第179話 日奈子の報告【side友永ゆかり】
日奈子『それでね、報告に来た訳でデス。』
中庭でお昼を取っている私と皐月の前に現れた日奈子。
外はねの茶色い髪を揺らして目の前の少女はにっこり微笑む。
私はとっても可愛いと思う、現に通り過ぎる男子も日奈子をチラリと見て行く。
皐月『で?何がわかったの?あんたの言う陰謀論の証拠でも?』
皐月がバカにしたように言う。
日奈子は目を瞑って首を振り、
日奈子『わからない事がわかりまシタ。』
皐月『はあ?意味ないじゃん!』
日奈子『皐月先輩はそうでしょうね?ゆかり先輩、やっぱり宏介くん先輩の周りが1番おも…げふん、おかしいですね?
ちなみに宏介くん先輩に手紙出しました?』
手紙?あんまり字綺麗じゃないし…とても出せない…。
皐月は食いついて、
皐月『なに?宏介に手紙?ラブレター?嘘コク?』
日奈子『ほうほう、ゆかり先輩も皐月先輩も違うと…面白い。』
日奈子は上機嫌でにっこり。
皐月はまだ食いついて、
皐月『日奈子?宏介に会ったんでしょ?
手紙ってなに?宏介誰かと付き合ってるの?それとも付き合う予定なの?』
日奈子『宏介くん先輩が誰と付き合っても皐月先輩に関係無いデショ?
私結構気に入られて?鳳さんって呼ばれてマスよ?』
『全然親しくないでしょ?』
思わず突っ込んじゃって。
日奈子『でもなんか起こってるみたいなので要観察ですネ。
それより!その宏介くん先輩の教室で!アクシデント発生して!』
日奈子は語り始める、昨日の祝日に九頭くんがテニス部の練習参加で招待された女子中学生に掴みかかって、『尻を見ろ』『太ももは凶器』とかセンシティブな発言をしているところを他生徒に取り押さえられたと…。
そしてその件で生徒会書記の永瀬綾さん(日奈子は書記としか言わなかった)に陳情して、断ったところにヤクザガール…いや!小佐田さんとニンジャ先輩?…それ田中くんだね?が撮ってた動画でナンパと酔わせて性犯罪の可能性が告発されて生徒会長に連行されていったと。
日奈子『つい今さっきの事です。』
皐月『…ゆかり大丈夫?』
皐月が私を覗きこむ…本当なのかな?
胸が変などきどき…気持ち悪いし、不安でたまらない。
皐月『顔色悪いよ、ゆかり今日は早退した方が…。』
皐月が心配してくれてる。でも日奈子は、
日奈子『ダメなら仕方ないですケド無理して平然とするべきかと。
くずが動画音声で、『彼女とはわかれた』って言ってクラスの半分くらい聞いています。
こんなスキャンダル絶対秒で広がります。動揺してるよりその方がもう関係無いんだな?って周りの心象も良いはずデス。』
皐月も頷ながら言う、
皐月『その方がゴシップ好きに追求されにくいかもね…。
しかし知らなかったわ…そんな事が…知らなかったわ。』
日奈子『ぼっちな皐月先輩には噂が流れない…流言の計にかからないとわ!』
皐月『あんた?ディスってんの?』
私は仲裁しながら日奈子に皐月を煽らないの!って釘を刺す。
日奈子『…それでも…
いくら疎遠だったとは言え、彼氏が性犯罪容疑で最低停学、最高逮捕もあり得る状況…
お察しします…。』
手の動きと喋り方から昔の刑事ドラマの主役を意識しているのがわかる。
わかるしツッコミ待ちなんだね…。
チラチラこっち見てる。
その日奈子の陽気さと皐月の本気の心配に私は救われた気持ちでいっぱいだった。
こういった事は付き合い短いけど日奈子の方があてになる。
九頭くんの処遇はどうなるか?って聞いてみた。
『…日奈子はどういう処分になると思う?』
日奈子『JCに掴みかかった事件は正直難しいところで?
外部の、まして招待したJCに掴みかかる…。
これが危害かと言うと難しいところデス。むしろ『お尻をみろ!』『太もも凶器』発言の方がヤバさが際立ちまスネ。』
※この分析は宏介にも話し済み。
一回切るけど私と皐月が黙って聞いてるのに気をよくした日奈子は饒舌!
日奈子『招待したJC相手、他校相手ということもあり?
なんらしかの処分をして相手方にも詫びて処分を伝えないといけない。
でも…処分が重すぎても『そんな悪い事をうちの生徒はしました!』って言うのは外聞が悪い。
でも、処分が軽くて『問題を軽く見てる!生徒庇ってる!』って言われても困る訳で学校側は困っていたはずデス。』
なるほど…そうかも知れない…。
つまり量刑が難しい事件なんだね。
日奈子『そこに!クズが告発により!
飲酒(複数)、淫行(不確定)、ナンパ(厳重注意)、不同意性交渉(未遂?疑い)。
停学どころか退学、逮捕もあるかも知れません。
ま、本人は未遂って言ってましたケド。』
日奈子の説明は説得力があった。
日奈子『もちろん?推測です。
ひょっとしたら口だけ童貞ボーイでやっていない可能性はあります。
でも動画の感じから最低でも飲酒複数、ナンパ、性犯罪未遂はあるでしょうし。
スマホ開示しなかったからある程度のまずい証拠はあがるでしょうから…最低退学か自主退学勧告っぽくないでスカ?』
…童貞では無いこと私は知ってるけど…そうかあ。
退学になっちゃうのか…。去年の停学もあるし日奈子の言う通りになるかもしれない。
日奈子はゴールデンウィークにバスケ部は共同練習で5月連休の初日は午後から試合もやるって話しをしてまた来る!って言い残す。
日奈子『その疾(はや)きこと風のごとく!』
って手のひらを顔の前に翳してポーズとって颯爽と歩いて行った。
皐月『…あんな可愛いのに厨二よね…?
こないだ教室前通ったら休み時間なのにうつ伏せで寝てたわよ?』
日奈子を知ればみんな好きになっちゃうような気がするんだけど…。何気に皐月が女の子を可愛いって認めるのは稀なこと。
クラスの立ち位置って難しいし流れと言うか巡り合わせのようなものだよねって去年を思い出しながら私はため息を吐いた。
横の皐月は少し考えこんで、
皐月『…ねえ、さっきの話しなんだけど…
GW初日の宏介の…バスケ部の試合…見に行かない?』
皐月は赤くなりながら提案してきた…。
私も貴女も行かない方が良いと思う…。
でもひとりで皐月を行かせては宏介くんに絡んだりしてとんでもない事になるかもしれないよって思った。
…私は結局一緒に行く事を了承してしまった。
本来私も皐月も宏介くんに合わせる顔なんてある訳無いのに。
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