第158話 手紙の3人

結論は出ない。

それでも間違い無いのは、きっと本人達は直接関係無いんだろう。

自分に気をつけろ!なんて言うわけ無いし。自分に留意して!なんか普通言わない。


多分愛莉先輩、永瀬さん、小佐田さんと俺との距離の話になるわけで。

極論俺が彼女たちに近づかない限り手紙出した人間を刺激する事も無いし、注意する事も無い。

…皐月やゆかりさんとは違う、俺は彼女たちとは何も無い…。

小佐田さんに至っては、友達の彼女だからね?

気にしてもしょうがないし、手紙の出し主は目的は何かはわからないが俺を揺さぶる?のが目的なんだろう。

近づけたいのか遠ざけたいのかが疑問だけど考えてもしょうがない!

気になるけど気にしすぎは相手の思う壺!


田中くんとの相談はそう結論付けた。


田中『…僕、注意して宏介くん周り見てる。何かあればすぐ言うから一応気をつけてね?』


『ありがとう。』


ふたりでしばらく話しして田中くんは帰った。

なんとなく勉強も手に付かなくて、やっぱり色々思っちゃう。


(承はすごいな、こんな手紙来て笑い飛ばして襲撃されたり?

…それに比べれば俺の方が平穏かも?)

※そんな事無いです。


…俺も襲撃される可能性あるかも?

うん、手紙の3人に近い?妬まれて?ありそう!

…小佐田さんは無いか?

うーん、共通項が無いんだよなぁ…。



そんな事を思いながら早く寝てしまった。

悩んでいても寝てしまえばも関係なくぐっすり朝まで快眠だった。



☆ ☆ ☆

翌朝、田中くんと待ち合わせていつも通りに登校した。

いつもより多めに寝たから体調は良い。


校門を過ぎ、田中くんが緊張している気がする。

俺が相談したせいで田中くんに心配かけちゃったかな?

でも、親友だから言わないで後から知るより相談した方が良かったはず。


『…放課後部活出るし、今日からいつも通り。』


『宏介くん、一応気をつけて。』


お互い真面目な顔で確認して教室へ向かう。

今年は田中くんと同じクラスで心強い。

浩に挨拶して、自分席に着く、


永瀬『宏介くん?体調は大丈夫?』


席に着くなり永瀬さんが心配そうに席に近付き声をかけてくれた。

その様子や声は心配そうで、トレードマークのポニーテールも今日は元気が無さそうに下がって見えた。

俺は意識して明るく、


『…うん、季節の変わり目かな?少し体調崩しちゃって?もう大丈夫。

ありがとう。』


永瀬さんは目を細めて微笑み、


『良かった!昨日顔色悪くてなんか上の空だったから?ちょっと心配しちゃったよ?早退するほどの感じでも無かったし?

ロインするか迷ってるうちに時間遅くなっちゃったからロインしそびれちゃって余計に気になっちゃった!

うん、良かった!またあとでね!』


永瀬さんは胸元で小さく手を振って自分席に戻って行った。

話しながらも俺は周囲を伺っていたけど何も無かった。

永瀬さんと話しているから男子の目線は感じたけども。男子の目はまあまあ強い。流石永瀬さんは人気者だと思うよ。

…永瀬さんから悪意や俺を伺うような様子は感じなくて俺を気遣うのが伝わってきた。


田中くんはきっと俺以上に周りを伺っているだろうから?後でまた聞いてみよう。

小佐田さんはいつも通り、優木さんと楽しそうに話している。

見てる感じ変わったとこは無い。

俺は小佐田さんが芯の通った女の子で彼氏の涼が大事で誤解させたく無いから基本男子と絡まないって姿勢に好感を持っている。

もちろんクラスメイトとしてだよ?あと友人の彼女として。だから小佐田さんとは適切な距離を保っていきたい。

だから?小佐田さんの思惑がどうであれ?小佐田さんに注意しろって手紙の出し主の意図もあんまり関係無い感じ。


(まぁ、そんなに小佐田さんと関わる事もないでしょ?)


一応、一応休み時間に様子だけ伺ってみることにした。



☆ ☆ ☆

今日から授業が始まる。

でも初日だから割と先生の自己紹介や、先生側も生徒を知る為に授業を!って感じより生徒とコミュニケーション取ったりこんな感じの先生だよ?君たちは?みたいな話が大半で半分位そういった時間を取って終盤に教科書を少し開いて冒頭だけ触るような感じで大体終わる。


でも、特進を受け持つ教師だけあって結構俺たちのことも調べているし話し方、教え方にもポリシーを感じる。

授業を受ける俺たちに考える余地を残して自分で解く、結論を出させたいのかな?って感じた。塾の講師から引き抜いたなんて言われてるけど納得の話し方、教え方だった。

面白い。


そんな感じで初日の今日は教師と生徒の顔合わせとさわりだけって感じであっという間に午前は過ぎていく。

そして、昼休み。

俺は田中くんと浩と昼食を摂る。

そこにあまり陽キャじゃない男子を3人加えて食べながら少し話した。

康司もそのうち合流するようになるかもしれないけど今は自分のクラスメイトと仲良くなった方が良いはず。


昼食が終わり、浩は康司のとこへ、田中くんは映像研究会へ。

小佐田さんはクラスで小さい女子グループを形成して昼食。

後に解散したタイミング見計らって小佐田さんに声をかける。


『午前の授業の感じだと面白そうな感じしない?』


小佐田さんはなんだ斉藤か。って顔で、


小佐田『確かに。塾講師出身って本当っぽくない?』


優木『確かに。あのノセて話に引き込みつつ生徒をコントロールする感じが。』


特進の授業を担当する教師は北翔高校の中でその科目のエースの先生が選ばれる。生徒の成績が教師の給与に反映されるなんて噂もあるし教師がギラギラしているってなんか不思議!

そんな話を小佐田さん、優木さんと話しこむ。


小佐田『斉藤くん、今年は成績負けないし?』


優木『恋ちゃん、斉藤くんライバル視してるからね?2回?

試験結果張り出しで恋ちゃんの一個上に斉藤くんの名前があってめっちゃ意識してるからね?』


小佐田『そう言う事言うなし!』


『…それは光栄。でも直近で俺は小佐田さんに負けてるから?

次は負けない。』


あはは!優木さんは楽しそうに笑い、小佐田さんも少し微笑みながら頷く。

ピリピリしないこういったライバル関係って良いよね?

…ちょっと趣旨忘れそうになった。

このふたりから嫌な視線、伺うような気配は感じない。

…でも、俺は皐月もゆかりさんもその時まで疑わなかったんだから女の子を見通す?見抜く力なんて俺には無い。俺の見る目なんてアテにならないと思う。

それでも小佐田さんは手紙に関係無いって思ったし、関係あって欲しくは無いと思った。



☆ ☆ ☆

放課後、田中くんと帰り時間決めて別れて部活へ移動する。


『…ちわっす。』


キャプテン『宏介!無口を拗らせて入院したって噂聞いたぞ?大丈夫か?!』


『…昨日体調不良って言ったじゃ無いっすか?』


三年生中心にいじられて、康司たち同級生にいじられてアップを始める。

…休んだ次の日ってなんか照れるよね?


遠くから笑顔で愛莉先輩が小走りでやって来るのが見える。

愛莉先輩は近くに来ると顔を引き締めて、ん!ん!って喉を整えて、


愛莉『体調不良はもう良いの?無理しちゃダメだよ?

…これから先輩になるんだから!体調管理しっかりしなきゃだめだよ!

心配したよ?』


愛莉先輩は顔を引き締めたのに話し始めるといつもの…いや、いつもより優しい声と顔で俺を心配してくれる。

…周りの目と当初の姿勢を思い出したのか途中から先輩として!って心構えを俺に説くけど仕舞いは結局優しいお姉さんの顔だった。



結局終始愛莉先輩はいつもより甘めで俺の体調を気遣ってくれた。

俺と話す様子も変わり無く、周囲の目もいつも通り。

こっちの男子バスケ部から見る女子バスケ部の永瀬さんも変わり無く。


永瀬さんを見ていた俺と目が合うと、


永瀬『…!』

笑いながら小さく手を振ってくれた。



…結局何もわからない。



俺は今日一日で手紙に名前が出た3人と話をしたし、話す時それとなく周囲を確認したけど不穏な気配や探ってる視線や伺う様子は感じなかった。

まあ注目度の高い子達だから話してる時視線は感じる。特に永瀬さんと話す時には。でもそれも異常な程では無い。


気にし過ぎても俺には何も出来ないんだから割り切って暮らすしか無いか。

帰り道田中くんと合流したけど田中くんの方も特に変わった点は無かったって感想だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る