第3話 女はつらいよ。 その3
「ふぅ~~~~、何だったんだ、アレ」
息を切らして走り、ようやく冒険者ギルドにたどりつくことが出来た。
「異世界転生モノは数多く見て来たが冒険者デビューする前に
あんな苦労をするやつはいないぞ」
あんなセクハラ野郎が跋扈する世界なんて嫌だぞ。
「くっ、イケメンに転生して美少女をはべらすハーレム生活に憧れていたのに、何で俺が男に迫られなきゃならないんだ」
TSモノや女装モノでも美少女に囲まれているのに、いつになったらヒロインは現れるんですか。
「————ぐす」
いや、泣いてないぞ。これはさっきのウソ泣きの余韻だ。男の俺が変態のセクハラごときでガチ泣きかますわけがない。
「そうだ。俺は冒険者に成って強くたくましい男になるんだ」
拳を握って気合を入れていざ冒険者ギルドに乗り込もう。
「たのも~~~~~~~う」
ようやくたどり着いた冒険者ギルドは3階建てのお屋敷だった。
俺は最初が肝心だとばかりに勢いよく扉を開けて中に入っていった。
「あ”ぁ」
おぉ、ゲームやなんやで見るような冒険者らしき人たちががん首並べていますよ。
どいつもこいつもモブ顔してこっちを見てやがる。
くっくっく、いきなりの美少女の登場で困惑しているな。
「———————————」
俺はそいつらに見られながら堂々とモデル歩きでギルドの奥へと歩いていく。
「おいおい、ここはガキが来るところじゃないぜ」
入り口の付近は酒場兼寄合所らしく複数組が朝だというのに酒を飲んでいた。そいつらの中でガラの悪い3人組が声をかけて来た。
お約束だ。お約束過ぎる。
ちょっと感動してしまった。
「————おい、コイツなんで震えてるんだ」
「はっ、いまさらビビってるんだろ」
チンピラ1の禿げとチンピラ2のチャラ男が舐めたこと言ってくれている。
とは言え、冒険者らしく体は鍛えられていて筋肉質だ。
なんで分かるかって?だってこいつら見せつけるように半裸みたいな露出度の高い恰好してるんだもん。
席を立って近づいて来た2人は俺を値踏みしてくる。
流石に今の身長だと大人の男は身長差があり見上げるほどだ。———ちょっと威圧感があるな。
「へへへ、子供は帰ってママのミルクでも吸ってろ」
これまたベタですな。
「それともオレ達とイイコトしいちゃう」
「うっわぁ~~、お前ロリコンかよ~~~」
まぁ予想通りの展開ですね。でも俺は百戦錬磨の漢。この程度で怒ったりしないのだ。
「おい、コイツ笑いやがったぞ」
「スカしてんじゃねぇよ」
お~お~、怒ってるよ。可愛いじゃないか坊やたち。
「…………お”い”」
無視して先に行こうとしたら、奥にいた最後の1人が声をかけて来た。
他の2人よりガタイの良いモヒカン。たぶんこいつがリーダーだろう。
「ア、アニキ」
モヒカンはフライドチキンらしきものにワイルドにかぶりついて、ベロリと指に付いた油を舐めとる。
「嬢ちゃんよぉ。ここにきて挨拶もなくだんまりでズラかろうってかぁ」
立ち上がり俺の背後に回り。
「ちょっくら遊んで―――」
屈んで俺の肩に手を置いた。
「汚ねぇ手で触ってんじゃねぇぞ!」
ドカッ!バキッ!ゴスッ!
「まったく、油もん食った手でコントローラーに触るなて教わらなかったのかよ!」
つい手が出ちゃった♡
「ア、アニキー」
「て、てめぇ。よくもアニキを」
子分共が地面に突っ伏したモヒカンに駆け寄り文句を言てくる。
「————俺用事があるから。じゃっ」
その場に放置しようとしたら。
「逃げ……ん、じゃねぇ」
モヒカンが足を掴んできた。———さっき舐めてた手で。
「っだから汚ねぇ手で触るんじゃねぇって言ってんだろうが!」
「ガッ!」
「テメェは地面にでも吸いっついていろ!」
モヒカンの頭を踏みつける。
「ガッ、ゴッ、ブッ!」
何度も何度もスタンピングを繰り返し、モヒカンのモヒカンを踏み潰した。
「ひっ、ひぃ~~」
周りから怯えた声が聞こえて来た。皆ドン引きだった。
地面ではモヒカンが自分の流した鼻血に沈んで手足をピクピクさせている。
や、やり過ぎた。
「なんの騒ぎだ」
ギルドの外から騒ぎを聞きつけた騎士がやって来た。
「げっ、さっきの女騎士」
「あらくれ共が何をやっている」
よ~~し、ここはもう一度ウソ泣きだ。
「うえぇぇぇん、怖かったよぉぉ」
ガクガクッ、と周りの奴らがズッコケていたが吉本じゃないぞ。
「君はさっきの美少女」
「この人たちが「オレ達とイイコトしよう」「お嬢ちゃんはオレ達のミルクを吸いな」って無理やり」
「ちょっ、捏造するな」
「ずるいぞ泣くなんて」
チンピラ2人が文句を言うが知ったことじゃない。
「ほう。それでここで転がってるのはナンだ?」
「それはこのガキが――――」
「その人、「おぉっと、足が滑ったぁ」と言ってスカートの中に突っ込んできたんですぅ」
「盛大にフカスなぁ~~!」
「それでこんなことになるかぁ!」
「ほうほう、それで鼻血噴いて痙攣しているのか」
「信じやがったぁ!」
「よし、こいつらをひっ捕らえよ」
「待って、それはこのガキが―――」
チンピラ2人は言い訳をしようとするも無常に連れていかれた。もちろん地面に転がっていたモヒカンも。
ただ、モヒカンは気絶しておらず、なんだかヤバ気な目で俺を見ていた。
「じゃあ、俺はここで―――」
「まぁ待ちなさい」
立ち去ろうとしたら女騎士に捕まった。
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