第207話 心のトレーニング

日曜日に前回と同じファミレスで勉強会する事になった俺たち。

中間テストが終わる頃にはバスケ部はインターハイの県予選の追い込み時期になる。

今日の部活が終わると中間テストのテスト期間に入り部活はしばらくお休み。


追い込んで追い込んでフィジカルメニュー主体のきっつい練習。

明日からしばらく休みだもんね…。


今日が最終日だけど…もっといっぱい練習したい!

テスト期間に勘は鈍るし絶対調子落ちちゃうから!


特に最後の大会を控える三年生はそれが顕著。

時間を惜しんで練習をしたがりややオーバートレーニングに見えるけど…どうせテスト期間あるからって思ってるんだろうし、わかるって思ってた。


いつもより早めの練習終了!


コーチ『今日はフィジカル中心でキツめのメニューだったからコレで終わり!

今日は居残り練習も無しな?』


ええ?!

三年を中心に不満の声が上がる。

無理も無い、もう後わずかだし練習したいよね。


コーチは続ける、


コーチ『代わりにコレからモニター室へ集合!30分座学をやる!』


は?座学?

バスケの試合でも見せてくれんの?


練習はフィジカルメニュー多めだったので疲れてるのも事実でみんなでワイワイ着替えながら『疲れたー!』とか言いながら教室棟の大型モニターがある部屋へ集合する。

大きなモニターに扇形の座席が連なるルームにバスケ部員30名ほどが集いまとまりなく話し始める。最近懐いてきた一年ふたりが側に居る。


鷲尾『宏介さん、こうゆうのたまにやるんすか?』


『…初めて。』


鷲尾は同ポジだから俺に懐いてる後輩。

…俺が一年の頃より絶対上手い。


熊田『…部活終わりに座学はキツく無いっすか?寝ちゃいそうっす。』


『…わかる。』


熊田は大型新人で190cmある。マジ羨ましい…!

少し単純だけど真面目で素直な気質。


コーチが大型モニターの前で今日何するか?

を説明してくれた。


色々な指導方法や他校の練習、プロのチームの話しを聞いて一個取り入れたい練習があると言う、



コーチ『それが今から行う、メンタルトレーニングになる。

…私も興味あったけど具体的に提案を受けてこの時期に導入を決めたんだ。

はい拍手!本日のメンタルトレーナー天堂愛莉先生です!』


パチパチパチパチ!!!

訳がわからないまま愛莉先輩の名前に拍手を始めるバスケ部員!




愛莉『やっ!やめてよー!』


真っ赤になって壇上に上がる愛莉先輩。

衣替えで変わったばかりの夏服がキュート。

その姿を見て熱狂的に拍手する部員たち。



愛莉『やめて!だめ!』


我が部の綺麗なお姉さんには皆んな弱い。

ぷんすこ!って様子に皆んなデレデレ。


こほん!咳払いをして愛莉先輩は俺たちに語りかける。


スポーツのみならずメンタルは人間の調子に大きく影響を及ぼしている。

心技体どれが欠けてもダメだけど心が1番取扱いが難しく、全てに影響が出る。

私と一緒に自分の心の取扱いと持ってる力を発揮出来るように頑張ろう?

心もトレーニングする事で強くなり、本番で実力を発揮出来るメンタルの強さを養おう!


シーンとする室内、愛莉先輩は心細いって様子で辺りを見渡す。

俺と目が合う。


初回の今日はプラス思考の話し。

ポジティブ思考には、ストレスや不安を軽減し、メンタルヘルスを改善するなど多くのメリット!

前向きに物事に取り組むことで、困難な状況でも挫折に強くなり、創造性やモチベーションが高まります。また、人間関係が良好になり、周囲からの信頼やサポートを得やすくなる!



最後にデメリットの話し。現実的な問題点や危険性を見落としてしまったり、過度に楽観的になってしまうことで、適切な準備や対策を怠ってしまうリスクがネガティブ思考の人よりも増加します。


愛莉『…だからね?考え方を変えればバスケも勉強も自分のため!って取り組めるようになる!そうすればもっともっと!皆んなは強くなる!』


次回は目標を明確にすることとモチベーションの維持!って宣言して第一回メンタルトレーニングは終わった。


終わって、部室に荷物を取りに帰ると愛莉先輩に出会った。


愛莉『皆んながあの後色々聞きに来てくれて大変だったよ!』


大変だったって言葉と裏腹愛莉先輩はすごい嬉しそう。


愛莉『皆んなに恩返ししたいもん!

全て出し切りたい!』


愛莉先輩はいつもキラキラしているけど最近その輝きが強い。



愛莉『…ちょっと前、私が色々…中傷されてた時期があったじゃ無い?

…あの時、皆んなが私を守ってくれた。

私はもっと強くなりたかったの。』


そして辿りついたのは…メンタルトレーニング。


自分の精神の強化と深化。

バスケ部の強化と部員のメンタル。

皆んなの役に立ちたい!


愛莉先輩はいつも皆んなのことを考えている。

その思いに感動してしまう。

なんて良い娘さんなんだろうね。



愛莉『でもね、これはきっと宏介くんに役に立つ。』


愛莉先輩は嬉しそうに俺の手を取る。


愛莉『簡単に治るならトラウマやイップスなんてならない!

それでも人は心と付き合っていかなきゃいけない。

宏介くんの為にも。』


イタズラっぽく笑う愛莉先輩は無理しないで良いよ?って前置きから今後のメンタルトレーニングを部活で指導して行く事と俺のカウンセリングとまではいかないけど面談して話し聞いたりコーチングしてくれるそうな。

…愛莉先輩は少し前からこの勉強をしていたそうな。

スポーツチームにも今はメンタルトレーナーやカウンセラーは常駐しているらしく興味があったって。

うちのチームメンバーも愛莉先輩の言う事なら1も2も無く従うだろう。


明日からテスト期間!そう言えば俺中間テスト人と勝負するんですって言うと、

愛莉先輩はそうそう!去年の過去問あるよ?

って言って去年のテストの過去問とノートを貸してくれると言う。



愛莉『宏介くんは可愛がってる弟みたいなものだからね!

中間テストがんばれ♪努力して勝つ!コレに勝る成功体験はないよ!

特別面談付きでメンタルトレーニングも付き合ってあげるね♪』



愛莉先輩はニコニコで大層ご機嫌!

…バスケ部の癒しの異名を取る愛莉先輩に頭が上がらない!

俺はこの面談付きメンタルトレーニングで自分の心と向き合って行くことになる。

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