第4話 戦う美少女は…… その3
「改めて、オレはこのパーティーのリーダーを務めているジャックだ」
どうでもいいのでA君だ。これは変わらない。
ホントにどうでもいいがこいつがリーダー?
すっげー頼りない。
言いたいことは色々あるが―――――。
それよりもこのウィンナー美味いな。
ウィンナーとはミンチ肉に香辛料や玉ねぎなどの香味野菜を加えた餡を豚やヤギの大腸に詰めて、適当なところでクルクルと巻いて区切ったやつを吊るして燻製、煙で燻すことで保存がきくようにした欧州の、特にドイツが有名な伝統料理である。
主に、焼いたりボイルしたりしてから食べるものである。
今俺の前にあるのは焼いたものだ。
ウィンナーは餡の具材や燻製の仕方などで白いものや茶色いものがあるが、茶色いそれを綺麗な焦げ目がつくように強火で焼き上げたようだ。
太く反り返って、油で表面がテカテカしたそれにかぶりつく。
「———ふぉふ、ふぉふ」
しまったな。
俺のアバターはアニメチックな美少女キャラにデザインしてしまっていた。
つまり、お口が小さかった。
今までの食事は気にならなかったが、これには少々手こずった。
「……ねぇ、アンタ話聞いてんの?」
「もふ、ひもふもふ」
「そんな太いの口に咥えながら喋らないの」
「もふ」
注意されたので俺は口にくわえていたモノを奥へと押し込んだ。
「———ッムグ!」
「あっ、そんな無理やり入れるから」
喉の奥に詰まりかけたので吐き出そうと―――
「ほら、吐き出しなさい」
「むぐ」
「って、入れるの!」
ツッコまれたので出す。
「やっぱり出すんだ」
入れる。
「なんで!」
出す。
「フム、ハム」
入れる、出す。
じゅぽじゅぽ。
入れては出す。この繰り返しで口から出たヨダレで音がたつ。
「…………ジャック、何してるんですか」
「——っ、み、見てないぞ!」
ふむ、そろそろいいかな。
「は~~む」
パキュッ!
ウィンナーに歯を立てるといい音を立てて噛み切れた。
「はぅ!」
それを見ていたA君が前かがみになって顔を赤らめていた。
ふふふ、分かる。分かるぞ君。俺にもその気持ちが。
「もぐもぐ」
「アンタ、……わざとやってるでしょ」
「ん?なんのこと」
「それ」
ツンデレさんがウィンナー指さすので。
「…………お姉さんも食べます?」
「食べないわよ」
「そうですか」
「うっ、そんな悲しそうにしないでよ」
「お肉の棒の先から熱いお汁が出てきて美味しいのに」
「やっぱりアンタわざとでしょ!」
「なにがですか?」
「だからそのフ―――」
「フ?」
「フ、ふっ……、~~~~~エッチなやつよ!」
残念、言えなかったね。
「エッチ?何がエッチなのですか?」
「うっ」
純真な目で見つめてやると、ツンデレさんはたじろいでいる。くくく、美味しいな。
「だからそのウィンナーがよ!」
「ウィンナーがどうしてエッチなんですか?」
「ウィンナーというより、……アンタの食べ方よ」
「俺の食べ方、……エッチなんですか?」
「っえ?ぇえっと」
「ちょっと、ジャックに振らないの!って、アンタは何いい顔で親指立ててるの!」
「…………ビヒーダはどう思う?」
「……………………」
「ふぅん、そっか。……しかしとんでもない娘ね。話が全然進まない」
「……………………」
俺がA君とツンデレさんをからかっていても魔女っ子と無口さんは傍観に徹している。
やっぱり普通じゃないな。
俺みたいに自然体で異世界に溶け込んでいる者をあんな見透かしたように見ていることから、———奴らも俺と同じ転生者なのだろう。
ふっ、異世界で他の転生者にエンカウントするのは転生モノのお約束だろ。
「ちょ!無理やりウィンナーを口にねじ込もうとするな!」
「大丈夫、大丈夫。これ、ゴーホー。ゴーホーだから」
「ゴーホーってなによ!ジャックも見てないで助けなさい!」
「……………………アレは伝説の『エアリオ』じゃないわね」
「……………………」
「ほらほら、このマスタードをかければ更に美味しいよ」
「やめて!ワタシ辛いのはダメなの!」
「最初はミンナそう言うけどすぐに病みつきになるから」
「キャアアアアアアアアアアアア!」
「おぉう、サリアが乙女みたいな叫びを上げてる」
「あっ、A君のウィンナーにもマスタードかけてあげる♡」
「A君って誰!ウィンナーってどっちの事?———って、まって、止めて」
「大丈夫、このツブツブがキモチイイの」
「やめっ―――あああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「……………………阿鼻叫喚ね。さしずめ変態の魔王、かな?」
「…………………………」
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