第167話 おかえし【side立花望】

ひー『ねえちゃん!うま!これうまだね!』


『でしょー?』


そうなの!今日はうまく出来た!

弟のひーちゃんがあたしの作ったクッキーを頬張っている。

文字通りにリスみたいにほっぺを膨らませて。


ひー『…ねえちゃん!おかえしするの?』


え?!ひーちゃんはむはむ食べながら、


ひー『このあいだのぽてちのおかえしじゃないの?

こうすけくんがいっぱいくれたの『いつもありがと』でしょ?』


ひーちゃん…。うん!そうだね!


『ひーちゃんちょっと待ってて?綺麗なヤツ渡すからちょっと食べるの待って?』


ひー『このくっきーかっこいいよ?ぼくのりゅっくみたい!』


ひーちゃんのリュックの柄の車のマークみたいってことでしょー!

それは余った生地を適当に焼いたやつ!


私は急いでこないだのバレンタインで余した綺麗な袋に選抜した一軍クッキーを丁寧に入れて、リボンで結び宏介くん家に向かった!


『こうゆうのは!勢い!』


私は歩きながら親友sと作った光景を思い出す、ふふ!楽しかったなー!

…芹は厳しかったけど。



☆ ☆ ☆

事の発端は芹の一言だった。

私たちは学校で芹が持ち込んだ手作りクッキーをボリボリ食べていたんだね。

おいしー!美味しい!芹良いお嫁さんになるう!って話しながら、


芹『そんな事ないよ?でもクッキー結構簡単だよ?材料費も小麦粉に+αだし。』


緑『まーさかー?本当に?』


きい『えー?そんな事言いつつ?』


茜『…お高いんでしょ?』


『それ通販の流れ!』


5人でゲラゲラ笑っちゃう。


芹『茜、今の良かった…なんでニマニマしているの?』


茜『いや…名前で呼ばれたから…。』


なぜか茜は照れ照れのモジモジ。

へんなの!

それを微笑ましく思いながら芹に


『そんなにお手軽なのかー?よく兄ちゃんが香椎先輩からクッキーを貰って来てね?ひーちゃんと勝手に食べたりしてたよ!』


芹『ま?香椎先輩の?手作りクッキー?

どんなの?』


芹の圧が強い!芹は香椎先輩の大ファンだもんね?


『白黒のカカオ効いたやつ!ガツンと!』


芹『アイスボックスクッキーだね…。柄は?』


市松もようみたいなヤツやグルグル🌀したのって言うと、


芹『作ってみようかな…。』


『作りなよ!試食するよ!ね?あたし芹のクッキーだいすき!』


私の発言に親友sがかぶせてくる!



緑『そうそう!カロリー低めで余計な添加物入って無いし!!』


きい『お子様のおやつにオススメだよね!。』


茜『私は子供のころからコレを食べて健康に育ちました!』


『みんな芹のクッキー食べて育ったんだね…?』


芹『こんな大きな娘居ないよ!望なんて私より先に産まれてるはずでしょ!』


私の方が誕生日早いからね。

じゃあ明日の休日は芹ママの家に行こう!って事になった。



翌日。



芹『乙女の嗜みとして?みんなもクッキー位作れた方が良いと思うのね?』


しまった!たまにある鬼コーチ芹様のパターンだ!

べしゃりながら焼きたての芹クッキーを食べる優雅な日曜日を想像してた私たちは文句を言うよ、


緑『芹ちゃんのクッキー食べたいでちゅ♪』


きい『芹ママの愛が入ったヤツ♪』


茜『ママぁ!ママぁ!ばぶー!』


『くっきーちょーだいっ♪』


あたしたちは精一杯媚び媚び赤ちゃんポーズをキメる!

顎の下辺りで両手をぐーにして?おめめうるうる!

芹は冷たい目で私たちを見渡すと、


芹『…貴女たちみたいな大きな娘が居てたまるか…。

クッキーが欲しければ働きなさい?』


無慈悲な芹のクッキーブートキャンプが始まったんだ…。



…。



…。



…。


厳しい特訓だけあってクッキーは良い出来!

何故こんなに細かく測るん?本当にわかんない。

こんなのちょちょいと勘や目分量でやった方が格好良くない?


