第190話 ヒントを求めて

そして翌日、教員室の前の掲示板についに九頭の処分が張り出された。

…無期停学。


掲示板前はざわざわしている。


『…痴漢事件でしょ?』

『飲酒とナンパ、性的な…やらかしも?』

『なんか一応スマホに証拠は無かったけどかなり黒っぽいグレーだって…。』

『退学勧告…。』


望の厳罰を求める処分がどう影響したのかはわからないけど無期停学ってどうなんだ?

そんな事を思ってるとあっという間に昼休み。

昼食を食べ終わった頃に日奈子が来た。


日奈子『…宏介くん先輩?行きましょ?』


前回と違ってこっそり目立たなく来てくれた…助かる。

日奈子は黙って着いてくる。


生徒会室。

目当てはここだった。


ノックをしてどうぞ!って声がしたので入室する。


『…失礼します。』

日奈子『…失礼します。』


一ノ瀬『…やあ、誰かと思ったら斉藤宏介くんじゃないか!

よく来てくれたね?生徒会入る気になったかな?』


メガネをいじりながら優しく微笑む一ノ瀬先輩。

男前で人気者なのわかるよなって思う。


俺の後の日奈子を見て。


一ノ瀬『む、斉藤くん?女の子連れかね?

綾ちゃんがピリつくよ?まあ交際は自由だけどもね…?』


良かった!今は生徒会長の一ノ瀬先輩しか居ない。



日奈子『違いますよ?

私は一年一組の鳳日奈子と申しますデス。

お見知りおきを…。』


一ノ瀬『これは丁寧に…生徒会長の一ノ瀬司です。

今年入学した香港帰りの…学校には慣れたかい?』


一ノ瀬さんは日奈子の事も知っているようだった。

日奈子はしょんぼりして、


日奈子『…馴染めて無いんです…。』


一ノ瀬『…うちの一年生の庶務の子と仲良くしたら良いよ?』


鳳『!!

その娘!体育の授業で!


庶務子『鳳さん余ってるから誰か仲間入れてあげてー!』

ってデリカシィの無い…無慈悲な…羞恥プレイヤー…!』


うわぁ…きつ。


一ノ瀬先輩はよく言っておくね?って日奈子にフォローしていた。


☆ ☆ ☆

一ノ瀬『それで?今日はどうしたのかな?』


一ノ瀬先輩を今日訪ねたのは…。


『…僕の所に先月手紙が届きまして…。

北翔の生徒会は発言力も強く、役員も優秀な方が揃っていて情報やトラブルの情報も把握しているって聞きました…。

一ノ瀬先輩、なにかご存知ありませんか?』


生徒会に情報は集まりやすい。

トラブルで教員絡み、いじめや事件、噂や陰口生徒会には陳情から相談、密告まで情報が集まりやすい。

永瀬さんも校内の情報通だしね…流石に漏らしたりはしないけど。


一ノ瀬先輩は目を細めて、


一ノ瀬『生徒会頼ってくれるのかな?それとも何か知っていると?』


『何か知っている…か?

ひょっとしたら手紙先輩じゃないか?と思いました。

まあ今思ったんですけど。』


一ノ瀬先輩はにっこり笑って、



一ノ瀬『そうだね。よくわかったね?

生徒会は校内の情報集まるって気づいたからかな?』


…!

横の日奈子が急に、



日奈子『…!

じゃ、先輩が3通の手紙のうち1通?』


一ノ瀬『3通?それは知らないな。

僕は1通出したよ。

未確定の事で漠然とした話し。』



息を飲む。

これは大きい!



未確定で漠然…まあどれも漠然としたものだけど。


一ノ瀬先輩は話しを続ける。


一ノ瀬『天堂さんの件は聞いてる。

…誹謗中傷が起こってしまったね?』


宏介『もっと直接ヒントくれても良かったのでは?』


一ノ瀬先輩は軽く頭を下げて、


一ノ瀬『何を具体的にって話は無かったんだ。

ただ一部生徒が天堂さんをやっかむ?妬んでる?そんな話からなんかするかも?って忠告が生徒会に届いてた。

でも何するかわかんないし校内見回り強化位しか出来なくてね…天堂さんに親しい生徒って聞いたら君の名前が出てきたから部活周りで斉藤くんたちが、僕は同じクラスだからね?教室では僕が目を光らせておくつもりだったんだ…。』


具体的に言わないで済まなかった。

先輩は頭を下げた。

俺は慌てて頭をあげてもらった。

誰もそんなの阻止は出来ないし、悪いのは誹謗中傷した人なわけで。

一ノ瀬先輩は悪くないですよ。そう伝える。


『それとなく気をつけてもらおうって無記名で手紙出したのは僕が悪いね…3通も手紙来てたのかい?

…それはどんな?

…いや済まない、斉藤くんに来た手紙の内容を聞くのは不躾だった。

腹黒メガネってあだ名つくわけだよ…。』


一ノ瀬先輩はそれでその後なんだけど…って前置きして話し出した。


一ノ瀬『誹謗中傷の噂を聞いて、生徒会メンバーの数名が噂出所を探り始めると女子が出所だった。

…まあ大体噂関連は女子なんだけどね。

…4月下旬バスケ部が天堂さんを守る姿勢、三年女子の天堂さん属する強いグループが犯人探しを仄めかしたんだよね。

生徒会ももちろん探す姿勢を見せた途端に噂は立ち消えになったね。今は何も無いはず。

…もしもう一回同じ事すればすぐに逆探知に近い手法で次は首謀者が捕まると思うんだけどね。』


『ゴールデンウィーク直前には大きな攻撃は無かったように思いました。』


一ノ瀬先輩は頷いて、


一ノ瀬『本当は犯人をあげたかったけどね。

天堂さんの気持ち考えたら辛かっただろうし、許せないよね。』


本当にそう思う。

でもとりあえず手紙出し手がわかって一つ安心…。


もう2通…相談したい気もするけど…残りの2通は個人名が書かれた上で気をつけろみたいなこと書かれてるし…今回はコレで良い。


一ノ瀬先輩はそれでね?って前置きで俺に相談があるって切り出した。


一ノ瀬『九頭くんの件…無期限停学の件じゃ無くってね?

新川中の立花望さん…九頭くん事件の被害者なんだけどもさ。

斉藤くんの母校の生徒で昨日の面談で斉藤くんが居たって聞いたけど…斉藤くんの知り合い?』


『妹みたいなものですけど。』


一ノ瀬『…厳罰を求められたんだけど…その立花さんってどんな女の子なのかな?』


『なんとも説明が難しいんです…。』


俺は説明に困った。

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