第149話 帰り道

本屋さんで買い物して、皆んなで歩いてターミナル駅へ向かう。

俺と愛莉先輩。

承と紅緒さん。

望とセリーさんの3組で。



ターミナル駅で最後にみんなでクレープ食べた。

俺と承がもう1人の幼馴染だった奴の話をしている頃、女の子チームは、


愛莉『ほら!クリーム口に付けて!貴女たち姉妹なのかな?』


紅緒『…えへへ♪』

望『あはは♪』


2人して愛莉先輩の手を煩わせてるけどなんか楽しそう。

望は香椎さんなどにもそうだけど甘えたがりで良く見る光景。

…愛莉先輩がお姉さん気質なのかな?


クレープ食べ終わって、そろそろ解散なんだけど愛莉先輩が珍しくグズっていた。


愛莉『…なんで皆んな一緒に帰るのに私だけここに置いていくのー!』


いやいや、置いて行くわけじゃ…?

子どもっぽい先輩は希少価値ある気がする。

今日が楽しかったのかな?

俺は微笑ましく思いながら、


『…俺は明日も部活で会えますよ?

今日は楽しかったです、承や望と仲良くしてくれてありがとうございます。

また明日!愛莉先輩。』


また明日!って子供の頃からの承のあいさつを俺は真似る。

少しはにかんだ様子の愛莉先輩は、



愛莉『…うん、また明日。』


そう微笑むと見えなくなるまでずっと小さく手を振ってくれた。

先輩は一人っ子だからこう言う集まり珍しいのかな?

友達同士ではあるけど何処か承と承の妹弟が絡むと兄弟のような、家族を思わせる集まりになる気がする。


ホームで電車を待つ間、承と話す。


承『愛莉さん、良い人で良いお姉さんだね?』


『うん、そうだな。』


承『すっごい良い子だと思う。俺はすごく良いと思うな!』


俺は承が言いたい事がわかった。

はぐらかそうと思ったけど…どうせ承はわかっちゃう。

なら正直でしょ?


『良い人なんだよ、信頼しているし尊敬もしている。

…でもわかんない。俺おかしいのかな?』


承『…人間って自分のことでもわからない事も多いよな。

人が見たらすぐわかるらしいよ?』


『…承はわかりやすいんじゃね?』


承『そうかな?』


笑いながら肩パンされたから肩パン仕返す!

…女の子の想像つかない奥底を推理するよりこういうバカやってる方が楽しいっていうのもまた真実だよな?って思った。



☆ ☆ ☆

途中の東光駅で紅緒さんは下車。


承『…一応家まで届けてくる!』


『…えー?すぐそこなんでしょ?』


承『…とわんこは球技大会でGKしただけで翌日全身筋肉痛で休むほど貧弱モンスターなの。』


GKってそんなに動く?

紅緒さんは頬を赤く染めて、


紅緒『ふふ!彼ったら心配性なの♪』


承『…誤解されるから彼女ムーブしないで?

じゃ次の電車で帰るから!ふたりよろしく!』


紅緒さんも今日はすごく楽しかった!って連呼していた。

彼女も一人っ子だから?愛莉先輩に姉を望に妹のような感情を抱いているのか別れ際とても寂しそうだった。

承はセリーちゃんに丁寧にお礼とお詫びして東光駅で降りた。

まあ俺たちも次の駅だけど。


我らが新川駅はターミナル駅に比べたら何も無い。

駅出て、一本道通って西エリア、小学校で分かれ道。

…承を見習い俺もふたりを送っていくか?そう考えて歩く。


駅の前から一本横にそれて住宅街の道を歩く。

望が照れくさそうに呟く、



望『…宏介くん、ふたりきり…だね?』


セリー『…私は居ない事になっているのでスカ?』


望『…イヤだなぁ…冗談だよぉ!』


セリー『…私は朝強引に連れて来られてこの扱い…どうせ私なンテ!』


望は親友を必死に宥める。

…この子不憫な娘だな…。


西エリアを通り、橋の手前の家がセリーさんの家みたい。

望が助かった!ありがとう!愛してる!って押し切ってセリーさんは嬉しそうに家へ入って行った。

…チョロい子なのかな?


セリー『ふふーん!ただイマ!』


母『芹?あんたどうしたの?!』


芹『あ?!』


後ろからそんな声が聞こえて望とふたりで大笑いした。

そりゃビックリするよね?娘が金髪巨乳になってカラコン入れて片言で帰って来たらさ!


橋を渡りながらそんな会話。

橋の半ばで、


望『変装してキャラ変わってたからあのまま帰ったんだね。

…あたしのウロヤ ケヌマも可愛い設定だよ!おっぱい大きいし!金髪で目も緑だし!』


なんでもウロヤ ケヌマにも設定があるらしい。

父は高級外車ディーラーだとか、彼氏に尽くすタイプだとか、おっぱい!おっぱい!って。


橋を渡りきる頃、小学校の前で望はクルリと回って見せて、



望『宏介くんも…本当はあたしみたいなちんちくりんより…金髪でおっぱい大きい女の子の方が好きでしょ?』


冗談めかしても目は本気。

中学生くらいってまだ何者でも無くって不安を抱えている事が多い。

…まだ自分が何になるのか全くわからない。

高校生だってそうだよ、でも学力や運動能力など諸々の諸条件でそろそろ自分の立ち位置みたいなものが少しだけ見えてくる。


まだ望たちにはそれが無い。

不安…って一言で言うのは容易いし、何を望が求めているのかはわからないよ。でも兄の様に接してきた俺が言えるのは…。


望に近づき、金髪のカツラを取り上げる。


『…望おっぱい外せ。』


望『…おっぱい外せって初めて聞いたよ…。』


望はぶつぶつ文句を言う。

俺はいつもより2歩、望に近づき頭を撫でる。


『…金髪も巨乳も望に必要無いよ。

…望は望のままで良い。望のままが1番良い!』


望はニパっ!って表情を輝かせて嬉しそうに笑った。

お腹抱えて楽しそうに嬉しそうに!


望『宏介くん!他の女の子にもそう言うの言っちゃうんでしょ?』


は?


『承も言うでしょ?』


俺は何か聞き方に感じた、きっと兄の承にも似た事聞いてるんじゃ無い?って。


望『何でわかったのー?!』


望はビックリしながらも嬉しそうに笑っていた。

もう立花家は目の前。


楽しかった今日も終わる。

末弟のひーちゃんの顔見て俺も帰ろう。

春休みも後わずか。俺は春の気配に胸躍らせて新学期を待ち侘びていたんだ。




☆ ☆ ☆

愛莉が宏介に嬉しそうにはにかみながら手を振り続けている光景を離れて見ている女の子が居た。


愛莉はその女の子が見てもわかるような恋する女の子独特の上気した顔で。

一方宏介も自分がいつも見る無口無表情では無いわけで…。


二宮『…これあやは知ってるのかな?』


永瀬綾の親友、ギャルの二宮新名は見てしまった。

親友が大層気に入っている男の子が新3年生の有名美人天堂愛莉と手を振りあっている光景を…。

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