第203話 区切り【side三島皐月】
九頭『…じゃあ…さよなら。
元気でね?』
ゆかり『…九頭くんもね…。』
5月4週九頭くんが学校を去った。
…色々やらかして無期限停学だったけど、ついに自主退学を選んだ。
なんでもテニス部の練習参加生に掴み掛かって…そこから過去のナンパや飲酒や女の子を泥酔させて…!みたいな悪行がバレたんだって。
…前々からゆかりには相応しく無いって思ってたので良かったって思う。
一応揉めるといけないから私が付き添ったけど…あっけないものだった。
このふたりだって去年の秋頃は北翔高校一有名で人気者のカップルでミス北翔と王子の異名を持った華々しい有名カップルだった。
今1人は退学、1人はひっそり学校生活を送っている。
でもさ!一区切り!
必要でしょ?人生には精算や区切りが!
ゆかり『…。』
ゆかりは最近少し痩せてきた。
まだぽっちゃりはしているけど出会った頃位にもうすぐなりそうな感じがする。
福々しいゆかりも綺麗だと思うんだけどゆかりの自由だよね!
あんな彼氏でもゆかりは心配して、行く末を案じている。
ゆかりは優しい。でもそんな価値無いでしょ?クズに。
今日は甘やかして、俺カレ奢ってゆかりに寄り添ってあげるんだ。
私はゆかりを慰めながら、2つ先の東光駅の近くの俺カレへ向かったのね。
☆ ☆ ☆
ゆかり『…っ、おいし…。』
しょんぼりしつつもゆかりは俺カレでハンバーグカレーを味わうように食べてくれる。
良かったー!
幸い宏介の親友の立花も今日はバイトしていない。
クズくんは残念だったけど仕方ないよ。
在学中別れないって約束だもん、退学したらむしろ別れた方が良い!
ゆかりが悪い訳じゃ無いでしょ?むしろクズが事件や犯罪的なことしてんじゃん!
慰めるけどゆかりは寂しそうに微笑むばかり。
ゆかりは本当に優しい!
クズにそんな価値無いって!
事件起こして退学するなんてゆかりにふさわしく無い!
力説する私にゆかりは心配そうに、
ゆかり『そう言えば…皐月は山本くんとアレからどうなの?』
『…正輝…。
うーん、最近学校で見ないんだよね…。』
そうなの!ゴールデンウィーク後に正輝は学校に来なくなった。
何で一個下と混じって勉強しなきゃいけないんだ!
あいつら俺に敬語使わない!
二年生に会うとしんどい…!
そんな愚痴ばかり聞かされて最近は全く会わなくなってて…。
ゆかり『…皐月の気持ち次第だけど素直に後悔無いように…ね?』
ゆかりのまっすぐな瞳に私は頷く。
素直に後悔無いように…。
私は思い立って電話をかける。
30分後、
正輝『皐月?珍しいな?こんなところで…。』
正輝に来て貰った。
ゆかりはびっくりしてる。
だよね?
『ね、ゆかり。
私もさっき立ち会ったじゃない?ゆかりも少し付き合って。』
正輝は何事か?って顔してるけどわかんないかな?
『ね?正輝そろそろ付き合って一年になるね?』
正輝『…もう6月になるしな…。』
『色々ありがとうね、私たちこれ以上一緒に居ると良く無いって思うんだ。
正輝、私たち別れよ。』
正輝『はあ?!』
ゆかり『皐月?!』
ふたりしてびっくりしてる!
でもね、前々から考えてた事なの。
何度か正輝と別れ話してたけど正輝は了承しなくて泥沼化してたのね。
学校で人に見られたり!
今日ここなら学校の生徒の目は無いしお店だから第三者の目もあるし!
ちょうどゆかりも今日彼氏と別れたし私もついでに今日区切りをつけてしまおう!って思ったのよね!
