第4話 戦う美少女は…… その2

「ふん。あんたみたいなのがウチに入るのは認めないんだから」

 そう腕を組んで上から目線でのたまうのは―――

「…………ツンデレかぁ」

 そう。ツンデレである。

 長い赤髪をたなびかせる剣士風の少女はこれ見よがしにツンツンとした態度でのたまうもちろんA君に。

「こんな子供に何ができるの!」

「————いや、お前が言うなよ」

 いや、A君がそれ言っちゃダメでしょ。

「なっ!それはワタシが子供だって言うの!」

 ほら。

 俺より少し背が高い位の少女が声を荒げる。

 そうなのだ。このA君に食ってかかるのは小さい少女なのだ。にもかかわらず明らかに俺に警戒の眼差しを向けている。

「まあまあ、そんなこと言わずにリーダーの意見を尊重しましょう」

「そうだぞ。オレ達だって駆け出しの時にベテラン冒険者にお世話になっただろ」

「…………そうですど、ウチ達はまだ駆け出しに毛が生えた程度ですよ」

「そうよ!そんなのはベテランのパーティーに任せなさいよ」

 おう、ツンデレさんがんばれ。そうだそうだ、ベテランの何が偉い。

「そんなこと言うが、ベテラン冒険者はそんなこと言って新人を

食い物にしてるって話じゃないか!」

 …………よ~~~し、冒険者A君、ガンバレ!

「とりあえず。この子のために初心者向けのクエストを受けてきた。これでこの子の実力を測るぞ」

「…………まぁた女の子が増えた」

 すみません。中身は男です。


「とりあえず自己紹介だな」

 自己紹介か…………、ならば「ノゲラ」にあやかって風呂で。ってありませんでしたね、どうする風呂?

 それを断ち切ったのがA君の言葉だった。

「というわけで、まずはオレからだな」

「「ここで始めんのぉ」」

 俺とツンデレさんの叫びも無視して、自己紹介が始まった。

 ほとんど面倒くさそうな顔をしているが。

「オレの名前はジャックだ!」

 …………覚えんの面倒臭いしA君でいいよねっと。

 リーダーの名前は華麗にスルー。

 ん、俺が一番めんどくさそう。

 そりゃメンド臭いよ。面倒臭いがメンドクサイになる程度にはなぁ。

「ワタシはサリアよ」

 ツンデレさんは不機嫌そうに目を逸らして答える。

「———ウチはクーリエ。見ての通り【魔術師ソーサラー】だ」

 紺色の三角帽に顔の下半分まで覆う襟高のローブを纏った幼女。————俺より小っちゃくねぇ。そうでもねぇか?

 最初に見た時はあきらかに小っちゃかったんだけどなぁ。

 ちなみに、ツンデレさんはA君とお揃いの明るいオレンジ色の服に金属の付いたライトアーマーを身に着けている。

 ペアルックですね。

「——————————」

 で、最後に1人まだ何もしゃべってない奴がいた。

 小麦色の肌をした金属製のビキニアーマーを着こなした女戦士。

「———ビヒーダもそれでいいな?」

 A君の問いかけに対しても答えることはなく、黙って頷くそいつに、A君も肩をすくめている。

「オレがリーダーで、サリアとアタッカーを務めている」

「まぁ、ワタシがメインでジャックはオマケだけどね」

「あ、あは、あははは、はぁあ」

 苦笑いを浮かべながら頬を掻くA君に片目をつむりながら悪態をつくツンデレさんですが。

「お2人は幼馴染ですか?」

「な――――っ、なに」

「おっ、分かるか。そうなんだよ、オレが冒険に出ようとしたら――――」

「あ”~~~~~~、あ”あ”~~~~~~~~~、聞こえませ~~~~~ん。ジャックはサイレンスにかかりました」

「はっ?んなのかかってねぇぞ」

 喧嘩を始める2人をよそに、クーリエが表情を変えずに俺の顔を見つめていた。

「じ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

「———?どうした。俺の顔に何かついているか?」

「…………青のり」

「うそ!マジで」

 急いで口元をぬぐうが。

「————いや、そもそもお好み焼きとか食ってねぇし」

「…………ふふ、騙された」

「てめぇ、もしかして――――転生者か?」

「違う。けど、あなたはこの世ならざる者のようですね」

 俺とクーリエは他の奴に声が聞こえないように話をした。

 それがいけなかったのだろうか。

「なに?2人で何か内緒話をしている様だけど」

 ツンデレさんに見止めがれた。

「なんでもないのです」

 上手く誤魔化そうとするクーリエであったが―――。

「…………2人で夜の公園で逢引するらしいぞ」

「っ、まぁってぇ」

 ビヒーダによってアッサリばらされて叫ぶクーリエだった。

「へぇ~~~~~~~~~~」

「~~~~~~~~~なっ、なんですか」

 顔を赤くしながら文句を言うが。

「ジャックがロリコンなのはしょうがないとして」

「誰がロリコンだ!」

 文句を言うA君だが―――。

「いや、このパーティー編成的にどう見てもあんたの趣味が反映されてるじゃない」

「そんなこたぁ~~~~ないし、ビヒーダだって…………、そ…………、その――――、グラマ、っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

「なんだ、青のりが付いてるていどなら言えばいいじゃない。ん?ジャックはなに言ってんの。もっとしっかり言いなさいよ。ナニナニ。~~~~~~~~~~~とりあえず死ねえええええええええええええええええええええ‼‼‼‼」

「そこはハッキリ言えって、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 その後、かなりてんやわんやのやり取りがあったが、結局俺はそのパーティーにお世話になることになるのだった

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