第155話 1通目の手紙

昨日の入学式は休みでのんびり過ごして今日は対面式。

生徒会主導で行われる在校生と新入生が顔合わせする式。

それが終わると今年の教科書配布と身体測定をして今日はおしまい。

12:30位には終わる予定のなんて事ないイベントデー…のはずだった。


俺が田中くんと登校してまだ慣れない新しいシューズボックスを開ける。

…折り畳んだコピー用紙?何かわからないけど紙が入っていた…。


黙ってそれをスラックスのポケットを入れて田中くんと話しながら俺は教室へ向かうけど…。


(…なんだ?なんだこれ?)


もやっとしながらも表には出さずに教室へ向かう。

教室へ到着して、席に着く。

まだ授業は無い。カバンを机に掛けて部活で使う備品と連休で洗ったバッシュ入ったスポーツバッグをひとまず嵩張るのでロッカーに…。


…また手紙…今度は白い飾り気の無い封筒…。


コートも脱いでロッカーに仕舞いながらそれもスラックスポケットへ入れる…。

なにこれ?一応これを入れた奴が俺を見ているんじゃ無いか?って思い自然にクラスを見渡す。

永瀬さんが視線に気付いてニコって笑って手を振ってくれる。

手を振る永瀬さんの視線を追って二宮さんと高橋さんがコッチを見ている。

永瀬さんが手を振った!誰に?!って感じでクラス男子も俺を見る。


視線ではちょっと分からない…。

いつもと同じ電車で来たけど大体7割は生徒が来ている。

まだクラスに人が少ない時間に来ていればまた違った?

考えてもしょうがないか。俺は中身も確認していない手紙を推理しても無駄だよなって思いながら自分の席に座る。


椅子を引いた時、空っぽのはずの机の中に白いものが見えた…。

素知らぬ顔で触る…サラッとした紙の手触り。


本当に意味がわからない。

流行ってるの?こういうの?

3通目の手紙をポケットに入れて素知らぬ顔で俺は周りを見渡すどやっぱりわからない。


こういうのってさ?すっごい気にならない?

良い手紙なら良いけど…何も俺には思い当たる事が無い。


悶々としているうちに担任が入室して朝のHRが始まった。

今日の日程、注意事項を説明して、


担任『よし、じゃ体育館へ移動!』


俺は手紙を確認する暇も無く対面式へ移動して式典に参加する。

…でも内容は本当に上の空。

この手紙なんなの?それが頭からずっと離れなかったんだ。

マジでトイレや空き教室で手紙の内容だけ確認しておけば良かった…!


1時間半ほどの歓迎の挨拶や、新入生の入学の喜びスピーチに生徒会の説明や諸々の話しをして校歌斉唱。

俺はなんとか身体測定の前に手紙を読んでおきたい。

大体でも目を通しておきたい!


そう思い、身体測定時は半袖半ズボンであちこち移動しながらの測定になる為着替える必要がある。その前に読まなきゃ!ってとこでぽんと肩を叩かれる。


『ひゃ!』


永瀬『うひゃぁ!』


永瀬さんびっくりさせないで?

永瀬さんも俺のびっくりに引っ張られて奇声を発する。

ビックリした…!


永瀬さんはにっこり笑いながら、


永瀬『宏介くん!対面式の挨拶どうだった??二年生代表の私の勇姿見てくれたかな?』


『…うん良かったよ。』


嘘である。

まったく聞いていなかった…。

生徒会役員で壇上に上がってたんだろうなぁってぼんやり。

永瀬さんはご立腹でさ?


永瀬『もう!壇上で宏介くん見てるのになんにもリアクション無いから!

そうじゃ無いかと思ったよ新入生へ挨拶なのに俺とばっかり目があってる!って突っ込まれるかと思ったのに…?宏介くん?どうした?具合悪い?』


『…うん?うん。ちょっと休めば大丈夫。』


え?保健室付き添う?って申し出る永瀬さんに謝りながら俺は着替えを持って更衣室へ入り、パパっと着替えて手紙3通を持って横のシャワールームへ入る。

…身体測定でシャワー使う奴は居ない。

俺は一応1番端っこのスペースへ入り手紙を取り出した。


対面式中にいくつか検討していた事がある。

大きく分けてふたつ。


良い内容悪い内容か?

誰が何のために?


この二つ。

内容は全く検討がつかない。

良い内容はなにか感謝やラブレターみたいなこと。プラスの意識でくれた手紙。

これは面倒だったりするけど害は無い。

悪い内容…前に承が受けた嫌がらせ手紙や誹謗中傷などのマイナスな意識の手紙。…呼び出してボコるとか嘘コクとかもこっちだね…。

…承は春休み直前に呼び出されて行ったら7人出てきてマジびびったって言ってた。あいつは主人公属性持ちだから平穏に生きれない漢…。


もうひとつ、誰がなんの為に?

記名されていれば基本好意か悪意かは想像つく。

無記名が1番わからなくなる、無記名だと良い内容でも悪い内容でも一気に無記名ならではの無責任なメッセージになってしまう。


結局推理してもしょうがないって思うけどもどうしても気になって考えを巡らせるとこういった思考になってしまう。


手紙は3通。


コピー用紙を畳んだモノ。

白い普通封筒(紙が入っている。)

白い手紙用の封筒✉️こんなの。



俺はまず、コピー用紙を開いてみた。

そこには、






『天堂愛莉に留意されたし。』



との一文…。

PCでプリントアウトしたのか?

なんの個性も無い、手がかりになるような事も無い。

でも、とても見過ごせ無い。


留意?されたし?

留意は気に止める、気をつけるって意味だよね…?

注意されたしなら愛莉先輩に気をつけろだけど?

されたしって言葉は〜して欲しい。〜して貰いたいってく要望だよな?

俺に愛莉先輩を警戒しろって意味では絶対無いはず、文法的にも。

俺に愛莉先輩を気に止める、気をつけてあげて?ってニュアンスだよな?


自分事ならなんとでもなるし、なんとかする。

だけど…いつも世話になってる、親しい愛莉先輩に何が?そう思うととても冷静では居られない!


一体、誰が何の為にこのメッセージを俺に送ったんだ?

新年度早々俺は漠然とした不安でいっぱいになった…。

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