第166話 お姉さんと新入部員
あの手紙が来て約一週間が経った。
…結局何も起こってはいない…。
いや、それならその方が良いんだけどね。
2年生になって10日ほど。
諸々のイベントが終わり通常の日常が始まっていた。
4月2週部活解禁、ついに新入部員達がやって来た。
愛莉『去年のウインターカップ県予選ベスト8の実績かな?今年は例年より入部者が多いの♪』
愛莉先輩は嬉しそうに語る。
進学校でバスケ強い高校はそんなには無い。
だから成績優秀者で高校でもバスケ強い所でやりたいな?って思う者に良いアピールになったんだろう。
見渡せば新入生だからオドオドしている者も多いが…?
自信があるのかふてぶてしい面構えの者も数人居る…。
きっと成績優秀で運動神経抜群!って地元じゃ敵無しって奴も多いだろう。
今までウチには居なかった2m近い子や去年全中で全国行った子など噂は聞いてた。
これは期待しちゃう。その2人が一年生では目立っている。
でも大半はキョロキョロ落ち着かない生徒が大半な訳で。
やっぱまだ線が細い感じの子が多い。俺たちもこんなんだったんだなぁなんて横で康司が呟く。
なんかこの光景がデジャヴの様な見た事ある気がするのは気のせいだろうか?
監督が指示してキャプテンが号令、愛莉先輩がファイル持って監督の側で立って居る。一年の自己紹介が始まった。30人…結構ハードな部活だけど残るかな?俺たちの代も21人入って今11人だもん。
新入部員の自己紹介、キャプテンの自己紹介が終わり練習入った。
新入部員はまず練習についていけるように体力強化メニューが大半のフィジカル重視練習が組まれる。
キツイんだよね…あれ。
必要なんだけど体力強化は地味にキツく、これで辞めちゃう新入部員多い
バスケットボールってスポーツがそもそも走りっぱなしでジャンプしまくりの激しいスポーツで練習についていく体力無いとなんにも出来ない。ボール触らせてくれないみたいな事言う奴居るけど練習後の自主練で好きにすれば良いのにって思う。
※宏介は勉強でもスポーツでも理由と効果分かればキツくても我慢出来るタイプです。
一年生の中でふたり雰囲気ある奴が居る。
さっき話し出たデカい奴と全中行った奴。この2人は生意気そうで練習もついていけてて練習メニューに不満そう。最初は我慢してよ、優秀な選手ならいつまでもフィジカルだけやらせないから。
そんな一年生主体で見るのは愛莉先輩。
一年生の動きを注視しながらメニューをこなしているのだ。
励ましながら厳しくも優しく…うん優しくのが多い。
生意気な一年生が当初愛莉先輩に不満そうに接して居たのだけれども、
愛莉『もう!わかったよ!
いちいち何の為にどう言う理由でこのメニューをしているか説明するし、効果と結果出るってとこ見せるから!』
いちいち練習の内容と効果を説明してたけど面倒臭くなった一年は黙ってメニューをこなすようになった。
一年の195cmの彼が、熊田って言ったっけ?
熊田『なんで強豪校なのに、女子マネがメニュー決めてるんすか?』
って不満そうなの。
…一回わからせなきゃいけない?って思ってると、
愛莉『…じゃあ?私の最高傑作と勝負しよ?
君バスケ歴何年?』
熊田『四年っす。』
愛莉『じゃあ?去年からバスケ部でバスケ始めた先輩と1on1しよう?』
うわ、嫌な予感。
熊田はニヤッと笑って、
熊田『いいっすよ?俺勝ったら先輩達との練習に入れてください!
俺が負けたら文句言わずに練習しますよ!
じゃ、相手は誰っすか?』
愛莉先輩は俺にパチンってウインクすると、
愛莉『宏介くん!君に決めた!』
『…だからポケモンじゃないって。』
熊田は見た目通りの背の高い大型選手。センタータイプのゴール下得意なパワー型っぽいけど…。
実際1on1だと敏捷性などスピード重視の方が有利だと思うんだ。
結果は俺の勝ち。
熊田は負ければ従順になった。
…もう1人の問題児の全中へ出た鷲尾は俺と熊田の勝負を見て、
鷲尾『あ、自分は納得しました!』
って従順になってた。
同じポイントガード型だから有利不利が見えたんだろうね?
きっとふたりほどの才能なら一年鍛えれば俺より強くなるかも知れない…!
そして、一週間も愛莉先輩の優しさ、美しさ、献身的な姿勢を側で見て居ると…。
熊田『愛莉先輩!俺が洗濯物持ちます!』
鷲尾『俺たちが備品の片付けと整理やります!』
一年『『愛莉先輩!』』
…すっかり懐いてしまってすごい事に。
もう愛莉先輩を姉のように慕う一年生に俺の姉だと二年生。
愛莉先輩の人徳でバスケ部の過渡期たる今年の問題、実力ある一年を制御出来るか?って問題は即解決した。
さすが愛莉先輩!一年生マネージャーも入部したしこれから一丸となってバスケ部頑張っていこう!って盛り上がる!
三年生は受験を控え最後の夏に向けて、二年生はレギュラーを巡って切磋琢磨!一年生はまだまだ体力作り中だけど熊田、鷲尾の潜在能力はズバ抜けていてベンチ入りもあるか?って雰囲気。
少し新学年に慣れた頃で部活も落ち着き始めた頃。
…バスケ部の女神こと愛莉先輩を中傷する噂が広がって居た。
『天堂愛莉はヤリマンで?
男子バスケ部のマネージャーをしてるけど気に入ってる生徒複数人と性的関係を持っている。』
『天堂愛莉は元カレ差堀に調教されてて?誰とでも寝る。』
『天堂愛莉は流されやすいビッチ。』
事実無根な噂にバスケ部の面々は笑い飛ばす。愛莉先輩が?何かの間違いでしょ?
知ってる子ならすぐわかるよね?愛莉先輩はそんな人じゃ無いよ?
バスケ部の面々が否定するほど噂は尾鰭背鰭が付いちゃって、胸鰭までつきそうなほど。
…愛莉先輩は日に日に憔悴していく…。
まさか?これが天堂愛莉に留意されたし?
4月下旬に入る頃。まだ新学期始まったばかりだけど俺たちを取り巻く空気は最悪だった…。
いや、最悪になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます