第146話 宏介くんの一面【side天堂愛莉】
宏介くんって女の子慣れしてない?って思っちゃうのよね。
小物見たり、洋服見たりして付き合って貰っても嫌な顔一つせずにちゃんとコメントや褒め言葉を必ずくれてマメに丁寧に接してくれる。
さっきの洋服屋さんの時もそうだった。
雑誌の街角カップル取材!みたいな企画の記者さんみたいな人に急にグイグイ来られて私は目をしろくろさせてあわあわしてたらね?
宏介『…彼女が困っているんで?今日はごめんなさい。いこ?』
そう言ってぺこって会釈して私の袖を引いてととと!って
階段の所で私を庇うように周囲を気にしながら耳元に少し低い声で、
宏介『ここなら人気が無いから誰にも見られないね?』
って耳元で言われて…キュンキュンしちゃうよ!
(…年下なのに…!私、お姉さん…お姉さんだよー!)
って言い聞かせた。
宏介『…先輩?愛莉先輩?ごめんなさい。走らせたからかな?行こう!』
私が真っ赤になったの走ったせいだって勘違いして少し強引にカフェへ案内されて…良い。すごく良いよ…!
カフェでも宏介くんは私の話をうんうん聞いてくれる。さほど興味無いような事でもしっかり聞きながらわからない所を聞き返してくれて嬉しくなっちゃう。
…差堀先輩は自分の話しは好きだったけど興味無い話しは全然上の空だったなぁ。
…自分だって前の彼女と比べられたら嫌なんだから比べちゃダメって思うけど人は比べてしまうみたい。
…宏介くんは大人で気が利くし優しいしとっても魅力的な男の子だなって思う。
ダメダメ!私お姉さんでしょ?そう言い聞かせる。
30分ほど話をしていると立花くん一行もやってくる。
立花くん達は私たちに気を使って向こうのテーブルでお茶するみたい。
…!
…!
なんか揉めてる?望ちゃんと永遠ちゃん?
それを見た宏介くんがくくく!って喉鳴らして笑ってる!
宏介『…すいません、承たちの揉め方が面白くって…!』
宏介くんは立花くんと居ると子供っぽい無邪気な笑顔になる。
…計算している、立場や関係を遠慮しない素の宏介くんに見える。
それがなんか悔しいような嬉しいような。
『宏介くんは立花くん大好きだね?』
宏介『…え?!何を?!』
赤くなって慌てる宏介くんを見てやっと年下の男の子!って感じがしてホッとした。そうそう、お姉さんの前では素で居て欲しいな?私はほほみながら思った。
☆ ☆ ☆
本屋さん
さてショッピングエリア地下には県内有数の大きな本屋さんがある。
参考者から文庫本百科事典なんでも揃うすごい品揃えの本屋さん。
本屋さんへ着くと自然に私たちはばらけた。
見たいものをそれぞれ見て周ろう?ってね。
立花くんと望ちゃんが話しながら足早く動き出す。
それを見た永遠ちゃんは宏介くんに立花くん兄妹の事を聞いてる?
私もそこに合流しようとしたら、
セリー『…あの、あの、
天堂さん?参考書一緒に見て貰えませンカ?』
…望ちゃんのお友達のセリーちゃん?
中肉中背、金髪に緑の目、超巨乳…。
いや変装だったわよね?
セリーちゃんに頼まれて私は中学の参考書コーナーへ向かう。
セリーちゃんは望ちゃんと同じ中2で来年高校受験だね。
セリーちゃんから成績的なモノを聞くけど…うん、結構良いみたいだね。
志望校は?どこかな?
セリー『…私、北翔高校が志望校なんです。』
そうなんだ!北翔は創立もうじき6年、進学校としての地位を急激に確立しつつある私立の高校。私たちの頃より多分入学に必要な偏差値は上がっている。
県内の国立大や都内の有名私立への進学者が多数輩出されている為新設当時より偏差値は上昇傾向にある。設備やカリキュラムの充実っぷりが人気で実績も加わったからだね。
セリー『…まだ秘密なんですけど、望ちゃんがスポーツ推薦で北翔を志望するみたいで…私も進学校にしたいから北翔ヲ…!』
そうなんだ!私は嬉しくなっちゃう!
