第184話 思うままに【side高橋清香】
『わ!スイレン綺麗だね!』
浩『ほんとだね、綺麗。』
さっき見た大きな滝の水が流れ着く先に大きな池があった。
そこには睡蓮の花がたくさん咲いていて、目を奪われる。
白、ピンク、黄色、紫と色とりどりで可愛い花たち。
浩くんと私はのんびり展示物を見て回っている。
綾は上手く行ってるかな?
親友のことに思いを馳せるけど別行動しているからわからない。
綾は美人で頭良くて人当たりも良いのに変な男の人にばかり言い寄られる不思議な娘。行動力あってグイグイ行く癖に妙に臆病な詰め甘いところがある。
…そこが可愛いのかな?そこが隙があって可愛げある風に男の子は見るのかな?
もう1人のにーちゃんもそう。
にーちゃんは派手な美人さんでなんでも適当にするけどコミュ力モンスターで誰とでも話せるし、誰とでも仲良くなれる。要領が良くて勉強だって時間かけないけど特進に滑り込んだ。
すごいモテるけど全然男子に興味無いし、友情重視してる格好良いギャルなんだ。
それに比べて私は地味。多分容姿もスタイルも普通で。
クラス委員長だって大学進学とか考えてのことだし、真面目で優等生って言われるけどその方が楽だからそうしてる。サボったりして目立って人目気にしたく無い。
…私はつまらない人間だなぁって思う。
マンガやドラマを見てて漠然と高校生位になったら?
格好良いイケメンに言い寄られちゃったりして彼氏出来ちゃったりして!
とか思ったけど現実はそんなに甘くなくて。
第一綾の側に居たらモテるって結構トラブルが起こるんだって思った。
綾に言いよるダメ男!あの手この手でダメなイケメンが綾を誘惑する。
そんな綾を見かねて私はいつもそばに居て時には用事を捏造し、時には委員長キャラで注意して綾をフォローしてた。
それが綾やにーちゃんからの信頼に繋がったんだけど…
私はふたりにコンプレックスがある。
このふたりに比べたら私は引き立て役でしかない。
ふたりが好きだから…いや好きだからこそ思っちゃう。
私には花が無い…。
☆ ☆ ☆
『スイレンって良いよね、水辺に咲いて、涼しげで。』
浩『そうだよね。あ、池に金魚放してある。
こういうの自然界のサイクルっぽくて良いね。』
わかる。
熱帯魚屋さんの水槽みたいに魚、木、水草みたいな綺麗なだけじゃ無くて世界があるよね!
『私、ペットショップの熱帯魚コーナー好きでね、アクアリウム?
ああいった綺麗な小さくまとまった世界観好きなんだぁ♪』
浩『わかる!ネオンテトラ水槽に店員さんが餌あげてこぼれた餌を下のコリドラスって小さなナマズみたいなのが食べてて!その排泄物が水草の栄養になり水草は酸素や水を綺麗にするって循環ね。』
浩くんは大人しくって穏やかな男の子。
私の話をよく聞いてくれるし話が合うんだ。
…話すの久しぶりだけど。
☆ ☆ ☆
学年が変わって今年も同じクラスになれたのね。
でも今年は席の関係、クラス立ち位置の関係上浩くんたちのグループは小佐田さんのグループに近しい。
浩くんが小佐田さんグループの優木さんとお話ししているのをよく見かける。
…優木さんも優等生ポジながら美人で話しやすい明るいお嬢さんで…。
私の上位互換かもって思う。
永瀬『…また宏介くん…小佐田さんと談笑してる…浩くんも優木さんと…。』
綾が暗い目で教室の反対側を見つめる。
五味『永瀬さん!放課後一緒に勉強しよう?
お互いによく知りあった方が良いと思うんだ!
(綾の視線の先の宏介を見て)
あんな女子とばっかり喋ってる男に君には相応しく無いよ!』
※永瀬さんに絡んでくるおま言う。
彼は初めて同じクラスになった
学力をひけらかす感じの悪い男の子なんだよね…。
『放課後は部活あるから?』
五味くんはじゃ次の日…明後日?って食い下がるから、
『それぞれやり方あるよね?