それでもお喋りしながら焼きたてクッキー食べて!しんどかった分楽しい時間!


芹『クッキーは落ち着くと食感良くなるんだけど、焼きたての香ばしさもたまらないよね?

香りとサクサク感はだんだん抜けていくから私は夕方ー夜位が食感と香りが最高だと思うな。』


へー。

そして夕方解散して、今に至る。



☆ ☆ ☆

宏介家前 夕方


宏介くん家の前だよ。

躊躇うと!考え込んじゃう!迷っちゃう!

押しちゃえー!


ピンポン!すぐにインターホンで応答がある。


宏介ママ『あら、望ちゃん!お久しぶり!宏介ね待ってて?』


インターホン越し挨拶するとすぐにドアが開く。

宏介くんママ…宏介くんと顔そっくり。

宏介くんはママ似なんだよね。


宏介ママ『すぐ宏介降りて来るから!望ちゃん!可愛くなってー!』


『いやぁ、そんな事は…?』


なんか子供の頃から知ってるおばちゃんに褒められると恥ずかしいよね?

…あたしは否定するんだけど皆口を揃えてあたしはマジくそガキだったって言うの…!その頃と比較してなのかな?


宏介ママ『承くんはよく来るけど、望ちゃんは久しぶりに会えた!

今高1?中3?』


宏介くんママの問いかけにあたしも笑いながら答える、

宏介くんママの目が私の持ってる袋をチラッと見た。一応言っておいた方が良いか?


『中3です!今日はいつも宏介くんにお菓子貰ってるので?お返しにと…。』


宏介ママ『まー!』

宏介『…ごめん、お待たせ。母さんあっち行け。』


宏介くんが2階の自室から降りてきた。

宏介くんママが嬉しそうに微笑みながらまたね!って言って奥へ消えた。


宏介『どうしたの?望?』


宏介くんは長袖Tシャツにチノパンのラフな格好。


『宏介くん、こないだポテチたくさんありがとう、

…いつも色々貰うから…これ、作ったんだよ。

…あ、あの手作りだよ!』


勢い!って思ったけど段々緊張が出てしまい最後はグダグダ。

宏介くんは、ああ!って顔で。


宏介『あの日のぽてち九種セットだ?食べた?』


『とっくに食べた。

すごいね、あんなの当たるなんて大当たりでしょ!』


宏介『ポテチ当たるの決まってたんだ、承の当たり券が特賞だし。。』


『兄ちゃんが香椎先輩の手作りお弁当券当たった!って喜んでた。』


あの日…私はハッと思い出す…!



☆ ☆ ☆

同窓会の日


休みの日にね!家に私しか居ない時、呼び鈴が鳴ったの!

※立花家は古いのでインターホンで無くただの呼び鈴です。

私は玄関を開ける、誰だろ?


『へーい!』


宏介『…へーい?』


こ、こ、こ、宏介くん?!なんで宏介くん?

困った顔で宏介くんが立ってたのー!


『な、なんで?どうしたの?兄ちゃんなら同窓会に…?』


私はあれ?って思う宏介くんも同窓会でしょ?


宏介『さっきまで承と一緒だったんだよ。

これさ?ポテチ盛り合わせ9点セット貰ったから?望食べると思って。』


『…ありがとう。』

※長年の習性で遠慮も躊躇いもせず即受け取ります。


受け取ってから、


『ええ?!こんなに?すご!いっぱいじゃん!』


袋の大きさにニマニマしちゃう!ポテチいっぱい!


宏介『…うん、みんなで分けて食べて?じゃ。』


そしたら宏介くん私をジッと見つめてて…?

やば!今私どんな格好だっけ?


宏介くんは笑いながら、


宏介『そのジャージ似合うね?新しいモデルっぽい?』


母さんが最近勝手に買って来てくれた新しいジャージ!スポーツジャージ!

まだ新しいヤツだけど…ジャージって乙女としてどうなの?

でも!褒められた!


『似合うかな?そう?』


私はクルッとその場で回ってみせる。


宏介『望はアクティブだからそういうのが良いと思うよ。

どこの?』


宏介くんがまじまじとジャージを見る!