参考書をセリーちゃんと一緒に見るよ!私が受験の頃はこのシリーズの!
あ、こっちのが親切かも!
2冊購入するセリーちゃんは丁寧に頭を下げてお礼を言ってくれた。
…あー嬉しいな。あんな可愛い後輩がふたりも出来たら素敵だな。
…ただ、彼女たちが入学する頃には私は卒業している。つい先日入学したつもりだったけど…私も卒業を意識する頃合いなんだなぁ…そんなセンチな気持ちになった。
一年後にはもう卒業しているんだ…。
私が高校生でいられる時間が少なくなってきたのを初めて感じた。
後悔の無い高校生活送らなきゃ…!
☆ ☆ ☆
参考書をカバン入れたセリーちゃんは望ちゃんを探しに少年マンガコーナーへ向かって行った。…少年マンガコーナーに居るかな?
私はのんびり本屋さんを歩く。
本屋さんの紙の匂いと雰囲気が好きなのね。
絵本コーナーに立花くんが居る?
立花『あ、天堂さん!宏介は?』
さっきは永遠ちゃんに立花くんたちどこ行ったの?って聞いてたよ?
聞けば末の弟のひーちゃんが絵本好きで先日も買ったけど今日どうしよう?って絵本コーナーで兄妹会議していたんだって。
で、今日は見送りになったけどなんか良いのあるかな?ってお兄さんはチェック中と。
私はクスクス笑いながら宏介くんの親友も優しい良い男の子なんだなって思ったの。
…私は漠然とスポーツトレーナーのような仕事を目指しているけど実は絵本作家さんにも憧れていた時期があって…。
少しオススメ絵本を立花くんに推しちゃう!
感動する絵本、可愛い絵本、考えさせられる絵本。子どもの頃に読んだ絵本で今も詳細に覚えて居るものって必ず誰しもあるはず。そんな事を熱く語っちゃう!
立花くんもうんうん頷きながら聞いてくれてなんとなく宏介くんと似て居るなぁって思った。
少し話していると自然と共通話題の宏介くんの話しに。
立花くんから聞く宏介くんは静かに熱いものを秘めた男の子。
立花くんの危機や困った事をなんでも相談に乗って体を張って助けてくれた無二の親友と彼は言い切る。
熱い男の子同士の繋がりを感じる。
立花くんは恥ずかしそうにでも私の目を真っ直ぐ見つめながら、
立花『宏介はよく天堂さんの話を俺にしてくれます。
とても愛莉先輩…あ!宏介が言うんですよ!
愛莉先輩を尊敬していて信頼しています。』
そこで一回切って、
立花『…あいつ、中学からの彼女とよく無い別れ方してて。
女の人がすっごい苦手で…でも愛莉先輩をすっごい慕ってて!
俺が頼む事じゃ無いんですけど、宏介をよろしくお願いします。』
立花くんは私に軽く頭を下げる、私は急いで頭上げて!ってお願いするよ!
立花くんは苦笑しながら、
立花『俺がそんな事お願いしたって知ったら怒るんですよ。
宏介は昔吃音があったから話すのを躊躇う所や言葉少ない所があります、でも人より考えて話すし人の事を考えるからで、決してただの無口や無表情じゃ無いんです!』
私は笑いながら、
『大丈夫!わかってるよ立花くん!
ああ見えて表情豊かだし、言葉は少ないけど会話する時全身で向き合ってくれてるのいつも感じてる。
…宏介くんの良さよく知っているし、これからもっと知りたいよ。』
立花くんが嬉しそうに笑うのを見てたら自分が結構際どい事を言っちゃった!って気づいてまた赤面してしまう!
宏介くんの親友も素敵な男の子だね…!
私はしばらく子供の頃の宏介くんの話を立花くんから聞いて驚いたり笑ったり心暖かくなる時間を過ごしたの。
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