第18話 フリーダ女王の国づくり
「シエラの滞在先はクローディアのところでよいな。ところで伯父上までもわざわざご足労いただいた理由は?」
フリーダ女王が伯父のエルフ、アランティアに話を向けた。
「そなたが今やろうとしている壁の建設についてだ。急に森と北方を接している国々と同じく壁を築こうというのだ、われらが森の住民との関係をいかに考えているのか問うておかねばと思ってな」
アランティアが答えた。
「ああ、森に接するところに築く壁ですね。あれは瘴気をこの国に入れない仕組みを構築するためのものであって、エルフ族との関係を遮断するという意図はございませんよ」
フリーダ女王は答えた。
「瘴気をこの国に入れない?」
「はい、壁には魔石を埋め込んだ特別製のレンガを使います。わが国では魔石に魔力を込めることで、魔力持ち以外の者でも魔法の恩恵を受けることができるようになりました。また、魔法使いが存在しない場所にも自動的に魔法の効果を発揮させることもできます。埋め込む魔石には瘴気を浄化させる力を込めさせるつもりです」
それはフリーダ女王の壮大な計画であった。
森に接するところに瘴気を浄化する魔石を埋め込んだレンガの壁を建設。
まずは、王宮の背後にある瘴気の原の向こうの、森と接する一角から建設をはじめ、徐々に東西に壁を伸ばしていく。
国全体を覆う壁が建設できるのは、百年以上先になるだろう。
壁の建設と同時進行で、王宮の後ろの瘴気の原も魔石でもって浄化。
その後、そこに新たな王宮を建設。
現在王宮が経っている場所には、新たな王都を建設する予定だという。
「王宮のすぐ後ろに森があることによって、森の脅威から国を守っているのがわれらが王家であることを国全体に知らしめるのです。王宮のすぐ後ろが森となるのだから、むしろ今までより近しくなるといってもいいでしょう」
フリーダ女王はにこやかに伯父のエルフに答えた。
「なるほど、しかし、それでは森の中の瘴気の流れに変化が生じるな。壁が浄化すると言っても限界があるだろう。ふむ、この国に流れなくなった瘴気の分は、魔物退治はまだ余裕があるからよし。森の北方に流れる瘴気が増えるが……」
アランティアはしばらく考えた。
「まあ、いいか」
そしてあっさりと結論を下した。
わかっていただけたようで、と、フリーダ女王は満足の笑みを浮かべた。
その後、シエラはクローディアが嫁いだヴァイスハーフェン家に厄介になることになった。
この国の歴史や文化などもろもろのことを学びながら、時々、駐屯地や王都の病院で治癒魔法を施す日々を送っていた。
シエラが持ち帰ったメエルの種は、二年後には成人の身長程度の中木に育ち、三年目には実をつけた。
しかし、その実は、気候の違いか、はたまた土壌の違いか、シエラがいた国でなる実より小ぶりで、片手で握れる程度の大きさだった。
ただ、味は元の実より濃厚で、実がもともとなる量より多く鈴なりだったので、これはこれでいいのではないかということになった。
その果物は「メエル」ではなく「メルフル」と呼ばれるようになった。
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