第204話 あだ名

6月1週、登校時の新川駅。

朝、駅構内は人が多い。

歩きながら田中くんが思い出したように俺に教えてくれた。


田中『…そう言えば宏介くん聞いた?山本くん辞めたらしいよ?』


『え?山本って留年した?』



俺にとっては去年クラスメイト。…そして皐月を取られた相手…色々あったけど…そっか。

退学したのか…。

校内では皐月と一緒の姿より永瀬さんに付き纏う姿の方が見た気がする。



田中『…なんか5月入ってから全然学校来てなかったらしいし。

…出席日数もうアウトだったみたいで。

昔はすっごいお金持ちキャラだったのにね…。』


山本の実家があの大手中古車販売チェーンの問題発覚から芋づる式に不祥事がダダ漏れで一瞬で崩壊したんだよね…確かピッグモーター。


人はわからないものだよね…!あんなに羽振りよくてゴージャスにオラオラしてた男が…。

なんでも先週の事らしい、知らなかった。

…皐月…いや良いか?思い出しかけて止めた。


ぽん。肩を叩かれて振り返ると皐月が居た…!


『…なに?』


皐月『なに?ってご挨拶ね?宏介?』


ここ新川駅はお互い最寄り駅。

そりゃたまに居合わせることもあるけど基本時間ズラしてたし、視界に納めてもお互い距離置いてたから話す事なんて無かった。

…それが?なぜ?



皐月『少し聞こえちゃった♪

そうゆう事なのよー。正輝は辞めちゃった。

そんなわけで私たちの先週別れたのよね。

だからもう遠慮は要らないわよ?』


クスって笑いながら皐月は俺にイタズラっぽく話しかけてくる…!

ゾワって鳥肌が立った…!


田中くんが慌てて間に入った、


田中『三島が遠慮しろよ。よく話しかけれるな?』


田中くんキレてる!そんな言い方しない男なのに。

皐月はクスクス笑いながら、


皐月『私と宏介の仲でしょ?

もう前の事は気にしなくって良いってだけ伝えたかったの。』


ざわって血の気が引く感覚がある。

コイツの中でアレは気にしなくて良い事柄らしい。

※アレ=丁度一年前、交際中だったのに処女違う男にあげた!ってこっぴどく振って笑ったこと。



『…。』


言葉も出なくて青ざめていると、



皐月『宏介頑張ってるよねー♪

アレから一年…宏介頑張ったし?ようやく私に釣り合う男になったね♪』


田中くんに言わせちゃいけない、自分で…!


『…もうお前に興味無い。

失せろ。』


田中『ビッチボッチが…!』

※皐月一年時ぼっちだった頃のあだ名。


皐月は肩をすくめてホームの1番後の方へ歩いて行った。

田中くんはキレ散らかしてる…!


田中『あのビッチボッチが最近なんて呼ばれてるか知ってる?』


『…いや?』


田中くんは確認するように、


田中『そもそも宏介くんと付き合ってたことは北翔でも知る人は知ってるじゃない?』


俺は頷く。


『山本だって成績悪く無かったし、サッカー部で活躍してたじゃない?

でも、去年の今頃宏介くんはフラれて山本と付き合いだした…。

そんなに経たないうちに2人は明暗クッキリ。

宏介くんは今や特進クラスで部活もレギュラーで県ベスト8の立役者で生徒会からも注目されてる。

一方…。』


田中くんはニヤリと笑って、



田中『山本はさ、三島と付き合ってから成績落として、実家が不祥事!テストも散々!補習も出なくて留年!サッカー部も留年すると公式戦出れなくなるから退部!そして…今回退学…。

三島皐月は死神ってあだ名付いてんだよ?』


『…ぷふー!』


ちょっと笑ってしまった。

死神って(笑)


田中『三島が離れて宏介くんは運が向いて来た。もちろん努力の結果なんだけど今は皆んなが認めてる!

でも山本は転げ落ちるように…そして退学…明暗クッキリだね…。』



皐月…死神なんて呼ばれてんのか…。

関わる気は無いけど誰か教えてやらないのか…。


後ろ姿だけは良い女ムーブで皐月は電車を待っていた…。



☆ ☆ ☆

昼休み。



皐月『くちゅん!』


ゆかり『皐月?風邪?』


日奈子『ビッチ先輩噂されてマス?』


皐月『噂されてるかもね?』

※ゆかり以外友達居ないから死神って呼ばれてる事知らない。


ゆかり『それならいいけど?』

※皐月以外友達居ないから皐月に死神なんてあだ名付いてる事知らない。


日奈子『どうせ良いウワサじゃナイですよ?

※クラスで浮いてるから当然知らない。』


あははは!昼休みの中庭は平和だった。

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