綾は私と勉強するからいいの!』
五味『…。』
チラッと私の顔と全体を見て、君もどう?って!
は?綾のついでに!綾を呼ぶ為私もどう?って?
プライドなんか高い方じゃ無いけど私オマケなんだって思ったよね。
☆ ☆ ☆
そう思うとネガティブな心は毒を吐いちゃう。
『最近優木さんと仲良いよね。』
浩くんは少し困ったように、
浩『宏介や田中くんと小佐田さんグループは仲良いから話す機会多いね。』
『去年は勉強会したり、話す機会も結構あったけどね…同じクラスなのにね。』
浩『…ごめん。』
謝って欲しいわけじゃないのに…!
私は思ったまま考え無しの言葉で浩くんを謝らせた…。
嫌な女の子だな…。
優木さんの方が良くなっちゃうよね。
一度そう思っちゃうと顔が見れない。
静かになった私を浩くんは申し訳なさそうに見てる…。
浩くんが顔を上げる。
緊張しながら私2歩近づき、
キュって私の手を引いて次の展示コーナーへ引っ張ってくれる!
えええ?!
浩『ほら!次のコーナー水生植物コーナー!
高橋さんの好きな…水槽の中に魚と植物が!
アクアリウムっていうのかな?』
…浩くんは慣れない手を引っ張るなんて事して顔真っ赤!
私も真っ赤なんだけど…!
私は水槽の中の世界に夢中になりながら浩くんと語り合った。
ドキドキしながら。
話内容は大した事じゃない。
身の回りのこと、友達の事、勉強のこと。
それでも嬉しくて楽しくて。
名残惜しくて植物園から出たくなくってお土産ものを見て回る。
そんな大したものは無い。
多分外の大型植木屋さんが大人気なんだけど。
そうしたらね?
浩『はい、高橋さん。』
スイレンのストラップ?キーホルダー?
白い花のそれを浩くんがくれた。
『ありがとう。』
派手なモノじゃない。むしろ地味可愛い。
でもなんか私に合ってる気がする。スイレン好きって言ったから買ってくれたのかな?
なんか気恥ずかしいし、そろそろ皆んなと合流しなきゃ…。
私は意を決して退館しよっか?浩くんにそう提案する。
浩くんは妙に緊張しながら、
浩『さっきの!さっきのストラップさ?
スイレンなんだけど…スイレンって高橋さんっぽいって思う。』
スイレン好きだから嬉しいな。
浩くんは緊張したまま、
浩『スイレンの花言葉は、
『清純な心』『信頼』『優しさ』。
そのストラップの白い花は清香さんの名前とイメージどおり優しくて清らかな綺麗な心そのままだと思うな。』
そんなことを?
そんな風に思ってくれるの?
男の子にそんな事言われた事無いからほんとにびっくりしちゃって…
私は何のリアクションも取れない。
なんと言えば?
なにを言えば?
この気持ちを、感動を伝えるには…?
わかんない!わかんないよ!
もちろん嫌じゃない!
でも直接的に告白されたわけじゃないわけで!
言葉を胸や頭から取り出そうと思うけど、
それは手に取る度に全部こぼれ落ちて行ってしまう。
情けない!高校二年生にもなって!
もっと経験してる娘だってたくさん居る!
でも私は!私は結局言葉が出ない。
でも一生懸命見つめる!
そうしたらね?
浩『嫌なら言ってね?
行こう、一緒に!』
浩くんはニコって笑って、私の手をさっきよりキュって握ってくれた。
手を引いて植物館を一緒に出た。
植物館のガラスに映る浩くんに手を引かれる私は…ちょっと可愛く見えた。
私は浩くんの手をきゅって握る。
浩くんが手をきゅって握り返してくれる。
お互い真っ赤で笑い出したいほどだったけどガラスに映るふたりの顔は笑っちゃうほど真面目な顔をしていたんだよ。
☆ ☆ ☆
高橋さんの乙女はなしの中にサラッと新たなるダメ男が出てきましたw
五味くんは学歴至上厨ですw
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