第185話 遠くから見るふた組の男女

植物園を出て隣接する大きな池を有する公園で皆であつまる。

公園は植物園の敷地で広く色んな木が植えてある絶好の散歩スポット。

大きな池をぐるっと回る散策コースにはカップルや家族連れも多い。


お昼はターミナル駅戻って食べようって事になってたんだけどね。


綾『なんか露店いっぱい出てる!皆んなでちょっとずつ摘まない?』


ゴールデンウィークって事もあり、公園周り露店や軽食の移動販売とか結構出ていて…。


おのおの買って持ち寄ってシェアしよ?って事に。


康司『…女子はなんかお腹にたまらない甘いもの買いそうな気がする…。』


さっきまでの入れ込み具合はすっかり抜けて余裕出てきた康司。

※入れ込み…競馬用語で レース前に極度に興奮し、落ち着かない様子。

この時点で体力を浪費している事が多く能力が出しきれない場合が多い。


康司は恥ずかしそうに俺に謝る。


康司『宏介、さっきはごめん。

永瀬さんに叱られたあと、俺二宮さんに謝ってずっと黙って二宮さんの指示通りにしてたら許してくれて、二宮さん少し話してくれるようになった…!

まだまだなんだけどすごい楽しい。

俺わかってなかったんだなぁ。』


って。

本当に憑き物が落ちたような余裕のある康司に俺も浩も呆然とした後笑ってしまった。

良かったね康司。


さて、さっき康司が言ったように…お腹に溜まるもの欲しい。


おじさん『焼きそばー!美味しい焼きそばだよ?』


『『…。』』


俺と康司は黙ったまま顔を見合わせる…。

多分同じ人を思い浮かべた…愛莉先輩どうしているのかな?

部室でひとり寂しく仕事してるんじゃないか?

なんか胸が切なくなった…康司も同じ気持ちみたいで俺たちは2人して焼きそばを購入した…。


☆ ☆ ☆

皆んなで持ち寄った露店の食べ物はそれはもう沢山の種類。

焼きそば×2、たこ焼き、お好み焼き、サンドウィッチ。

フライドポテト、唐揚げ棒、アメリカンドッグ、ステーキ串、焼き鳥。

デザート系ではりんご飴、チョコバナナ、ベビーカステラなど祭り?って品揃え。


公園のテーブルを囲んでみんなで和気藹々と食事を取った。

食後バスの時間まで結構あるからバス来るまで自由行動になった。


永瀬『宏介くん!一緒に池の周りグルっと散歩しよう?』


自然とさっきと同じ3組別れて公園散策する。


『…。』

永瀬『…。』


さっきの永瀬さんの言葉借りるなら色んな事を考えて慮って、口にするか迷ってる。

その様子を見れば永瀬さんは雄弁で…。


勘違いかも知れない。

さっきのセリフ、これまでの色々…

永瀬さんは俺のこと…?

いや…まさか?でもさっきの言葉や今までの好意的な言葉の数々…。


もう頭ショートしそう。

俺は自分が複数人同時に愛せるようなタイプじゃないことを知っている。

前に皐月と付き合っていた頃には皐月以外に見向きした事なんて無いし未来を疑いもしなかった。


俺…でもまだ女の子とお付き合い出来ない。

自分の気持ちがわからない。

こんな気持ちでお付き合いなんて女の子に失礼でしょ?


