第212話 仕上げ

中間テストを終えて部活の方がいよいよ大詰め!

6月末に行われるインターハイ県内予選が迫っている。

テスト期間が終わり3年生たちは怖いほど気合いが入り、この大会に賭ける思いがビリビリ伝わってくる…!


特にキャプテンと愛莉先輩のふたりはそれが強い。


キャプテン『宏介!そこは厳しく行ってイイ!仲間信じろ!』


『…うっす。』


球際だけじゃ無くパスも厳しいところを攻めろ!って無茶振り。

それでロストしたり、受け手がって思っちゃうけど…キャプテンは日に日に要求が厳しくなる。




愛莉『…絶対無理しないでね。ここまで来て怪我したら意味無いでしょ?

焦る気持ちはわかるよ?』


キャプテン『あ、あ、あぁ…。』


練習の一区切りにドリンクを配ってまわるマネージャー。

愛莉先輩が怒らずにキャプテンに釘を刺す。

キャプテンは赤くなりながら頷く。

キャプテンはキラキラした笑顔で、


キャプテン『大会前に無理すんなよー!』


愛莉先輩の癒し効果すごい。



☆ ☆ ☆

練習後、


愛莉『…ってわけなの。

いつも調子良かったら最高だよね?』


熊田『そんな事出来るんですか?』

鷲尾『気持ち一つで?』


愛莉『それを自分でコントロール出来るようにするのがメンタルトレーニングなのね?

連続で点決めたり調子良い時はそれを持続したいよね?

逆に連続で外したりミス連発した時…その流れ切りたいよね?』


皆んな頷く、


愛莉『人には性格があるよね。

勝負強い人、本番に弱い人、ここぞ!って時に強い人、逆に弱くなっちゃう人。

…メンタルは、習慣や考え方で鍛えられる!

性格が180度変わる!なんて言わないよ?

でも良い調子を維持したり、調子悪いのを良くしたり自分でコントロールする技術なんだよ!』


『『『おお…。』』』


愛莉『プロのスポーツ選手や競技団体。

最近は企業も取り入れているからね。学んで置いて損は無いよ!

お姉さんと一緒に学んでいこうね?』


にっこり愛莉先輩に部員一同は良い返事をした!!


愛莉先輩は順を追って説明する。


目標の設定:自分の理想を描く

リラクゼーション:緊張せずに気持ちをコントロールする。

イメージトレーニング:成功するイメージを持つ。

集中力:本番で集中できるようにルーティン化する

プラス思考:どんな場面でも前向きな気持ちでいられるようにする

心理的準備:本番を想定した準備を行いメンタルを整える。


愛莉先輩の話しはスッと入って来る。

綺麗な優しい声にもう癒し効果が…。


愛莉『メンタルが全てじじゃ無いし、万能じゃないよ。

でもトレーニングにプラスになること、人生にプラスになる事が少しずつある。

その微差が長い時間で大差になるの…。

次回は目標設定とその為のプロセス♪』


一礼する愛莉先輩に部員は拍手!


愛莉『も、もう!止めて!

止めてよー!』


真っ赤になってブンブン両手を振る愛莉先輩は大層可愛らしくて部員は大喜びで拍手を続けていた。


☆ ☆ ☆

『…今回もいいお話でしたね?』


愛莉『もう!お姉ちゃんをからかって!』


全然痛く無いぐーぱんが俺の肩に当たる。

俺はいつもお世話になってる愛莉先輩にメンタルトレーニング講習助手に任じられている。

むしろ皆んな我が我がと名乗り出てキャプテンを始め10人が名乗り出るしまつ。


『キャプテンや三年生は悔い残さないように雑務はしなくていいよ。

うーん…宏介くん!君に決めた!』


『…ういっす。』


鷲尾『いや、こうゆう雑務は一年がやるべきです!』

熊田『同感っす!』


…コイツら当初さ?女子マネがメニュー決めてんの?って舐めてたクセに…

今は狂信的な愛莉教の信者。

まあ一年がやってもいいか?



愛莉『お姉ちゃんと弟くんはずっと二人三脚でやって来たから?

宏介くんが良いの♪』


うふふ♪って笑う愛莉先輩逆らう者などバスケ部には居ない。

俺は助手をやっている。



メントレ講座で使用した映写機を片付けながら、


『…いつからこんな勉強してたんですか?』


尋ねずにはいれない。


愛莉『うーん…前々から必要じゃ無いかな?って思って勉強はしてたのよね?私の志望はスポーツトレーナーやコーチング業みたいな?

…でも、私は弱い…それを最近思い知ったからかな。』


愛莉先輩はすごいよね。

マネージャー業に加えて部員のケアにこんなことまで。

素直にそう思ってること、尊敬していることを伝えると、



愛莉『そんなこと無いよっ!褒めないでっ!恥ずかしい…!

宏介くんの方がすごいよ。

私特進だけど20位代だし、運動神経へにゃへにゃだし、落ち込んだり色々あったし…。

宏介くんは色々あったけどずっと頑張って来た。私は去年からそれを側でずっと見て来た…。』


『…そんなこと無いですよ。

褒めないで…恥ずかしいです…。』


愛莉先輩はクスクス笑いながら、


愛莉『私の真似して♪』


でもね、愛莉先輩はしっかり俺の目を見ながら、


愛莉『宏介くんは私の言う事をずーっと聞いてバスケ頑張ってくれた。

…トレーナー志望としては嬉しくて楽しい時間だったよ。

だからね…この大会で集大成を見せて?』


『…必ず。』


愛莉先輩は慌てて、


愛莉『あ!プレッシャー賭けるつもりじゃ無かったの!

相手も居る事だし、勝負事だからね。

成績じゃ無い、私とのこれまでを出し切って来てね?』


愛莉先輩は瞳を潤ませながら、まるで祈るかのように胸の前で両手をキュって握った。


『…必ず。』


俺は頷き続ける。


『俺と愛莉先輩の絆見せてやります。』



愛莉『ぴゃ!きずな?!

絆って…そりゃ…確かに…繋がり…。』


『…。』


愛莉先輩のリアクションに恥ずかしい事言ってしまった!って俺は慌てる!

でも、そうとしか言えない。


昼休みに承とかとしてたバスケが楽しかったからって理由でバスケ部に入部した素人の俺を付きっきりで厳しくも優しく育ててくれたのはこの目の前の先輩マネージャー。

焦らず丹念に基礎とフィジカルを見てくれた。

細かい事まで納得いくまで教えてくれて俺はいつも愛莉先輩に…。


師弟関係?姉弟関係?

俺と愛莉先輩の関係は他人が見てもイマイチよくわからないらしい。

でも、根本にあるのは揺るぎない信頼関係で…

俺、愛莉先輩を尊敬している。



『先輩の為にも必ず勝ちます。

引退が遅くなっちゃって困るほど勝ち続けていきます。』


ぽむ!

愛莉先輩が俯きながら俺の胸をたたく。


愛莉『もう!うれしいこと言うから!

なみだ出ちゃったでしょー!

責任とってよね?宏介くん!』


愛莉先輩はにっこり笑いながら大きな瞳から涙をポロポロこぼしていた。

俺はその光景から目を離せない…。


その後、中間テストで勝負に勝った話しや親友の承のこと、前にダブルデート

(!)した紅緒さんと愛莉先輩がお茶した事、康司が最近良くなって来たことなど話しながら途中まで一緒に下校した。


愛莉『また明日ね♪』


愛莉先輩は俺が見えなくなるまで小さく手を振ってくれた。

いよいよ三年生にとっての最後の大会が近づく…!

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