第2話 最初の町 その7

 痛い名前の話をされてからサービスの白兎のステーキをしっかり頂いて部屋へと上がった。

「ふい~~~~、喰った喰った」

 パンパンになった腹をさすりながらあてがわれた部屋に入る。

 部屋は年季が入っているが手入れが行き届いている綺麗な部屋だった。

 明かりは1階のフロアにもあった火を使わないやつだった。

「ツインか――――」

 ベッドが2つある通称ツインルーム。しかし1人で2人分の部屋代を払っていると思うと損した気分になる。

「————今度女でも連れ込んでみるかな」

 【ファーストファンタジー・オンライン】は全年齢だったがアダルトモードは実装しているのだろうか。

 自分の体を触った感じでは規制はかかってないと思う。かなりリアルな感触だった。女の子の体なんて触ったことないけど。

 ――――――――!

 そこで大変なことに気が付いた。


「女の子に成っちゃたらもう一生童貞卒業できないじゃないか!」


 落ち込んだ。

 人生で1番落ち込んだんじゃないかな。

「いいもんいいもん。女の子だから女湯に入れるもんね」

 なんて負け惜しみを言ってみる。

「———あっ、この世界で風呂は貴族ぐらいしか持ってないんだった」

 すぐに希望は潰えた。

「くっそ。これが格差社会と言うやつか。どこの世界でも持ってる奴は妬ましい、ファッキン」

 完全な八つ当たりなのだが酔ってるから仕方ない。そう酔っているのだ。だからどんな汚い言葉も仕方ない。


「それよりも貴族に負けない贅沢をするためにも強くならないとな」

 という訳でステータス確認である。

 ウインドウを開いて中身を見る。

 レベルは8、体力32、精神29、筋力30、素早さ35、器用さ30、知性28。うんうん、いい感じに上がっているじゃないか。

「———幸運8ってのは見なかったことにしよう」

 あと女子力も上がってなかった。まぁそりゃそうだろう。

 いくら体が女の子になったからと言って中身がオッサンである以上女子力とは無縁である。

 まして俺は男らしく生きようと決めているのである。それが女子力ぅ~~~?原子力以上に規制委員会の圧力が働くぞ。

 女の子は女の子らしくしろなんて前時代的なことは言わない方がいいぞ。時代はらんま2分の1だ。古い?まさか、中身が男なら上半身のポロリが許されるんだぞ。これぞ現代。

 ちなみに下半身のポロリは人間には許されない。

 じゃぁ人外ならいいのか?それはまた今度話し合おう。夜が長くなる。

 それより、コンディションは”満腹・ほろ酔い”、これ何か意味あんの?

「あとは実績の確認か。なになに―――」

 ウインドウに乗っていたのは戦闘回数20回達成で【初級戦闘員】を獲得している。

「【初級戦闘員】ってショッカーのエキストラかよ。イィーーーー!」

 報酬は1000メールだった。

「ラッキー、冒険準備に何かと入用になるし助かる」

 兎肉の買取が200メールだったから手持ちがこれで1300メールになる。

 他には―――

「アイテムを10個売却で【売り入門】か」

 もらえたのは―――。

「買取UPチケット……電気屋でもあんのか?」

 まぁ使用期限とかないし換金用のレアアイテムでも手に入れた時に使おうかな。

 その時ふと思った。

「ゲームの報酬でもらったチケットなのにどこでも使えんのか?協賛とかしてんの?」

 そこらへんをツッコんだらきりが無さそうだが、気になっちまった。

「まぁいいや、それより他の実績は―――ん?獲得したい実績の選択?実績ってコンプするために条件満たしたら自動だろ」

 首を傾げながら説明を読んでみると。

「実績の中には両立できないモノがあります。そういうものは獲得が任意です。1度獲得した実績は外すことが出来ません。選んだ実績には上位の派生実績があり、それらは条件を満たした時に自動的に獲得できます。——か、選ぶ実績によって報酬が変わるみたいだな。あと選択系の実績は他の実績の条件を満たしてなくても自動習得せず、被るやつの条件が表示されるのか」

 キャラ構成に合わせて選ばなきゃならんな。

 コンプできんのはもったいないが、アプデ―――があればだけどそん時に追加やなんかあれば飽きることは無いだろう。

「それで獲得したのは―――」


【Sの目覚め】条件:与えダメージ500以上。


【Mの目覚め】条件:被ダメージ500以上。


「目覚めないから!コレ選択すると性癖が付くの。もう何でもありだな」

 とは言ったものの――――気にはなる。いや、そっちの世界にじゃなく獲得報酬がだ。

 こんな際物の報酬なら美味しそうだから。ゲーマーとしてスキルツリーとかジョブツリーとか選ぶのが楽しいのだ。

 嫌なら無視すればいいのだが。

「———————まぁ、どっちかと言えばMだし…………」

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