第192話 幼馴染【side一ノ瀬司】

『…斉藤くんありがとう。

もし良ければ生徒会に入らないかい?

生徒会に入ると仕事は上手くいき、彼女が出来て宝くじが当たって人生が変わりました!って体験談が…!』


宏介『…いかがわしい幸運アイテムみたいっすね。』


斉藤くんは微笑みながら生徒会室を出て行った。

でも良かった。

まさかトラブル起きた相手が僕と面識がある斉藤くんと同じ中学の生徒で幼馴染だなんて。

勿論油断せず誠意ある対応して行くけどもフォローあると無いでは全然違う。

教員より信頼している先輩とかの方が話は通る。まして幼馴染なら…!



『…綾ちゃんも一緒にお願いしてくれたら良かったのに。』


僕がカーテンの裏に潜む幼馴染の女の子に声をかけると仏頂面で我が幼馴染の永瀬綾さんが出てくる。



綾『…名前で呼ばないでください会長。』


昔はあんなに可愛かったのに…そう言うと怒られるんだよね。


『昔はあんなに可愛かったのに…。』


綾『怒るよ?』


ほら怒られた!

でも綾ちゃんご機嫌ナナメみたいだね。


『なんでお気に入りの『宏介くん』が来たのに隠れたの?』


綾ちゃんは蔑むような目で、


綾『…絶対会長がからかうのと、2人きりで居たって思われて誤解されたら嫌なんで。』


『…それ僕に酷くない?

…まあ良い。九頭くんのトラブルでこっちからお願いしようと思ってたのに斉藤くんから来てくれて本当に助かったよ。

永瀬書記も考えこんでいたでしょ?』


綾ちゃんは少しイラつきながら、


綾『九頭くんは厳罰一択だと思います。

クラスで私に陳情に来た時びっくりしましたよ。

これで甘めな処分で私が便宜計ったなんて皆んなや宏介くんに思われたら…ゾッとする。

宏介くんが新川中の立花さんと間に入ってくれると円滑になり助かります。』


九頭くんは色々やらかし過ぎた。

しかも斉藤くんとも因縁あるし綾ちゃんは…男女関係に潔癖だから尚更嫌悪感強いしね…。


僕も宥めるけど厳罰必至だと思ってるし斉藤くんにもそれは伝えた。

でもさ?


『その割には不機嫌だね?』


綾『…宏介くんの幼馴染…多分親友の妹…。』


綾ちゃんがハイライトの消えた瞳で呟く。


綾『宏介くんは無口だけど…考えてから話してるからいつも簡潔にわかりやすくまとまった話し方をする…。

なのに…あんなに一言一言…言葉を吟味してコメントするなんて…!』

※猛獣でトラブルメーカーだって言えないから言葉を選んでいただけです。



綾ちゃんは斉藤くんをお気に入りだもんね。

在学中にフォローしてあげられれば良いんだけど。


綾ちゃんは腕を組んで唸りながら上を向いたり下を向いたり。


綾『…幼馴染…幼馴染かぁ…。』


『幼馴染の何が問題なの?』


困った様子の幼馴染に僕は声をかける。

綾ちゃんは僕をマジマジと見つめた後に、


綾『幼馴染…絶対厄介な気がする…!』


失礼だな。綾ちゃんは僕をジト目で見ながら幼馴染かぁって呟いた。

今日はGW明けで部活無しの日に設定されてるし、久しぶりに綾ちゃんと一緒に帰ろうかな?


綾『…立花って!いつも出てくる親友?!

俺カレの人の妹さんか?!

幼馴染の女の子と一緒だとテンション高いとかあったら…泣いちゃう…!』

※立花妹では無く立花兄と一緒の時テンション高めですね。


ひとりで煮詰まってひとりで答えに辿り着いた綾ちゃんには糖分が必要じゃ無い?僕も食べたいしね。


『どう?久しぶりに一緒に帰らない?

スイーツ奢るよ?』


トラブルは一つ解決へ向かいそう。

綾ちゃんはノータイムで無表情に、



綾『嫌です。』



僕は食い下がる。


『綾ちゃんとは家だって近いし1人で甘い物買い食いしにくいんだよ。

なんでダメ?』


綾ちゃんはスンってテンション下げた顔で、



綾『一緒に帰って、

友達に噂とかされると恥ずかしいし…。』


『…昔の恋愛ゲーのヒロインみたいなセリフだね。』


綾ちゃんが再びお兄ちゃんって慕ってくれる日は来そうに無い。

…あの頃の綾ちゃんマジ天使…!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る