第160話 手紙の忠告
『…それで…話しってなにかな…?』
少し上目遣いで愛莉先輩はにかみながら俺をチラチラ見ている。
すっごい可愛い。可愛いからこそ寒気が止まらない…!
愛莉先輩のうるうるキラキラな瞳、恥ずかしそうに頬を染めて右手は耳元の髪を弄っている。
…これは良く無い、長引いても俺が不利。
急いで説明しなきゃ!こんな手紙が来てて!愛莉先輩に何かあったら!気を付けてください!って!
俺が言いかけるところにほぼ同時!いや愛莉先輩はが早い!
『…私もね?今年大学受験控えているし…その、皆んなに秘密で?
…その…うん。えーと?ね?』
うん、全くわかんない。
先輩はひとりでぶつぶつ赤くなって身を捩って大層可愛い状態なんだけど…
あの?あんまり髪弄り過ぎると髪縦ロールになっちゃいますよ?
喉まで出かかったが我慢する、どうする?
知らないフリする。
そんな事より!手紙が!
→正直に伝える。
…俺、愛莉先輩にお世話になってるし尊敬している。
大事な人なんだよ。正直に言い方悪くてすいませんって謝ることにする。
『…私の方がお姉ちゃんだし?…それでも良いの?』
まだ愛莉先輩はトリップ中で…。
『…先輩、すいません。
なんか言い方悪かったみたいで青春ラブコメっぽい呼び出しになってしまいかした。すいません。
…これ見て貰えますか?』
愛莉先輩はさらに真っ赤になって、
『…手紙?手紙で伝えるの?!』
そう言いながら手紙を受け取り1秒でこっちをガバって驚愕の表情で見つめた。
『これ何かな?』
手紙の内容にスンってテンション下げる愛莉先輩、湿度の高い視線でもなお愛莉先輩は可愛い。
『…対面式の日に俺のシューズボックスに入ってまして…。
今日まで様子を伺っていたのですが思い当たる人物も不審な人も居なくて…。
ただ愛莉先輩に何かあったら心配なので…。お呼びして手紙を直に見て頂いた次第です。』
もう一度愛莉先輩は手紙に目を落とす、
『天堂愛莉に留意されたし。』
この一文だけ。
愛莉先輩はなんかしょんぼりしながら、
『わかってた…うんきっとそんなオチだろうって…でも?ひょっとして?その可能性も捨てられなかった…。』
サスペンスドラマの犯人みたいな雰囲気で先輩はスンってテンションの落ちた顔で俺を見つめると、
『私に何かあるかも?って宏介くんは思ったのね?』
俺は頷き、
『…はい、ただ意図がわからなくって…。
害意は無いっぽいけど…愛莉先輩を気を付けてあげて?みたいなニュアンスじゃないですか。』
『うん…こんな手紙送ってメリットは…私が宏介くんに気にかけてもらえるかも?ってくらいだよね…?
ううん!私じゃ無いよ!本当!信じて!』
両手をばたばたさせる愛莉先輩を宥めながら、わかってます。
でも、もし何かあったら?先輩気を付けてください。そう伝える。
『私、基本送り迎えし貰ってるし…?
うん、気を付けるけどね?』
そうだよね、お手伝いさんが毎日送り迎えしてくれるんだよね、愛莉先輩の家って。クールなお姉さんが愛莉先輩を送り迎えしてるの見るもの。
強いて言うなら学校かな?差堀先輩とかまた来そうだし?
…でも差堀先輩は手紙出すなら直接だろうしなぁ。
自分に関係ある手紙に少しショック受けてたけど落ち着いたのか余裕出て来た愛莉先輩。
『なんだ!そんな呼び出しならもっとシリアスに呼び出して?
何事かと思ったよ?』
俺の言い方?まあやらかした自覚はある。
すいませんって謝る。
『もう!宏介くんは!そう言うところだよ!』
俺は優しく、でもねちっこく叱られた。
あんまり責めるから、
『…だって愛莉先輩何かあったら心配じゃないですか?
そりゃ言い方良くなかったかもだけど、先輩が心配だったから。』
そう言うと、また真っ赤になった愛莉先輩は、
『宏介くん口説き慣れてるのかな?
私はお姉さんだから効かないけどそういう所だよ!
心配なんだったら留意しててよね?』
さっきまで少しぷんすこしていた綺麗なお姉さんはだいぶ機嫌を直してニコニコしながらうんうん頷いて、迎えが来るまで付き合って?って俺を有無を言わさず校内の駐車場スペースへ連行して行った。
『ターミナル駅まで送ろうか?』
『…田中くんと帰るんで。』
『そっか。じゃまた明日♪』
『…また明日。』
車内のお手伝いさんの目礼を会釈で返しすと車は静かに発車する。
俺は田中くんと待ち合わせしてる校門へ向かう…!
おう?!田中くん?!すぐ後ろに田中くん?
『…青春…それは君が見た光…!』
『…。』
田中くんは俺の目を見て続ける、
『ぼくが見た希望…。』
田中くん…何処から見ていた?
『青春それはふれあいの心!』
やっとわかった、これお線香のCM…!
承なら突っ込むところ。
『…。』
俺が黙っていると、
『宏介くんは女性恐怖症じゃなかったらとんでもない女たらしになれる。
びっくりしたよ、体育館裏へ行く宏介くんの後ろに居たら青春の1ページが急に始まるから!』
そんなわけ無いだろ。
とにかく愛莉先輩に手紙の内容は伝えた。
これで手紙出した人はどう動くのだろう?
打ち明けた反応も愛莉先輩は手紙出した人では無い感じがする。
そう思い、少しホッとしていた。
田中くんは帰る前にトイレ寄るって言って離席した。
1人でぼんやり夕方の空を見上げていると、
小佐田『斉藤くん?今帰り?』
『…うん、小佐田さんも?』
小佐田『涼待ち。』
『…惚気だね。』
『ちがうし!』
エヘヘ。って柔和な表情。
この子は涼のことになると可愛い女の子になっちゃうから不思議。
でも一途で好感が持てるよね。
珍しくひとりで居て二言三言、言葉を交わして田中くんが戻って来るのが見えてじゃ!ってまた明日って声をかけてその場を離れた…ところに後ろから声がかけられた。
少しからかいすぎて仕返し!って言い方で少し笑いながら、
『…一昨日の朝、早めに登校したら斉藤くんの靴箱になんか入れてる人…女の子居たけど?
告白とかされたの?』
小佐田さんから出たのは意外な情報だった…!
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