第186話 田中くんの恋愛(したい)相談【side天堂愛莉】
5月のゴールデンウィーク最終日私はひとり部室で仕事をしていたのね。
昨日までホームアンドアウェイって言うのかな?
3校交代で自校に2校を招待して午前共同練習、午後総当たりで試合ってキツイ三日間を部員たちは過ごした。
対抗意識と慣れない他校での練習と試合は部員の皆んなを容赦無く削る。
自校では招待した側だからマネはフル動員で洗濯、掃除、ケアなど大忙し!
練習に帯同ではマネージャーは3人程度しか行けなくて他校のマネージャーと情報交換しながら手伝いや自校の選手のケアや手伝いなど細々とした用事は多くって…
私はマネージャー長だから二年生の後を継ぐ子に諸々教えながら忙しく動き回って大変!…マネージャー引退したら太っちゃうんじゃないかな?って不安…
…ううん、引退することを考えない様にしてきた私は今回の他校との共同練習で思い直したのね。
引退は必ず来る、だったら私がバスケ部に残していけるものはマニュアルじゃない?って。
先輩の申し送りノートはあったの。でも不備も多いし私が付け足した事も多い。
私がして来た事、皆んなと築き上げてきたものそれを形に残したい。
そうしたら後に改善改良する礎にもなるし、もし今までと違う事あっても照らし合わせて参考にしたりこの頃こういう事してたって記録が残る。
私は部室での庶務と洗濯を終わらせて移動する。
女子バスケ部も居ない、だーれも居ない体育館にひとりぽつん。
誰も居ないから子供の頃習っていたバレエの好きな箇所体育館の真ん中で踊ってみた。腕を振り、体全体で優美に情景を表現!回って跳ねるところをやってみる。
自分で思ってたより高く飛べないし、脚も全盛期みたいに開かない。
苦笑しつつ一個仕舞い忘れていたバスケットボールでドリブル。
誰も居ない体育館にボールの跳ねる音がこだまする。
ドリブルしてシュート!
入った!
パチパチパチパチ!
?!
田中『愛莉先輩上手じゃないですか?』
…宏介くんの友だちの田中くんだよね?
なんで居るの?
…それよりぃ!なんでデジタルビデオカメラ回してるのー!?
さあぁ!って自分の血が顔に上がっていく音が聞こえる気がするほど頬は赤くなる。頬が熱い!
『い、いつから撮ってたの…?』
田中くんはあっけらかんと、
田中『おひとりで体育館の真ん中でバレエを始めたところからです!』
『最初からでしょー!』
私は今までも目に余っていた田中くんの盗撮行為をこの機会に徹底的に注意する事にしたのね!
☆ ☆ ☆
田中『…すいませんでした…。
わかってはいたんですが…。』
私はこんこんと盗撮の危険性、プライバシーの侵害、懲役または罰金刑もある犯罪だと説いた。
最初は少し笑いながらすいませんって言ってたのが今は落ち込みながらひたすら謝る様になった。
…でも目の奥にまだ力があるからこの子更生しないかも…!
田中くんもゴールデンウィーク最終日まで部活に来るくらいだもん。
映像研究会大好きで一生懸命なんだよね?
…ゆかりちゃんのダイエット手助けしてた頃毎日田中くんが迎えに来ていたね?
気付けば2人で座ってそんな話しになった。
『…そう言えば連休初日の練習試合にね、ゆかりちゃんと三島さん?宏介くんの元カノの…。
三島さん、宏介くんと話したかったみたいで?体育館裏で待ち伏せしてて…』
田中くんは苛立ちながら、
田中『あのノーザンビッチーズめら!』
ノーザン?北翔の北かな?
それで宏介くんどうしたんですか?って続きを促す、
『宏介くん、承くんたちと釣りキャンプ行くって一目散に走って帰ってね?
可哀想なんだけど三島さんが背を向けてる間に疾走して声かける間も無く消えて行ったの!』
田中くんは大笑い!私も可哀想だけど宏介くんにあんな仕打ちした娘がまた宏介くんを傷つける場面見たくなかったからクスって笑っちゃった。いけないよね本当は。
あの頃、ゆかりちゃんが宏介くんと付き合寸前まで行って…。
あんな事が無ければきっと付き合ってただろうし、宏介くん自身言うけど付き合ったら他好きにならないタイプって言ってたし今頃…。
田中くんは語り出す。
本当は田中くんもゆかりちゃんが好きになっちゃってたって。
でも宏介くんに譲ったって話し。初めて聞いた…。
でも宏介くんも田中くんもそれから付き合っている彼女は居ないわけで…。
田中くんが真面目な顔で私に迫る!
ダメだよ!私には!弟の様に可愛いがってる後輩が!
田中『僕、存在感無いわ、女の子に印象薄いか悪くて…どうしたら彼女出来ますか?
愛莉先輩みたいの綺麗で性格の良い女の子…!』
褒められるけど…肯定も出来ないし…!
『そんな事無いよ…
田中くんは友達思いだし優しいし…。』
田中『本音で教えて欲しいんです…。
今日宏介くん…永瀬さんたちとお出かけじゃないですか?』
チクリと胸が痛い…。
でもきっと同級生と付き合う方が良い。
わかってるんだぁ。
田中くんは悲しそうに、
田中『永瀬さんグループと宏介君グループ3対3で浩くんって友人の為って話だったんです。』
うん?
田中『最初、永瀬さんの友達のギャルが話持って来た時、宏介くんと僕が話し聞いたんです。』
うん。
田中『翌日話し詰めようとすると、
二宮『ごめん、あやが田中くん苦手なんだよね…?ほんとごめん。』
って。
去年クラスメイトだった康司くんが3人目に入ったんです…。
今頃キャッキャウフフしてる3人から僕除外されたんです…!』
血涙流しそうな表情で思い詰める田中くん…。
『まぁ永瀬さんは少し情がこわい子かもしれないね?
私も宏介くんのことで釘刺されたことあるよ?』
田中『…あのおんな…!』
ふう、これは良くないね…。
『田中くん私で良ければ相談乗るよ?』
田中『本当ですか!先輩ありがとうございます!
僕…彼女欲しいんですけど女の子に存在を認識されにくいみたいなんです…!』
えー?思ってたのと違うよ!
どうしたら印象良くなるか?とかどういう話題がウケるとか、どんな男の子が好みですか?とかそんな感じの質問かと思ってたよ…!
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