第150話 2年生になる前に【side友永ゆかり】

久しぶりの友永回ですが先に


119話 呉越同舟

132話 進級か否か


のおさらい推奨です。


☆ ☆ ☆


目の前の女の子はパッと見ギャルだった。

…それも軽くヤンキー寄りの。

服装も少し派手め、でもロングスカートで肌の露出は少ない。

目つきは少し悪くて口調も乱暴だったり威圧的だったりする。

私は彼女が怖くて苦手だった…いや今もちょっと怖い。

ファミレスで2人でお茶してるんだけども。



小佐田『それで?友永は無事進級で良かったね?でおしまいだと思ったけどー?』


目の前の怖いお姉さん…いやタメだけど。

小佐田 アイさんは訝しげに私を見ている…。

あはは、仕方無い。

私は去年夏から秋にかけて盛大にやらかした。

にもかかわらず、私の留年回避の為のお願いを渋りながらも受けてくれた。

…しかも小佐田さんが大嫌いな三島皐月まで一緒に。



小佐田『…別に友永からはお礼の電話貰ったし?一応その時三島からも?』


小佐田さんはなんで私に会いに来たのか検討が付かないらしく私を読もうと仕切りに私の目を覗き込む。

改めてのお礼と近況報告ですよ?そう伝える。

ふーん。って小佐田さんは飲み物を飲みながら私をまだまじまじ見つめる。


小佐田『…あんたマジ変わったね?戻ったのかな?

折角あんなに綺麗になったのに…体重戻ってね?』


『…はは…前より増えてます…。』


小佐田『…ごめん。

でも何か心境の変化があったんでしょ?

良かったら?聞かせてくんない?』


自分で振っといて謝らないで欲しい…。

でも、良い機会だから小佐田さんに聞いて貰った。


夏から秋にかけてのダイエットで痩せて綺麗になって、私は何でも出来るし何でも手に入る!っておかしくなった。

今まで見向きもされなかった男の子たちが私を熱い目で見る。

今までバカにしてきた女の子が私を憧れの目で見る。

…ずっと中学生の頃から憧れていた王子様さえも向こうから私を求めて来てくれた…。


そのダイエットにずっと付き合ってくれた無口な男の子が居た。

彼は献身的に公私ともに支えてくれて、私はその男の子に全て終わったら告白するって宣言して全て終わるまでは会わないって宣言した。

でも私はバカだから大事なものを投げ捨てて昔憧れた王子様に一瞬で靡いた…。



小佐田『…そっか。

ま、聞いてた通りだけど…バカな事したね…。

知ってると思うけど私そうゆう節操無い奴嫌いなんだよねー。』


『あはは、知ってます…。』


気まずい間がある。

それでも、



『でも、小佐田さんはクラスに貢献したからって私を助けてくれて…。

来週には新学年になり、クラスも変わります。

もう一度だけお礼が言いたくって。もう同じクラスにはならないだろうから…。

小佐田さん、色々迷惑かけてごめんなさい。

そして本当にありがとうございました。』


小佐田さんは赤くなって、



小佐田『あー、いいよ?そんなの。

別に…恥ずかしいからやめてって…。』


真っ赤になって俯く強気ギャル…このギャップに彼氏さんはやられたのかな?小佐田さんは威圧的なギャルの見た目と裏腹に男女関係は潔癖で下ネタ嫌いで照れ屋さんな所がある。そして有能。

決して正義の味方じゃ無いが自分ルールがあって敵に厳しく身内に優しい。



『私がピンチな時に支えてくれたのは「宏介くんの言葉」と「小佐田さんの言葉」でした。

クラス変わってもあの日約束した、宏介くんに迷惑かけないは必ず守ります。本当にありがとう、小佐田さん。』


小佐田さんは真っ赤のままコーヒーに口を付けて少し考えて私に言った、



小佐田『…それはわかった。

斉藤くんとの約束守ってくれると嬉しい。


…ところで…。』


小佐田さんは一回言葉を切って言いにくそうに、


小佐田『…時に交際は順調なん?』


私と九頭くんの?

…正直に言う事にする。



『はは…実はもう九頭くんは私に全く興味無いんです。

冬にはもう…ホワイトデーが進級できるかどうかの日でしたが…まったく。

自業自得だってわかってるんで大丈夫です…。』



小佐田さんはフーってため息吐くと遠くを睨みながら、


小佐田『…教育…だろうなぁ…。』


…なんか怖い事呟いていてた…。

最初の頃のガラ悪くて怖い頃の小佐田さんが漏れ出してる…。


小佐田『…まあ、進級したって終わりじゃ無いし?

彼氏と上手くいかないなんてどこの世界にもある女子高生の悩みだろうし?友永もがんばれ。』


『はい!』


タメだけど完全に上下関係の出来ている私たちはこれが正常なやりとり。


一瞬考え込んだ小佐田さんは強く私の目を見て、


小佐田『…最近、クズは…違った九頭はさ?

調子に乗って色々やらかしている。

…もしかすると奴の自業自得で何か起こるかも知れない。彼女のあんたはしんどいかも知れないけど…。』


私は頷く。


小佐田『あんたが反省してるのはわかるし、私は約束を守る人は好き。』


そう言って微笑むと小佐田さんは立ち上がる、伝票を手に取って、



小佐田『今日は進級祝いで私の奢りでいいよ。

クラスが変わったってなんかあれば相談しに来なよ?

…じゃあね、。』


小佐田さんはパチンってウインクして伝票を持って颯爽とファミレスを立ち去った。

…敵わないなぁ、皆んなついてくるわけだよね。

私も残った紅茶を飲み干して立ち上がる。

今日小佐田さんに会えて良かった。

また2年生になるのが楽しみになった。

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