正輝『何で?こないだ別れないって事で…。』
『学校で騒いで目立っちゃったから話し合いが出来なくなっただけでしょ!』
正輝『でも…なにがそんなに不満なんだよ…。
確かに前ほどしてやれることは無いけど…でもずっと一緒だったろ!』
ふう、嫌な事言いたくないわ。
でも仕方ない、今回で区切り付ける為、言っちゃお!
ゆかりは口も挟めず黙って見てる…。
ごめんね、居てくれるだけで心強いから少しだけ付き合って?
私はゆかりに微笑むと正輝に向き合う。
『…そもそも正輝が留年するような彼女恥ずかしいって言ったじゃん?
私、留年した彼氏恥ずかしい…!』
正輝はビクン!って跳ねた。
『家業のピッグモーターは残念だったと思うよ。
でもさ?おうちもお金無いし大変みたいだし今は女の子にかまけている暇は無いんじゃない?』
『…。
なんか1発当たれば…1発当たればまた前みたいに羽振り良くなって良い思いさせてやれるから!』
私はため息を吐くと、
『じゃ1発当てて羽振り良くなったら、また迎えに来て?』
だってそうでしょ?
むしろ苦労かけちゃうから私に気を使って身を引くくらいして欲しかった。
正輝は泣きそう…いやちょっと泣いてた。
泣きながら、
正輝『…でも、俺たちにも一年あった。
この一年は一緒に居たじゃ無いか!そんな簡単に捨てんのか?
誰か別の奴に行くのか?!』
『…誰でも知った事じゃ無いでしょ?』
正輝『俺たちの一年ってそんなもんだったのかよ…!』
ふう、まるで私が悪いみたいな言い方するのよね。
男だったら全部俺が悪いって謝ってくれる度量が欲しかったよ。
『宏介とは四年以上だしね。
一年未満とじゃ比較にならないわよね。』
正輝『宏介?!斉藤宏介とヨリ戻すのか?!』
正輝…店内の注目集めちゃうでしょ!
ゆかりもびっくりして目をまんまるくしてる。
『これからまたアピるわ。
昔からずっと一緒に居たし、別れる時も未練タラタラだったし?
誠心誠意ごめんってすればなんのかんの宏介は私が好きだからなんとかなると思うのよね♪』
正輝は無理だろ!とか考えなおせ!とか言っているけど、
今の宏介が特進クラスで部活も急上昇中のバスケ部の中心メンバーで生徒会からも勧誘されてる注目の二年生って話をする。
…正輝と比較しながら。
日奈子の話し聞いてもそれを確信した。
今、宏介は文武両道で結果を出してるクールなイケメンって女子で評判!
回り道しちゃったけど…まだ遅くない!
そんな話しをすると、正輝は項垂れた。
…魅力無くなったね…。さすがにそれは口には出さない。
正輝『…わかった、別れよう…。』
『うん。』
俺カレを出て別れた。
『じゃあね!』
正輝『…本当にそれで良いの?』
しつこいなぁ…最後のは聞かなかったことにしてあげよう。
ゆかりと一緒に駅まで歩く。正輝とかち合うのが嫌だから回り道してゆっくりと。
ゆかり『本当に良かったの?』
『うん!どうせならゆかりと一緒が良いし!』
ゆかり『…本当に宏介くんとヨリ戻すの?
無理だと思うけど…?』
『宏介は私と別れてから彼女居ないしまだ未練あるんだと思うな。
まあ長い付き合いだし?ちゃんと謝れば…?』
ゆかり『絶対迷惑かけちゃうよ?
拒否されたら絶対諦めなよ?』
ゆかりは何故か宏介に気を使う。
だったらクズと付き合わなきゃ良かったのに…。
ま、良いでしょ?
今日で私もゆかりも一区切り!
お互いフリーなんだし誰に遠慮も要らないでしょ!
翌週、正輝が退学届けを提出した。
…GW後休みがちだったから出席日数がもう限界だったらしい。
今年も留年って可能性がチラついていたんだって。
一年前にはこんな事になるなんてわからなかったよね。
人はわからない。
☆ ☆ ☆
山本正輝 退学!
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