第152話 初めて見る宏介【side三島皐月】
明日はいよいよ始業式って春休みの最終日。
私は制服姿で北翔高校の体育館に居る…。
ゆかりとバスケ部の試合を見に来たからだ。
少し遡ること先週。
赤点があり進級が危ぶまれた私は春休みの多めの課題をなんとかこなしてほっと一息。
ゆかりとは春休み中も週2で会っていて?私は生まれて初めて感じる親友が居るって実感に喜びを感じていた。
基本的には?話しをしたり聞いたり女子同士おしゃべりしている時間が長いのよね?
タイプ違うんだけど合うとこ合わないとこがありそれでも良いんだ?って思える私とゆかり。
…ただ、話しが合わないところの一つに宏介の問題がある。
私は宏介と付き合って長かったから?正直ゆかりより宏介の事知っていると思ってる。
ゆかりは宏介をとても評価して居て?助けて貰った、悪い事したってスタンス。
…うーん?そんなに?
正直私は宏介がそこまでの男だとは思っていない…。
思っていないから別れた訳で。
ただ最近になってちょっと見誤ったかもしれないなぁって部分があるのは認める。
宏介と別れて付き合った山本正輝はその時は格好良くて背が高くて、実家も太くてゴージャスで。都会的でイケイケなすごい男の人だって思って口説かれて受け入れた。
※まだ付き合ってる途中で乗り換えました。
…しかし、秋に実家が没落してから彼は変わった。
ゴージャスどころか実家がお金無くて困ってる。
まあそれは仕方ないとは言え、マスコミに追われて期末試験や補習を無断でサボったから留年が決定して、私にまでもう一回一年やるか学校辞めてYouTuberや Vtuberやろう!とか言って巻き込む始末…。
もう私たちは終わった…あとは綺麗に別れるだけの状態。
そんな宏介と正輝を比べれば?今は宏介の方が上だったかも?とは思っている。
でもそんなに?そんなに評価高い?って思っちゃう。
ゆかりと話してて、『出会った頃や秋くらいまでは私たち仲良くなるなんて夢にも思わなかったね?』って話題が出る。
その時決まってゆかりから出るのはいかに宏介が助けてくれたか。
宏介がいつも支えてくれてダイエット成功した。優しかった、色んな思い出がある!って頬を染めて語った後に、
ゆかり『…そんな宏介くんを私は裏切った…合わせる顔が無いよ…。』
って。
そんなに気にすることかな?
私こっぴどくフったし、話しかけてこないで?って言ったけど私が用ある時普通に話しかけるし?
そう言うとあんなに優しくて広い心のゆかりにそこだけはマジ注意される。
…なんで?ゆかりだって大したことないって何処かで判断したから宏介切ったんでしょ?
そう言うと悲しい顔してゆかりはその話を止める。
九頭くん話なんて全くしないのに宏介の時だけは饒舌なのよね。
その日もそんな話しをしていた。
ゆかりは宏介はすごいと言う。
学業は最近ずっとトップ10に入り、文化祭の実行委員も優秀クラス賞取るほど成功させた。部活も一年でレギュラーを奪って冬の大会で県ベスト8の立役者らしいし?生徒会の一ノ瀬会長直々に生徒会に勧誘されたって。
…一ノ瀬会長っていうか?生徒会には永瀬のせいで悪い印象強いし?
文化祭の優秀クラスならうちもメイド喫茶で獲ってるし?
学業はまあ…すごいとは思う。新設校とはいえ進学校のここ北翔高校で部活もこなしながらトップ10は…。勉強だけは教えて欲しいかも?
ひとつ引っかかってるのがその部活!
うちのバスケ部強いなんて聞いたことないけど?そこでレギュラー獲ったって?
冬の県ベスト8だって?結構惨敗だったって聞いたし?
そんなに大したこと無いんじゃない?だって宏介中学時代部活卓球だったし、小学校は野球部だよ?
高校に入ってから始めたんだよ?やっぱ大したこと無いんじゃ無いかな?
そう言うとゆかりにしては珍しく、
ゆかり『宏介くんは!夏休みも全力で努力して夢中で毎日鍛えていたよ!
…辛い事あったから尚更今は頑張りたいって…。』
ふーん。
でもゆかりスポーツわかんないでしょ?私もよくわかんないもん。
そしたら、
ゆかり『じゃあ!始業式前日!春休み最終日に、
バスケ部が県ベスト8の高校と練習試合するんだって!
それ見に行こう?迷惑かけないように二階席あたりからこっそり!』
珍しいゆかりの提案に私はちょっと見てやろうか?って気持ちで了承した。
ふたりとも素人だからよくわかんないかもだけど?
帰りにお茶して帰れば良いか。
私はそんな軽い気持ちでこの体育館に居る。
隣のゆかりは少し緊張の面持ちで見てる。
ゆかり『…ダイエットで協力してくれた先輩やマネージャーさんが居るから…顔合わせられない…。』
じゃあ無理しなければ良かったのに?
そう思いながら二階席からコートをやや見下ろすような形で試合を観戦する。
宏介だ…。
宏介は私と背丈がほぼ変わらないくらいしか無い。
だからバスケ選手の中では小柄な部類に入る。
(ほら、やっぱりそうじゃない?)
素人でも知ってる、バスケットボールは背の高さは大事で背が低いだけでハンデになるって聞いた。
二階の観客席はそこそこ人が居る。
春休みの平日なのに結構観客多いな?
知ったかぶる生徒が向こうもベスト8だけど過去実績などから格上だって解説していた。同じ一年生に良い選手が居るって。
(こんな大きい選手に紛れて宏介わかんなくなりそう。)
そう思ったけど、意外にも宏介は目立つ。
ボールを持って攻撃の指揮を取るポジションだったから。
守備の時は最前線で守っている。
いつしか私は宏介だけを見ていた。
昔のあの頃のように。
宏介のプレーに一喜一憂する。
宏介の整った顔が汗で光ってるし、あれはすっごい楽しい時の表情よね…。
素人目でも宏介の動きは早く、ドリブルはボールが手に吸い付いているようだった。
宏介のパスで攻撃が動き、宏介のカットで流れが変わる。
小柄ながらも全身をバネの様に躍動させて縦横無尽にコートを駆ける!
ドリブルで突っかけ、パスを出す。必要があれば自分でシュートも打つし気がつけば夢中になって応援していた。
ああ、宏介きっと高校に入学してから夢中でバスケットボールに打ち込んだんだなってわかった。
もうバカになんてしない。
試合は一進一退で拮抗したまま後半へ入る。
インターバルの間も私は宏介を見ていた。
ゆかりが横でため息を吐くように。
ゆかり『…ね?宏介くんすごいでしょ?頑張ってるってわかるでしょ?』
『…うん。』
私は宏介から目が離せなかった…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます