第1話 異世界転性 その2
皆さん改めまして初めまして。俺の名前はエアリオです。アッルファベットでairioです。
え~~~、俺は今湖のほとりで体育座りで現実逃避という名の状況整理をしています。
まず俺の名前ですがこれはアバターネームであり俺の本名ではありません。残念ながら本名は思い出せません。本名だけでなく自分が誰か分かりません。
分かっているのは俺は自分の作ったゲームキャラになってゲーム世界に異世界転生したってことくらいです。
「わ~~い、パチパチパチ」
声に出して実際に手を叩いている。が、声は平坦で顔は笑ってない。たぶんすっごく薄い表情をしていると思う。
もともとこのキャラは表情の変化に乏しい設定だが、今は普通に俺の感情が仕事をしていない。
俺は念願かなって自作のゲームキャラに転生できたというのに今すっごく落ち込んでいた。
「ねぇ知りたい?何で俺が落ち込んでいるか」
俺の口から出るのは俺好みのハスキーボイス。なのに全然心に響かない。まるで秋の木枯らしのように寒い。
「ははは、聞いてくれよ。俺女に成っちゃったよ」
いくら話しかけても湖の魚は見向きもしてくれない。おいファンタジー、サービス悪いぞ。夢の国の映画ならここでお魚が陽気に相槌を打ってくれるところだぞ。日本語吹き替え版では山ちゃんの声で。ガンバレよ運営。
「はぁ、いやお前らに愚痴っても仕方ないのは分かっている。悪いのは俺だ」
そう、悪いのは俺だ。
ゲームキャラに転生したいと日々神様にお願いしていたけど、どのキャラにするか指定してなかったのが悪い。
「うん。決してネカマ演じて純粋な方たちを釣ってはバカにしていたのが原因ではない。………と思う」
いまいち自信がないところがアレではあるが、それより落ち込んでいたのは別にある。
「はぁ」
ため息をつきながらもう一度システムウインドウを開く。
水色のバックスクリーンの画面が開くがUIはゲームの仕様と同じだった。ここら辺ゲームと同じで助かったが、ステータス画面を開くと―――
「あぁ~~~~~~~~、やっぱりLvが1になってるよ」
頭を抱えた。
こんな時だが髪の毛の手触りめっちゃ良い。後で匂い嗅いどこ。
「体力18、精神力12、筋力13、素早さ15、器用さ13、知性11、幸運5。ステータスも軒並み初期値。しかも幸運5ってなんだよ。運低すぎだろうが。おまけにコンディション”鬱”って、ふざけんな!」
最悪である。メインアカウントほどではないもののこのキャラも相当な時間をかけて育てたのに、それが全部パーである。頭パーになる。
「ははははは」
もはや笑うしかない。
「このゲーム、装備品には装備必要ステータスがあるから集めたレアアイテムも装備できないよな」
ゲーム転生と言えば育てた高レベルのステータスとレアアイテムを用いて無双するのが目玉なのに、はぁ初期装備か。
「………がはぁ」
血を吐いた。
イメージではなくエフィクトとして実際に血を吐いた。
「か………、空っぽ―――」
試しに所持品の確認をしたらアイテムボックスは空っぽのすっからかんで、
「着の身着たままの装備品だけかよ」
俺の服は黒を基調としたゴシックドレスである。お人形さんみたいなこのアバターにはよく似合うお気に入りのユニークアイテムであった。
「———おぉう。外見だけの張りぼてかい」
その服も見た目だけで能力は何も無かった。
鬼。鬼だ絶対。俺を異世界に転生させたのは神様でなく鬼だ。鬼でないなら悪魔だ。文句があるなら今すぐ出てきて説明責任を果たせ。
「しかし返事がない。屍のようだ」
いやむしろ俺が死にそう。いや死ぬだろう。チート能力なしでモンスターと戦えと?———どうやって。
「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
以上。
俺が現実逃避していた理由です。
夢なら今すぐ覚めてほしい。
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