第199話 お土産と忘れ物
望『そうゆう訳でさ?修学旅行超楽しかったの!』
今日は部活無くって16:30頃家に着いたら丁度望が家に訪ねて来た。
うーん!って伸びながら望が制服姿のまま俺の部屋でくつろぐ。
ほんとつい今さっき戻ってきて目の前の中学校で解散したらしいんだけどそのままお土産持って家に来てくれたんだね、生八ツ橋。
神社仏閣の話に友達のロマンス、哲学の道の決闘まで話は多岐に及ぶ。
懐かしいな…望が修学旅行…俺も…皐月と…。
いけない、望の話しに意識を戻す。
『…楽しかったんだろうけどトラブル多く無いか?』
望『そんなことないよ!
自由行動後は楽しく和気藹々!
…でも旅館の子どもだけ…気になる…。』
おばけ苦手な望にはショッキングな出来事。
話題を変えようとお土産の八ツ橋の話をしているうちに承が来た。
望『兄ちゃん!ありがとー!あたしもう荷物持って帰るのしんどくて!』
承『お前また宏介に迷惑かけて…ごめんな宏介。』
もう限界まで遊んだ望はバッグなどの荷物持って帰れないほどバッテバテで兄を迎えに呼んだ。それ待ちでもあった訳だね。
それより承だよ。
先日の承とは発するモノが違う。
…吹っ切れたのかな?
優しい目で乱暴に頭を撫でる承に撫でられて、えへへ♪ってにこにこする望。
承が帰り際、優しい笑顔と決意の瞳で、
『ちょっと相談したい事がある、近いうちに時間ある?』
もちろん俺は了承した。
…吹っ切れたってより走り始めたんだなってわかった。
熱い。
久しぶりの親友の熱に俺も熱くなる。
何か見つけたのかそれともなにか気づいたのか相談してくれる日が楽しみだった。
望に近々例の事件の最終報告でまた北翔のテニス部顧問とかが挨拶に来るよって伝えて立花兄妹と別れた。
承『…望が怖がるからわざと返信しなかったんだけど…お前しか写ってない写真で旅館の子どもってなに?』
望『…おばけはほんとにいた…。』
望はひーちゃんみたいになっていた。
☆ ☆ ☆
5月4週平日放課後。
俺は生徒会室に呼ばれた。
小佐田さん、田中くんも一緒。
一ノ瀬『やあ、済まないね?
わざわざ時間を作ってもらって。』
一ノ瀬会長が笑顔で俺たちを迎えてくれる。
生徒会は三年の女子の副会長、書記の永瀬さん、同じく書記の2年男子も同席していた。
一ノ瀬『…今日お呼びしたのは先日の事件、女子テニス部練習招待生に掴み掛かった事件が発端で余罪が出た九頭くんの処分に関する話しなんだ。』
田中くんが入室するなりカメラ回そうとして止められるわけだよ…。
田中くんソワソワしないで。
小佐田さんはクールに微笑んでいる。
一ノ瀬『来週の月曜日には知られると思うけどもそれまで内密にお願いしたい。
事件に、事件の被害者に関係ある君たちにはいち早く知らせることにする。』
会長はこほんと喉を鳴らすと、
一ノ瀬『九頭達雄くんは今回の外部の中学生に掴み掛かった事案だけでは無く、公共の場で度々異性に付き纏い事案がありました。
昨年は当校女子生徒と宿泊施設に度々入場するところを撮影され停学処分にもなりました。』
室内は静まりかえる。
緊張感がある。
一ノ瀬『小佐田さんと田中くんの撮影した動画内の九頭くんの口頭での度々に及ぶ飲酒や不同意性な異性交友の自供があり、本人に聞き取り調査を行った上で飲酒は自供。
…酔っている女の子に乱暴は否定したけどスマホにはね、酔って衣服が乱れた女性写真は何枚か確認したんだよ。』
話の途中から一ノ瀬先輩がキレたように言葉使いが普通に戻った。
一ノ瀬『ここからはただの三年生一ノ瀬司の私見。
あんなのはグレーだけどほぼ黒だ。
あんなのが同じ学校だなんて俺は我慢ならない!』
クールな会長が吐き捨てる様に言い切った。
それは同意する。
小佐田さんも田中くんも横で頷く。
にこって笑って一ノ瀬会長は、
一ノ瀬『取り乱したね、
二年生進級時の成績、過去の停学事件。
そして今回のこの事件と明るみに出た諸々。
…学校側と生徒会は九頭達雄くんに退学勧告をしました。』
三年女子の副会長が補足する。
副会長『…本人は学校に留まる事を懇願してきたんだけどね。
諸々の余罪を追求している間も停学期間は続くのね。
すぐ復帰させる前提の処分じゃ無くて黒かグレーか見極める無期限停学だからハッキリ最低でも黒じゃ無いって断言出来るまで停学は明けない。』
会長や書記も神妙な顔で頷く、
副会長は続ける、
副会長『…そうしているうちに出席日数で留年が確定する。
そして具体的な証拠が出ないだけでほぼ真っ黒。彼はグレーを主張していたけど…。
一応グレーの九頭くんに対し学校側は留年と一応の退学勧告という処分。
生徒会は強い退学勧告を勧めました。
生徒会始まって以来の出来事です。』
一ノ瀬会長が最後に締めた、
一ノ瀬『…居るだけで学校の品位や評判を下げる生徒は百害あって一利無し。
可哀想だけど何の関係も無い生徒の風評被害で黙って頑張っている生徒が不利益を被るのは看過できないし許せない。
…先ほど九頭くんから電話があり、彼は自主退学を選びました。』
退学になるより自主退学の方が他校に入り直す際まだマシな気はするけど…。
…そうか…そうなったか…。
一ノ瀬『…それでね?小佐田さんと田中くん?
君たちの調べモノで聞き取りや調べる事がすっごく進んだんだ。
協力感謝してるし本当に助かったんだ。
…でもね?そういった事出来れば教員もしくは生徒会に言って欲しい。』
ごめん、助けて貰って釘を刺す様なモノ言いでって前置きして一ノ瀬会長は個人が個人を罰するような事は基本出来なくて法治国家日本では法が裁くしその為の機構がある事。学校だったらやはり学校、生徒会に相談してくれれば力になる。
あと調べて半グレや反社と繋がりがあって何かあったら心配だからって事と、田中くん提出証拠が盗撮気味で…これもグレー…。
一ノ瀬会長は小佐田さんと田中くんに無理や違法捜査はダメだよ?って優しく微笑むと永瀬さんが難しい顔で大きく頷いた。
生徒会室を出た俺たち3人。
田中『良いドキュメンタリーになるんだけど…お蔵入りだよね?』
『…絶対出しちゃダメなやつ。
小佐田さんは…なぜ九頭を?』
田中くんに釘を刺しつつ、ずっと思ってた事を聞いてしまう。
小佐田さんは真面目な顔で、
小佐田『…クズのせいで私の友達が傷ついた。
私も同罪だし、私も謝らなきゃなんだけど。
…ゆかりっちと九頭を仲介したの…私なんだ…。』
小佐田さんはそう言って頭を下げた…。
皆気遣って俺にゆかりさんの話はしない。
…久しぶりに名前を聞いた…
秋に…キスして…付き合うって思ってた女の子。
九頭と付き合ってるんだよな?
どう思ってるのだろうか?
小佐田『ちょっと時間ちょーだい?』
俺と田中くんはすぐそこの中庭に先導されてベンチに座った。
小佐田さんは文化祭の頃の事を語り始めた…。
一年の秋の頃のはなし…。
俺が目を逸らしていたこと、忘れようとしていたことの裏側が小佐田さんの口から語られ始めた…。
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