第3話 女はつらいよ。 その6
「さて、そろそろ軌道修正しないと」
でないとこのままではバカ丸出しのお話になってしまう。
———大丈夫、まだ間に合うはず。
これから冒険者登録して格好良く戦うのだ。
「その前にせっかくの奢り飯だし何か食べよう」
面倒くさいのは居なくなったわけだし食べなきゃ損だ。
———大丈夫、まだ間に合う―――はずだ。
メニューを開いて中身を確認する。
「…………すみませーん」
「は~~い」
「この豚玉ラーメンお願いします」
「はい、ニンニク入れますか?」
「ヤサイマシニンニクマシマシアブラカラメオオモリ」
魔法の呪文を唱えた。
「はい、ブタヤロウタマアリヤサイマシニンニクマシマシアブラカラメオオモリイッチョウいただきました」
呪文がパワーアップしていた。
「罵倒は入れますか?」
「あっ、ハ―――いえ、いいです」
なにそれ。何言われんの?俺、繊細だから罵倒はチョットね。ゾクゾクしちゃう。
「あっ、こっちは豚ラーメン普通でお願いします」
別の席の冒険者風の男が声を出した。
「ブタヤロウタマナシ1匹」
周りからクスクスと笑いが漏れているが、男は嬉しそうなのでソッとしておこう。
「はぁ~~~、喰った喰った」
俺はちょっとポッコリしたイカ腹をさすりながら建物の奥のカウンターに向かった。
「すみませえ~~~ん。冒険者登録したいんですけど」
カウンターに居たお姉さんに声をかける。
「は~~い。あれ?今確かに声がしたのに」
作業の手を止め顔を上げたお姉さんは誰も居ない場所を見て途惑った。
「…………まさか、幽霊」
「いやいやいや、下。下だから」
「ん?あら、ごめんなさい。そこに居たのね。小さくて気が付かなかったわ」
カウンターはお金も扱う為か防犯の為、頑丈そうな壁に窓口が開いているのだが。
「うぅ~~~~、高い」
背伸びしても俺の身長では届かなかった。
仕方ないから回りを見渡して適当な土台を探す。
早くも酔いつぶれた冒険者しか転がっていない。
「仕方ない。これで我慢するか」
転がっていた冒険者を引きずって行こうとしたらツレとおぼしき奴から椅子を渡された。
それをカウンター前において上に乗っかて改めてお姉さんと話す。
「冒険者に成りに来ました」
「そうですか。お嬢ちゃん、冒険者ごっこは公園でね。ここには大人になってからまた来てね」
「俺は大人だ~~~!」
まぁこうなる気はしていた。
「俺はエロ本もエロゲーも買える大人です」
「でもそんな小さな体では」
「俺は脱ぐと実はすごいんです!」
「きゃぁぁ、ダメ、ここで脱いじゃダメエエエエ!」
「はっはっはっ、だったら早く登録させろ」
「なんでそうなるんですか。やっ、待ってください。強っ、この子力強い」
「分かったらさっさとしろ」
俺はお姉さんの胸ぐらをつかんで無理やり脅した。舐められたらダメ。冒険者なんてヤクザみたいなもんだと宿屋のおちゃんも言っていたしな。
言っていたよな?
「それでは登録の案内をさせてもらいます」
登録手数料を払って登録を始める。
「お姉さん新人?そんなに緊張しなくても平気だよ」
「いえ、そういう訳では」
何故かオドオドしているお姉さんの指示に従って魔法の装置を操作する。
そうそう、こういうファンタジーなのが良いんだよ。
見た目がリアルな喋る熊や、頭ファンタジーな変態はいらない。
「お名前は【エアリオ】さんですね。年齢は―――嘘、ホントに大人だ。偽装……はできないし」
その通り。このキャラは見た目は10歳ほどだが、それは若くして亡くなった子供が強い霊力を持っていた為、死後に死神と成った。というモデルのキャラの設定をそのまま使っているからである。
—————改めて痛いな、俺の裏アカ。
詳細は秘密♡だぞ。
「ご職業は何になさいますか?」
「ジョブだな―――」
職業選択。【ファーストファンタジー・オンライン】においてジョブ設定はキャラ育成に重要な要素だ。
変更は可能だが、ジョブはそれぞれジョブLv,があり、上がるとボーナスとして基礎ステータスの上昇値が上がるのだ。
目的のキャラ構成の為にもこの選択は間違えられない。
「…………とは言え、このキャラの最初のジャブは覚えてないんだよな」
残念ながら裏アカの育成手順は忘れてしまったので同じ選択はできない。
「フーーーーーーーー」
そもそも、これからは裏アカではなくメインアカ、もとい自分の人生になるんだから二番煎じはよくない。
「だけど選べる初期職業は限られているんだよな」
【
「この中で【魔術師】と【盾使い】は無いな」
この2つは初期職業には向いてないからである。俗にいう不遇職である。
「ふぐぅ」職ではないのであしからず。
どちらも性能がピーキーになりがちなうえに、この世界はゲームを下地にしているがリアルな異世界。
プレイヤースキルが必要ならば使ったことがない魔法をメインにする【魔術師】は論外である。
【盾使い】は、……痛いのは嫌じゃない。
俺はどちらかと言うとMだけど、————はい、ヘタレました。
痛いのは嫌なので、とか言って最強の盾使いになれるのは色々おかしな主人公だけです。そもそも盾使いの枠に収まってねぇし。
「つまり【戦士】か【斥候】のどちらかだな」
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