あたし見られてる!宏介くんにマジマジ見られてるよぉ!

※当然宏介はジャージを見ています。


あ?!しまった?!


宏介『adiósアディオス…?』


…お母さんがこないだ買って来たの!

お母さん…微妙になんかこう…『違う』の買って来るの…。


サイズや色味、デザインどれも私好みなんだけど…。

みんな知ってるあのメーカーのパチモンみたいなヤツ…。

あたしは恥ずかしくなって真っ赤になった…。


(きっと香椎先輩なら…隙なく全方向綺麗か可愛いんだろうなぁ…。)



でもね?宏介くんは、


宏介『さっき言った通り、似合ってる。

こないだ見せて貰ったラケットの色に合わせたの?薄い紫だったろ?』


『そうなの!そうなのぉ!兄ちゃんが買ってくれたラケットのね?ウイルソンちゃんが…。』


宏介くんはニコニコして聞いてくれて…気づけば私ばっかり話しちゃってて…。




☆ ☆ ☆


宏介『adiós…微妙にブランドっぽい精練されたデザイン…。どこで買ってくるの?』


『あはは!母さんしか知らないの!』


宏介『俺もちょっと欲しい。』


楽しくってつい話し過ぎちゃう。

宏介くんは基本多弁じゃないのにあたしばっか…。あたしは気付いて謝る。



『ごめんね、あたしばっかり話しちゃって…。』


宏介『…ううん、そんな事ないよ、それよりさ?』


それよりなんだろう?ごめんね、宏介くん。

あたしが自分の子供さに自己嫌悪に陥っていると、



宏介『…クッキー食べて良い?』


そう言いながら袋を開けて、一枚取り出し、

ザクっ!音を立てて大きく一口食べた!

どうかな?自分では美味しかったんだけど…感想教えて欲しい…!

宏介くんは何も言わずに2枚目、3枚目と食べて、


宏介『…望がクッキー作れるなんて知らなかった。こないだのバレンタインもビックリした。

…てっきり食べる専門家かと。』


『失礼だな!3日会わざれば刮目して見よって言うでしょー!』


宏介『…それ男子な?』


もう!あたしは嬉しくって恥ずかしくって宏介くんの顔見れない!

目を逸らすと宏介くんママが隙間から見てるよぉ!


『じ、じ、じゃあ、帰る!帰るねー!』


あたしはなんか恥ずかしくなっちゃって慌てて帰ろうとした。

そしたら、


宏介『望、美味しいクッキーありがと!大事に食べるけど…あっという間に無くなりそうかも?』


望『そうなんだだだ。』


噛んだ!


あたしは帰り道、宏介くんの言葉を思い出してニマニマしながら家に帰る。

…香椎先輩も料理が趣味で人に美味しいって言って貰えるとすっごい嬉しいって言ってた…。

そして兄ちゃんはよく香椎先輩の手料理をご馳走になったり、お弁当券が当たったりしている?…ううん当たるように?きっと兄ちゃんは気付いていない。


香椎先輩も兄ちゃんが美味しいって言ったら嬉しくなっちゃうのかな?

…ちょっとだけ香椎先輩の気持ちがわかった日だったんだ。






☆ ☆ ☆

お疲れ様です。

昨日は残業でへっろへろで本編にこのエピソードの一部をあげてしまうミスをしでかしました。ふぁっく。


さて4/11に募集した、望の親友sの名前募集の件ですが、


親友1→緑(ミドリ)予定通り


親友2→きい 予定通り


親友3→茜(アカネ)new!


に決定致しました。どこかで『あかちゃんw』って煽りつつ、赤ダイレクトじゃなくて紅緒さんって人も居るからっていうオーダーにジャストで決定させて頂きました。


茜を挙げてくれた方は2名いらっしゃいます。

タカサト ユウ様

@tohrusan様


です、リクエスト権しか差し上げられませんがコメント欄で希望のキャラのこんな話しって要望をお知らせください。

近日絞り出します(笑)


そしてそれ以外にも沢山の候補を挙げて頂きました。

望の親友sの3人の名前を考えてくれてありがとうございます。

名前を複数挙げてくれた方も多かったです。

心からの感謝を!いつも読んでくれてありがとう!



ある

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