第43話 報告

「そう言えばさ、まだ聞いてなかったね。颯太の能力。教えて?」

「そうだごめん! 忘れてた。それを話したくて連絡したんだった」

「ほんとびっくりしちゃったよ! 瞬間移動スキルや飛行スキルなんて凄くいい能力じゃん! それ以外にもまだあるの?」

「うん。結構色々出たんだ。言葉で全部言うの大変だから何かに書くね。えっと……」

 颯太はベッドから立ち上がると、病室の端の机の上に置いてあったペンとメモ帳を手に取った。そして机の上で自分のスキルを全て書いていった。

「はいっ! これ」颯太は自分の使える能力が書かれたメモをみずきに渡した。

 そこには以下の内容が書かれていた。


 ①防御力強化四倍スキル 緑茶を飲むと発動

 ②透明化スキル     ほうじ茶を飲むと発動

 ③火属性スキル     紅茶を飲むと発動

 ④透視スキル      ジャスミンティーを飲むと発動

 ⑤瞬間移動スキル    玄米茶を飲むと発動

 ⑥敏捷性強化六倍スキル 烏龍茶を飲むと発動

 ⑦攻撃力強化八倍スキル 麦茶を飲むと発動

 ⑧飛行スキル      コーン茶を飲むと発動

 ⑨読心スキル      黒豆茶を飲むと発動


 ・同時に使えるのは四種類まで。

 ・制限時間は飲んでから一時間

 ・お湯を飲んだらスキルはリセットされる。


「えっ? なにこれ? 全部で九種類もあるじゃん!」

 みずきはスキルの一覧を見るとすぐに顔を颯太に向けた。眼を大きく見開いている。

「ああ。勘違いしてたんだ。緑茶だけじゃなくて、他のお茶でもそれぞれ別のスキルが出たんだ。」

「そうなんだ。ふふっ、なんか笑えて来ちゃうね。防御力強化しか出なくてあんなに落ち込んでたのに」

「ごめん。あの時は心配をかけた」

「ほんとだよ~。あの時颯太、死んだような顔してたよ! ほんとに心配したんだから」

「まじでごめん」

「良いよ。本当に良かったね!」

 みずきは心から祝福してくれているように微笑んでいる。それを見ると颯太も嬉しくなった。


「本当にすごいね! どれも大当たりのスキルじゃん。瞬間移動スキルってめちゃくちゃレアなんでしょ。羨ましいなぁ~。どこだって一瞬で行けちゃうじゃん」

「まあ条件はあるんだけどな」

みずきは颯太から渡された紙をじっくりと見ている。


 しかし、あるスキルに眼をとめると、急に怪訝な顔をする。

「そうなんだ。って、なによこれ? 透視スキル? もしかして透けて見えるの」

「うん。大体の物は透けて見えるよ」

「なんかいやらしいスキルね。もしかしてこれ使っていやらしいことしてないわよね?」

みずきは疑惑の視線を送ってくる。やっぱり書かない方が良かったかと颯太は少し後悔した。


「そんなことするわけないだろ。犯罪者になっちゃうじゃないか。仕事の時以外は使わないよ」

 女性としてこういう点が気になるのは当然だろうなと思いながらも颯太はきっぱりと否定した。そして飛鳥と有希に間違えて使ってしまったことは永遠に秘密にしようと心に誓った。

「あと読心スキルって何?」

「ああ、それもやばいスキルなんだ。近くにいる人の考えていることがわかるんだ」

「すごいスキルね! 使いようによってはいろいろ使えそうだけど。犯罪者の捜査するときとか」

「そうだな。正直まだよく使いこなせてないんだ。スキルが判明してからまだ一度も使ってないよ」

「使いどころは難しいかもね」

「ああ」


みずきはしばらく紙を眺めると、満足したのかそれを颯太に手渡しながら口を開いた。

「いやぁでも、本当にどれもすごい能力だわ。同期の皆も驚くよきっと! 私以外には言ったの?」

「いや、大河には言おうとしたんだけどさ。なんか忙しそうだったからやめた」

「そうなんだ。まああいつ忙しそうだもんね。いいんじゃない今度言えば。そう言えば昨日つけてたマスクとゴーグルは何なの?」

「あれは正体を隠すためなんだ。会社の方針でさ、正体不明の能力者の方が謎が謎を呼んで会社の知名度が高まるんじゃないかって」

「そうなんだ。良い作戦かもね。確かに気になるかも」


「でも本当に良かったね。努力はちゃんと報われるんだね。おめでとう」

みずきは颯太の能力を知って心から安堵したようであった。わずかに涙を流しながら颯太をそっと抱きしめてくれた。


♢       ♢       ♢


「あっ? 私そろそろ帰らないと。洗濯とかまだしてなかったし」

しばらくして時計を見たのかみずきがそう口にした。壁にかかている時計の針は午前九時を指している。

「ごめん。じゃあ俺も帰るよ」

「颯太はまだ退院できないよ。お昼までは念のため入院して安静にしておくように医者が言ってたし」

「そうなのか? でも、俺がいないと家に入れないよな」

「確かに。そうね」

「送っていくよ。瞬間移動で。悪いけど売店かコンビニで玄米茶買ってきてくれないか?」

「良いの? オーラがまたなくなっちゃうじゃん」

「良いんだよ。今日はしっかり休むから大丈夫。もう仕事はしないよ」

「ありがとう。ちょっと行ってくるね」


数分後、みずきが玄米茶のペットボトルを持って病室に戻ってきた。

颯太はそれを飲むと、みずきの手をつかんで家まで飛んだ。


みずきはすぐに荷物をまとめると、玄関に立った。

「あの、みずき。本当にありがとうな。助かったよ」

「颯太もよく頑張ったね。スキルのことも教えてくれたありがとう。また私の力が必要だったら言ってね。私も一人でも多くの人を救いたいから」

「ああ。助かるよ」

「埋め合わせを忘れないでね。お泊り会と遊園地だからね」

「わかってるよ。任せて」

颯太の言葉を聞くとみずきはとっても嬉しそうに微笑んだ。

「じゃあまたね」

そう口にするとみずきは帰って行った。


颯太はすぐにスキルを使い、病室に戻った。








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