そう思いを巡らせ思うのは承のこと。

あいつはいつもまっすぐ憧れの娘の方を見てる。

真面目に悩み過ぎて一回離れるって決断するほど好きすぎてそれでも離れがたくて…ついに今年告白するって俺に宣言した。

宣言したならすぐ告白すれば良いのにって思うけど。

小学生の頃からずーっと好きだったその一途な思いに尊敬すら覚える。


こんな素敵な娘の好意的な気持ちを感じて思うことがこんな事で俺は自分が嫌になる。

せめて楽しく過ごして欲しい。

俺は永瀬さんの話を聞き手に徹して帰る時間までずっと色々な話しを聞いたんだ。




☆ ☆ ☆

二宮新名の採点  side二宮新名


大きな池のほとりを二組の高校生の男女が歩く。

ひと組は地味な初々しい男女。もうひと組は美男美女の組み合わせ。


最初のひと組はぎこちなくって話しするのも苦労している。

どっちが話しても聞く側が全力で聞いてて互いを理解しようって姿勢が強く見える。


もうひと組は女の子が楽しそうに話し、男の子が聞き手に回り頷き、聞き返し積極的な聞き手で話す側の女の子は楽しそうで嬉しそう。男の子は女の子が好きだから、知りたいから全力で聞いてるのかな?って見える。


…これがどっちも知ってて、離れて見ているとまた少し違って見える。

最初の清香たちは相互理解の真っ最中で会話する度にどんどん親密になっていくのがわかる。今お互いの事知りたくてたまらないって見ててわかる。


あやたちはやはり宏介くんの準備出来てない感じがする。

一見気持ちよく話しててあやは幸せそうなんだけど宏介くんは聞き手に回り過ぎている。

きっとこれまでの動きや構い方であやの好意自体はある程度伝わっているはずで。

だったらあとは宏介くん側の気持ちなんじゃ無いか?って思う。

それなら彼に話をさせて過去のトラウマなり、今の懸念なり、今の気持ちを聞き出して2人の先を検討するべきなのに…。


遠くから見た方がそれがわかるって不思議だよね。

見た感じでは今回は清香の方が成功した感じする。

あやの方はあやの気持ちが先行しちゃってるって印象。



康司『…離れて見た方がわかるもんなんだね。』


もう一つ驚いた事がある。

康司くんが突然まともになった。


一度縛って隔離した彼は戻って来て自分のやらかしを詫びた後は余計な事言わずに静かに指示通り動いてくれて落ち着いていて全然去年と違う。


何があったのか?

思い当たる事は一つしか無くって…。



『女の子に縛られたって事が彼の『何か』を目覚めさせたのかなぁ?

…どうしよう…私とんでもないことを…?』


縛って!って要求されてももう絶対無理!どうしよ?


親友曰く『どノーマル』の二宮新名は困ってしまう。

康司はただアドバイス通り余計な事を言わずに余計な事をしないようにしているだけ。

新名はそれを新たな扉を開いてしまった?って誤解した。


帰り道には気付けばみんなでわいわい楽しく話す、

高校生同士の明るいグループ交際の様な楽しい時間を過ごして帰った。


最後に浩は隙を突く、

一瞬ふたりになったタイミング!


浩『…今度、また、勉強会しない?苦手教科でも得意教科でも互いに教えあって?』


清香『…うん、皆んなで?』


はにかみながら清香は答える。


浩『ううん、ふたりで。

…あ!嫌じゃなければだけど!』


浩は赤くなりながら必死で言う!


清香『うん、嫌じゃないよ!…嬉しい…。』




新名はそれを離れて見ていた。

それを見て満足そうに大きく頷いた。


☆ ☆ ☆

清香は響きで名付けて基本ノープランだった。

あるがスイレンが好きで何となく清香にそんな設定付けて色何があるんかな?って調べたら花言葉が出て来て合わせたように清香の設定とハマった。こういう事もあるんだよなぁって書いててびっくりした回でした。

考えた設定より行き当たりばったっりがしっくりくる珍しいケースw



さて!@ tohrusanさんの茜の名前採用特典リクエスト会でした!

2組同時進行の難しさが勉強になった会でした。

リクエストありがとうございます。


GW編がもう少し続いて、この高校生グループお出かけの裏でその頃北翔高校では…って話し。

次回は同じく茜の名前採用特典 タカサト ユウさんのリクエストで、

「田中くんが彼女欲しいって愛莉先輩に相談する話。」

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