ~~~、…………って、バカップル狩り⁉」

 え?バカップルってあのバカップル?

「なんだ、変な顔して」

 A君が不思議なモノを見るように俺を見る。

「え?それがクエスト?」

「アンタやっぱり話聞いてなかったでしょ」

「はは、クエストは増えたバカップルの討伐以来だ」

 春か?春になって増えたのか?

 そういやギルドに来る途中で変態が―――

 いや、よそう。思い出すべきじゃない。

 全く、変態のセクハラとか許せないよな。———なっ!

「はぁ~~~、そんな依頼があるんだ」

「気が乗らないか?」

「いや、バカップルが増えたらウザいからな。やらせてもらうよ。いや、むしろ積極的に殺らせてもらうよ」

 もてない男のひがみを思い知れ。こちとら依頼だから大義名分があるのだ。

「それじゃ行くか」

「おう」


「ん?町を出るのか」

 俺達は町の出口の門に来た。

「ああ、そうだよ。バカップルは西の森で繁殖してるんだ」

 A君が門番に通行証を見せながら説明してくれる。

「…………青〇かよ」

「ん、アオカン?」

「いや、だって森で繁殖行為してるんだろ」

「うん、そうだけど」

「ならば急ぐぞ。真昼間から外で繁殖してやがるバカップル共をぶちのめしに行くぞ」

「なんでそんなに戦意が高いのよ」

 もちろんバカップルが目障りだからだ。

 公共の場でイチャイチャしやがって。死ね!

「気合が入ってるのはいいが逸るなよ。意外と面倒臭い奴らだからな」

「バカップルが面倒臭いのは分かり切ってるだろう」


 そう言う訳で町から西に向かい森の入り口まで来た。

 西の森は街道沿いにあり、北側の山麓の裾野に広がっている。

 街道は森を迂回するように南に逸れており、草原を挟んで南側にプーサンダーが住む森がある。この西側にかつての王都があったのだが、その更に西に帝国の国土が有ったのでこの先により大きな街があるはずだ。

 とりあえずそちらはまた今度でバカップル狩りが優先だ。

「目標は10匹だ」

 つまり10組のバカップル、計20人———おっと、20匹か。20匹狩ればクリアーか。

「どれくらいで片付きそうだ」

「ん~~~、これくらいなら日帰りできるのは確実ね」

「日をまたぐクエストもあるのか?」

「駆け出しは基本日帰りよ。1人前でようやくキャンプできるってところかしら」

 そういうものか。ならばベースは作らずこのまま森に入るのかな?

 どうやらそうらしい。

 俺達は森に分け入った。

 森とは言うがそこまで鬱蒼とはしていない。

 木漏れ日が差し込み足元まで照らしている。その為足元はそこそこしっかりしていて、人が踏み均した所があり道のようになっていた。

 まぁバカップル共が来るくらいだからそこまで危険でもないのだろう。

 少し進むと―――

「敵だ!」

 森の中を大きな蜂が飛んでいた。

 大きさは30㎝くらいのスズメバチ風のやつ。ブーンという羽音をさせながら旋回している。餌を探しているのだろうか?

 蜂の怖いところは毒を持っていることと群れで襲てくること。 

 数十匹のスズメバチにたかられて毒針で刺されれば麻痺毒で呼吸困難になり、苦しみながら死ぬことになるだろう。

 こいつは1匹だが、1匹でもここまで大きいと1度に多くの毒を流し込まれそうで怖い。

 他にも知らない人は多いかもしれないが、スズメバチは口が恐い。虫画像が苦手な人は見ない方がいいが、こいつらの口は左右に開く強靭な顎で肉を食いちぎるのだ。

 大きい蜂は顎も大きい。すると立てる音も大きくなる。

 ガッチン、ガッチン、ガッチン!

 嚙み鳴らされる音がここまで聞こえてくる。

 いや~~、異世界の魔物。こうして改めて見るとやっぱり怖いな。普通にデカいし生々しい。

 まぁ、だからと言って逃げるという選択肢はないんだけどね。

「嬢ちゃんは無理せずにするんだぞ」

 A君が気にかけてくれるが大丈夫問題ない。

 これは武者震いだ。だからビビッてねぇから。


 ビビッてねぇって言ってんだろが!

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